突発
課長編、後半始まりです。
突発、突然発生すること。
「どういうことなんだ。平ちゃん!」
ある日鈴木が会社に出社すると、重要書類が盗まれる事件が起きた。
「わかりません。会社に出社したら会社が荒らされていて、機密事項についての書類が何件か無くなっているそうなんです」
鈴木が出社してくると、会社が騒然とした雰囲気に包まれていた。
中小企業は預かる案件に秘密が多いため、最新鋭のセキュリティーが成されている。
そのため物取りが入るなどありえないのだ。
「内部か……」
鈴木の物言いに、平田は静かに頷いた。
セキュリティーもそれを知っている人間がいれば意味をなさない。
「誰が……」
鈴木の呟きに、平田は言い淀む姿を見せたが、すぐに顔を上げた。
「どうやら総務部の壺井さんが、今朝から行方不明になっているらしいんです」
「壺井が?」
「はい。朝から点呼が取られて、課長には私が連絡したので、確認が取れたことになっています。しかし壺井さんは誰の連絡も取れず、未だに出社もしていません。派遣社員も全員確認が取れましたので……間違いないかと」
平田は沈痛な面持ちで、言葉を絞り出す。
「それで、いったいどんな資料が盗まれたんだ?」
「それは……」
盗まれた資料は三つ。
1、旧型ロボットの研究データ
2、中小企業内部の見取り図
3、各企業から選ばれたヒーローについての記述
その三つは鈴木も知らない資料だった。
「そんなものがどうしてこんな中小企業あるんだ?」
鈴木の疑問はもっともなものだろう。
「それが……どうやらここは仮の地球防衛軍秘密基地ということになっていたらしいです」
平田がどこからそんな情報を手に入れてくれるのかわからなかったが、今は平田の情報を下に話し合いに参加する必要があった。
「平ちゃん行ってくる」
「はい。後はやっておきます。幹部会頑張ってください。それと……壺井さんを救ってあげてください」
平田は最初こそ、壺井を庇うような言葉を使っていたが、鈴木を知ることで、鈴木の人柄に触れたのだ。
「あなたならどんなことでもしてしまいそうだ」
平田は深々と鈴木に頭を下げた。
鈴木は会議場に入っていく。
黄島会長を除く、九人の幹部が集まった。
「鈴木君!遅いよ」
前川の声に出迎えられて、鈴木は席に着く。
前川に怒られるのも久しぶりだと緊張していた気持ちが落ち着いた。
「すみません。今日は外回りしてから来ようと思っていたので」
鈴木の言葉を聞いて、前川もしつこく追及はしてこなかった。
そして、鈴木が到着したことで、吉川が話し出した。
「皆もすでに聞いたと思うが、うちに保管されていた重要機密が盗み出された。盗んだのは、総務課の壺井 浩孝だ。監視カメラに彼が書類を持つ出す姿が確認されている。そして彼は行方がわかっていない。もちろんすぐに警察に報告するつもりだが、我々は重要な書類を盗まれたことで、他社からの信用も失うことになるだろう。皆も心して今回に案件にかかわってほしい」
吉川が状況報告とこれからの方針を語る。
「すみません。書類とは紙なのでしょうか?それともUSBなどのメモリーカードですか?」
鈴木は自身の知らない物が盗まれたので、どんな物を探せばいいのかわからなかった。
「今回盗まれたのは原本である紙の書類だ。盗まれたということはコピーも作られたと考えて全てを回収するのは不可能だろう」
「どうして壺井がそんな物を盗むんですか?」
鈴木にはわからなかった。
そんなものが何の役に立つのか、現在地球防衛という名目で他社と争っている場合ではないのだ。
資料を持ち出したとして、いったいどこに持っていこうというのか……
「まだ未確認だが、宇宙怪人と接触があったかもしれないと言われている」
「えっ!」
吉川の答えに鈴木は驚いた。
それは会議室に集まっている他の幹部も同じだったようで、会議室は驚きで言葉を失った。
「未確認ではあるが、壺井が最近、背の極端に低いチンピラ風の男とよく合っていたと報告が入っている。現在はその男も壺井同様捜索してもらっている」
吉川の言葉に驚いて会議室だったが、それならば今回の事件にも納得がいく。
宇宙怪人にも中小企業に協力してくれている宇宙人がいるのだ。
彼は穏健派で、多分今回の事件の黒幕は過激派の宇宙人が行ったことに壺井は加担したのだ。
「これからどうされるおつもりですか?」
吉川に前川が質問を投げかけた。
「まずは早期でことに当たることが先決だ。このビルの見取り図が盗まれているので、ロボット修理を行う場所の移動する。営業部と宣伝部は協力して移送場所の検討を」
「「はっ」」
営業部長と宣伝部長が返事を返す。
「さらにヒーロー達の安全確保。これは総務課に。さらに旧型ロボットのコアの処理を開発部に任される」
「かしこまりました」
「了解です」
前川と的場も吉川言葉に頷く。
「副社長、専務、常務は各方面への対応を」
「かしこまりました」
副社長が返事をして専務と常務も頷く。
鈴木は幹部候補なので、営業部の手伝いかと思っていると。
「鈴木君。君には壺井の捜索を手伝ってもらいたい。彼の協力を願いたいのだ」
吉川の言葉で鈴木は地下深くにいる宇宙人の事を思い浮かべた。
「はい!」
「これで方針は伝えた。皆迅速な行動を心がけてくれ」
吉川の言葉を最後に解散となった。
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