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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第四章 魔族領へ
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4.17.封印を解くために


 一瞬期待の眼差しを向けたダチアとアトラックだったが、すぐに難しそうな顔をして悩み始めた。

 どうやら考えていることは同じらしく、一つの懸念点をダチアが上げるとアトラックが頷く。


「……封印を解いたとして、人間たちから敵視されないか?」


 悪魔や鬼たちには、彼が本当の悪ではないということを知っている。

 だから封印を解くことに何の問題もないのではあるが、天使は人間を取り込んでいる可能性が高い。

 それは僕も分かっている事だった。


 更に言えば、一般的には邪神とされている存在だ。

 その封印を解いたのであれば、僕たちが悪者扱いされるのは当然かもしれない。

 この事すらキュリィの『情報共有』で伝えられてしまったら、どうなるかは想像に難くなかった。


 ダチアの言葉を聞いて僕は悩んだ。

 確かにそうなってくると、封印を解くことが危険な行為になる。

 だけど今まで何の情報も掴めていない天使に対抗するには、彼らの力が必要だ。


 すると、アマリアズが得意げに口を開く。


「その辺は何とかなると思うよ」

「そうなのか?」

「あの人たちは基本的にいい人なんでしょ? それに、もしその情報が伝わっても確認する術は人間たちにはない。バレなければ問題ないってやつだね!」

「だが天使にはばれるだろう?」

「信者たちは彼らの話を信じるだろうけど、天使を知らない、崇拝していない国はそうもいかないさ。だから、敵はそんなに増えることはない」


 もうすでに、敵対する勢力は決まっている。

 天使に与する人間たちと、それを束ねる国と天使。

 他の国にも何か情報を流して協力するように仕掛けてくるかもしれないが、信者でない限りそれを真に受けるほど彼らも馬鹿ではないだろう。


 それにこの四百年間ひっそりと機会をうかがってきた者たちだ。

 大きく動くことはしておらず、着々と悪魔たちにバレない様に計画を進めていただけで、勢力としてはそこまで大きなものではないはず。


「まぁ、洗脳系技能がなければ、だけど」

「ふむ……。なんにせよ、悪魔だけでは太刀打ちできるか分からん。技能持ちも減り、増えてきた悪魔もまだ若くそこまで強くはない。鬼たちの協力があったとしても、どうなるか分からないのが現状か。であれば、やる価値はあるか」


 そう口にしてダチアはアトラックを見る。

 彼はまだ何かを思案しているようではあったが、とりあえず頷いてくれた。


 すると、アトラックが僕の様に歩いてきた。

 後ろに回り、両手を肩に置く。

 そして小さく首を横に振った。


「……そうですね。それが一番の理由です」

「え? なんて言ってるんですか?」

「アトラック様は、『なんにせよ宥漸を天使の手に渡してはならん』と申されている。確かにその通りだ。英雄の子を完全悪である天使に渡すわけにはいかない。悪を滅するために悪にならねばならぬならば、謹んで受け入れよう。昔の様に」


 くつくつとアトラックが笑う。

 アブスも釣られてくすくす笑い、ダチアは真剣な様子で僕を見つめた。


 話はまとまった、と言わんばかりにアマリアズが一度手を叩く。

 あまり時間は残されていない。

 いつ天使がここに攻めてくるか分からないのだ。

 応錬の封印を解くのは、できる限り早い方がいい。


「じゃ、その応錬の封印されている場所は何処なのかな?」

「地下だ。魔族領ドロッグ山脈の大洞窟に封印されている。昔は外で封印されていたのだが、ルリムコオス様がそれでは不憫だと洞窟を作って移動させたのだ」

「ほんとにめちゃくちゃだな悪魔の力ってのは……」

「あの人がおかしいだけだ」


 確かになんか、悪魔って変な技能? をいっぱい持っている気がする。

 アトラックさんも多分凄い技能持ってるんだろうし、アブスさんは防御に特化した技能なのかも。

 ほぼ不死身って言ってたし。


 とりあえず応錬って人が封印されている場所は分かった。

 じゃあ早速行こう!

 いろいろ懸念は残ってるけど、まずは封印を解かない事には始まらない。


「じゃあ案内をお願いしたいです!」

「いや、今の君では封印を解くのは無理だ」

「えっ?」


 あれぇーーーー?

 なんかアマリアズが言ってたことと違くない?


 そう思ってアマリアズの方を向いてみるが、彼も何故封印を解くことができないのか理解できていないらしく、首を傾げている。

 やり方としては間違っていないし、『決壊』は『封殺封印』の能力を完全に消し去ることができるはずだ。

 技能も開花したことだし、どこに問題があるのだろうか。


「今の君では、魔力が足りない」

「あっ」

「アマリアズ??」


 絶対失念してた声だったよね、今。

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