4.22.探索開始
辿り着いたのは大きな樹木が所狭しと並んでいる密集林だった。
木々の位置や広げている枝の広さから見るに、大地に光が通らなさそうではあるのだが、どうしたことかこの辺りでは雑草や植物が多く生えている。
日が当たらないのに地面にここまで緑が生い茂っていることに、少なからず僕は驚いた。
アブスに降ろしてもらい、僕とアマリアズは地面に足をつける。
彼女もこちらの動きに合わせてくれるようで、白い肉塊を蠢かせてどの武器を装備しようか思案していた。
鎌だったり槍だったりと、変幻自在に変えられる武器というのはなんだか羨ましい。
僕は爆発が基本だし……目立つんだよね。
「そういえば」
アマリアズがアブスに向きなおる。
「その魔力石を持っている魔物って、どんな魔物?」
「あれ? 説明しなかったっけ?」
「え?」
「……アマリアズ、寝てたもんね」
魔力石を持っている魔物の説明を受けたのは、僕が魔族領で起床してからのことだ。
その時、アマリアズはまだ爆睡していたし、僕だけでも聞いておこうとアブスさんに教えてもらった。
そういえば共有するのを忘れてたな……。
確認の意味合いも込めて、アブスはもう一度丁寧に教えてくれた。
「魔力石を体内で生成する魔物は四匹。ホルク、ポゲンシ、デイヌル、カラホッケ」
「ああー……」
自称技能の神様というアマリアズなら、これを聞けばどのような魔物なのかは分かるのだろう。
自称っていうのは外さないけど。
だがピンと来たようで、少し難しそうな顔をする。
「どうしたの?」
「全部隠密魔法を持っている魔物だね。姿を消すことができる個体が三種。気配を消すのが一種」
「てことは、アマリアズはそのうちの一体しか見分けられないってことかぁ」
「そうなるね」
アマリアズの『空間把握』は姿を消している存在を映し出してはくれない。
なので今回は、僕の『大地の加護』を使った気配探知が重要になるようだ。
いきなり重要な役目……。
でもまぁ、アマリアズも探せないということはない。
姿を消していない個体もいるだろうし、四種類の内一種類は探せるみたいだし、どっちにせよ索敵は一緒にやってもらおう。
ていうか一緒にやらないと、どれが姿を消している魔物か分からないしね。
僕の索敵は気配を辿るだけだから、肉眼で見えるか見えないかは分からない。
やることは決まったので、僕はすぐに気配を辿って魔物を探す。
近くにいた魔物は多く、小型から中型の魔物がこちらを見ているようだった。
意外と多い……。
魔族領にも森が形成されて、比較的住みやすくなったから個体数も増えていったんだろうな。
……いやこれ、どれがその魔物なの??
「あ、アマリアズー……? ど、どう? 魔物いる?」
「ぜーんぜんいないけど」
「うん、この辺にはいないみたいね」
「……え?」
……えっ?
いや、めっちゃ近くに山ほどいますけどぉ!!?
えっこれもしかして……今僕が感知してる魔物全部が魔力石を体内で作るっていう魔物?
いやキモぉ!!
多すぎるって気持ち悪いな!!
「つ、『ツタ縄』!!」
森の中に大量にあったツタをすべて使う勢いで、気配のある魔物を片っ端から捕えていく。
捕らえられたことに気付いた魔物は大きな声を上げて暴れ回った。
それを聞いて、アマリアズとアブスは肩を跳ね上げて驚き、一気に戦闘体勢を取る。
だけど僕が全部捕まえているから、多分害はありません……。
ていうかこれだけ沢山いたのに、どうしてわからなかったんだ……。
捕縛した魔物を、目の前まで『ツタ縄』で引っ張り出してくる。
すべてが生け捕りにされており、大小様々な魔物が集まった。
意外と小さい個体が多いみたいだけど、中には僕と同じ背丈の魔物もいる。
これも目的の魔物だったらしく、アブスは目を輝かせて喜んだ。
「おおおお!! すごいすごい!! これ全部魔力石を持ってる魔物だよー!」
「……え、まじでこんなにたくさん近くにいたの……?」
「うん」
「姿隠すの上手すぎるな……。多分これ、気配遮断もある程度持ってるけど、それを上回る能力が宥漸君にあったから見つけられたんだね」
「へぇー」
そうなんだ。
でもまぁ、なんにせよ役に立ててラッキーだったな。
えっと、これだけあれば足りない魔力も補うことができるのかな?
アブスさんにそう聞いてみたけど、魔力石を丁寧に取り出すのに夢中らしく話を聞いていなかった。
鼻歌を歌いながら、生きた魔物を解体していく。
結構グロいんだけど……。
「これは、解体を待った方が良いね」
「そんな気がする。じゃあその辺で座って待ってよっか」
「だね」
これだけ大量に捕まえたのだから、少し時間はかかるだろう。
だがアブスは白い肉塊で手をいくつも作り、同時に十匹を解体している。
案外早く終わるかもしれないな、と思いながら僕は大木の根に腰かけた。




