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間話、戦隊ヒーローの代替わり

 戦隊ヒーロー達も歳をとる。

初代戦隊ヒーローを務めた。五人も5年という歳月を訓練とロボットの操縦、戦いに明け暮れた。

 しかし、彼らも歳をとる。

歳をとれば社会で生きて行くために様々なことに時間がとられるようになり、ヒーローとしての活動にも支障が出始める。


「君達の後任を迎えようと思う」


 地球防衛軍、秘密基地に呼び出された。

五人の若者に、地球防衛軍司令長官から直々の通達が成された。


「やっとですか……」


 五人のうちの一人である。ブルーこと青柳は、溜息を吐いた。

彼はプログラミングの才能を活かして会社を立ち上げ、すでに社長として成功を収めている。

そのため仕事は年々忙しくなり、ヒーロー業をずっと引退したいと申し出ていたのだ。


「うむ。後任は高校を卒業したばかりの者達になる。君達には引き継ぎを頼みたいのだが」


 司令長官の申し出に応じたのは一人だけだった。


「すみません。今は私も新コスチュームの発注を頂きましたので、忙しくてそちらに手が回りません」


 桃鳥の会社でヒーローのコスチュームを担当している。

今回は彼女がデザインを担当するらしく。そちらで忙しいと断った。


「私もずっと会社に甘えてきたので、これからは会社優先にしたいと思います」


 黄島もまた自身の会社で行われている。

ロボットの修繕と、新型ロボットの開発に参加しようと思っている。


「俺は……今は出動以外の外出は制限されている」


 このチームのリーダーであり、中心人物である赤城は昨年の失態により、精神的にも社会的にもかなりのダメージを受けている。

 そのため、ヒーローとしても活動以外では親の監視がつくことになっている。

ヒーローとしては、さっさと行って来いと無理矢理連れて来られる始末なので、ここにも連行されてきたのだ。

 この会議が終わればすぐに戻らなければならない。


「では、私が引き継ぎ業務をしましょう」


 最後に残った緑川が司令長官の申し出を応じた。

彼は自衛隊として、日々地球防衛軍としても活動以外は訓練や内勤をしているのだ。


「おおぅ引き受けてくれるか。いやぁ~君がいてくれてよかったよ」


 司令長官は四人の冷たい言葉に、泣きそうになっていたが、緑川に救われたと何度握手を求めていた。


「話は以上でしょうか?」


 青柳が冷たく司令長官に、言葉をかける。


「ああ。引き継ぎが完全に終わるまでは君隊に司令を出すと思うが、あと少しよろしく頼む」


 司令長官は青柳の態度に恐縮していた。


「わかりました。では司令。お世話になりました」


 形式とはいえ、青柳が司令にお辞儀をしたので、全員それに習って頭を下げる。


「いや~あのね。まで司令は行くからね」


 司令は戸惑いながら応じるが、司令の様子など気にすることなく。

青柳たちは司令室を後にした。


「ワシって一番偉いんだよね?」


 司令の呟きを聞く者は誰もいなくなっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すまんな。勉」


 青柳は司令に取っていた態度とはまったく違い。

親しみを込めた声で、緑川ミドリカワ ベンに声をかけた。


「いいさ。ヤナも最近忙しいんだろ」


 ヤナとは青柳の愛称である。

ヤナと呼んでいるのはここにいるメンバーだけだが、彼らが幼馴染であり、古くからの友人同士だということが会話から伝わってくる。


「まぁまた皆で飯でも行こうぜ。なかなかプライベートでは会えてないからな」


 青柳の言葉に赤城がビクッとなる。

そして赤城は桃鳥に視線を向ける。


「龍牙、何を覚えているか知らないけれど。食事ぐらいいいんじゃない」


 桃鳥の言葉に赤城は一気に明るくなる。


「ああ。絶対行こうぜ」

「なんだ?お前ら付き合ってたんじゃないのか?」

「最近別れたのよ」


 青柳の言葉に桃鳥があっさりと答える。こういうときは女性の方が強いものだ。

桃鳥の言葉に元気になった赤城が一気に萎んでいく。


「ははは。まぁ男女の仲は俺には関係ないから知らんけどほどほどにしとけよ」


 青柳は赤城を見て、大笑いしていた。


「うるせぇ」


 赤城はそう言って返すことしかできなかった。


「それじゃ、緑川君。後はお願いするわね」


 その会話に黄島が入り、緑川に声をかける。


「おう。黄島も仕事頑張れよ」

「ええ。私は今が一番楽しいから」


 黄島は本当に楽しそうに笑顔で答えた。


「そうよね。愛しの太郎さんがいるもんね」

「もう。香澄!そんなんじゃないわよ」

「本当に~」


 女性同士の会話に赤城はさらに肩を落とし、さすがに可哀相に思った青柳が肩に叩く。


「まぁ色々あるさ。今度クラブに連れてってやるから元気出せよ」

「お前そんなとこ行ってるのかよ」

「まぁ金持ちの嗜みだろ」


 青柳は最近クラブにハマっていた。

そこにフラれ男の赤城を連れて行ってやろうと声をかけたのだ。


「勉も行こうぜ」

「そうだな。時間が合えばな」

「おう。また連絡するよ」


 そう言って青柳は地球防衛軍の秘密基地を後にした。

黄島や桃鳥も後に続く。残った二人は視線を合わせるが、緑川が苦笑いすると赤城は肩を落として去って行った。


「さぁ若い奴を鍛えるか」

 

 緑川は責任感が強いので、若い者達に戦隊ヒーローの心得を伝えようと思っていた。

こうして、5年もの間地球を守り続けたヒーロー達はその任を引退した。

 新しい戦隊ヒーロー達と共に、新型ロボットが導入される日は近い。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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