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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第四章 魔族領へ
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4.26.封印場所へ


「……」


 喉を鳴らしながら、アトラックが魔力石を選別していく。

 その様子を見ながら、僕とアマリアズは近くに用意されていた椅子に座って待っているところだ。


 大量の魔力石を運んできた時は、アトラックは非常に驚いた様子だった。

 声のない笑いを出して腹を抱えていたが、アブスはそれを見て変に驚いていた。

 なんでも、彼がここまで笑ったのは本当に久しぶりのことだったからだそうだ。

 涙を流すほど、可笑しかったらしい。


 それから魔力石をアトラックにすべて託し、それの選別をしはじめた。

 どうやら彼は魔力石に入っている魔力が分かるらしい。

 魔力の多い魔力石は僕が使う様に小さなかごの中に入れて置き、他のものは違うことに使うらしくまた別のかごへと放り投げていた。


 一つ摘まむと、それをしばらく眺める。

 大体四秒か五秒程度だが、それで入っている魔力が分かるようだ。

 すぐにかごに入れて、次の魔力石を手にする。


 傾向としては小さな魔力石程、多くの魔力が入っているらしい。

 なので僕のために用意されている魔力石は、小さいものばかりだ。


「ねぇアマリアズ。一個の魔力石にどれくらいの魔力が入ってるのかな?」

「ああー……。僕はなんとなくわかるけど、数値化できないからなんともって感じだな……」

「そ、そういえば封印を解くのにどれくらいの魔力が必要なの?」

「それなら分かるよ」


 それは分かるんだ……。

 なんで。


「だからー。……技能を作ったのは私。どれだけ魔力を使えばいいかも分かってるって事」


 アトラックに聞こえないように、小声で教えてくれた。


 確かに技能を作ったっていうのがアマリアズなら、使用魔力量も設定しているだろうから把握しているはず。

 ……本当に元神様なのかはまだ置いておいて……。

 で、どれくらい必要なんだろう。


「600マジックポイント」

「六百? それって多いの? 少ないの?」

「えーっとね。人間にとってはとっても多い。魔法は得意なんだけどね。鬼にとっては驚くくらい多い。接近魔法を主としているから、魔力は多くないんだよねあの種族」

「へぇ……。悪魔は?」

「悪魔にとっては少ない。でも封印系魔法を所持できない」

「そういうのあるんだ!?」


 少し詳しく話を聞いてみると、種族によって獲得できる魔法は大きく異なるらしい。

 人間は基本的身体能力が低い代わりに、魔法を多く取得できて接近戦、中距離戦、遠距離戦を両立させる戦いをする事ができる。

 だが中、遠距離の魔法の威力が他の種族に比べて高い傾向にあるらしい。

 それに加え、短命であるが為に魔法取得速度、練度上昇速度が速く、幅広い魔法も取得することができるのだとか。


 鬼は基本身体能力が高く、魔法もそれを強化するものが多く、遠距離魔法を取得することは少ないのだという。

 だがそれを補うために金砕棒を投げたり、石を投げたりと力でごり押しすることができる。

 もちろん弓なども扱うことができるが、やはり彼らが好むのは接近戦だ。

 近づかれてしまえば他の種族は劣勢となるだろう。


 悪魔はとにかく特殊な魔法を所持していることが多い。

 不定形、零距離移動、賭博、感知、洗脳など、明らかに常軌を逸する魔法を獲得する傾向があるらしい。


 確かに思い返してみれば、アブスの能力は不定形の白い肉塊を自由に操る技能と、洗脳技能を持っていると言っていた。

 目の前にいるアトラックに関しては、入っている魔力を感知する技能……?

 少なくとも僕は石の中に魔力がどれだけ入っているかは分からないので、凄い技能だということは分かる。

 他にも何か持っていそうではあるけど。


「と、まぁそんな感じで、結構いろいろあるよ」

「へぇー……。じゃあ、天使は?」

「……これが分からないんだよなぁ……」


 そこは分からないんかーい……。

 いや、なんで!


「う~ん……とりあえずヤバイ技能ばっかりだったのは覚えてる。でもどういう傾向なのかはさっぱり」

「一番重要なところじゃないの?」

「いやぁ、まぁ……そうなんだけど」

「……」


 そこで、アトラックが手を叩いた。

 見てみると、もう既に選別が終わっており、僕が使用する魔力石は一つの魔法袋の中に入れられている。

 ぽーんと投げてきたので、それをうまい事両手でキャッチした。


「えっと、これ、どうやって使うんですか?」

「……(作った拳をもう片方の手で握る)」

「……魔法袋持って『決壊』を使えばいいって事……? ですか?」

「……(コクリ)」


 そ、それでいいんだ……。

 意外と使い方って簡単なんだなぁ。


 魔力石が入れられた魔法袋を見ていると、翼を羽ばたく音が聞こえてきた。

 見てみればダチアが近づいてきており、僕たちの前に着地する。

 アトラックが軽く指を振ると、彼は今の状況を察したようで少し驚いた顔をした。


「ほぉ……。もう魔力石を集めたのか」

「な、なんとか」

「それは凄まじいな……。それも、これほどとは」


 顎に手をやりながら、ダチアは感心したように微笑む。

 僕の方ではなくアトラックさんが選別した使わない方のやつを見ているけど。

 まぁそれも集めたのには変わりない。


 すると、ダチアが空を手で斬った。

 何をしているんだろう、と思っていると、そこに紫色の線が入り、ガバッと開く。

 禍々しい色の渦がその中で回っており、見ているとなんだか目が回りそうになる。


 アマリアズはそれが何かすぐに分かったらしい。

 だが僕にはさっぱりだ。

 一体これは何なのかを聞こうとした瞬間、ダチアが翼を二度動かす。

 彼の顔は笑顔であり、これから始まることを楽しみにしているような気がする。


「よぅし……。封印場所へ行くか。応錬の」

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