不正行為
不正行為、法律などの規範に従わない行為を指す。
どんな会社でも不正を行なって利益を上げたり、帳面を誤魔化すなどの行為を行う者が出てくる。
それは不正だと分かっていても、会社から定められた目標を達成できなかった場合。
簡単に不正ができることをわかっていて、手を染めずにいられますか。
「壺井君、いい加減にしてくれないか。ここの計算は間違っているし、誤字も多い。君も中小企業に勤める者ならば、これぐらいは知っていて当然だろう!」
前川の直属部下になった壺井が、部長になった前川に直接呼び出されて説教を受けていた。
彼は総務課に転属になってから態度が悪く。仕事の能率も悪い。
こうして課長時代の前川に説教を受けることも度々みられる光景だった。
総務課のメンバーは、古参の者が多く。
壺井が一番の若手係長であるのだが、どうしても皆の視線は鈴木と壺井を比べてるような視線になってしまう。
「営業課では営業事務の子に全て丸投げしていたんじゃないかい!」
総務課とは言うが、各部署には事務職が在住しており、総務課の仕事は社内の雑用に始まり、経理、人事、総務など多岐にわたる。
「いえ、そんなことは……」
「じゃあなんでできないの!」
前川の叫びは日ごと増している。それも仕方がないことだろう。
壺井は日増しに態度が悪くなり、仕事も適当にこなしているだけでミスが多い。
「以後気を付けます……」
壺井が深々と頭を下げたので、前川も大きく息を吐く。
「明日はもう少しまともな書類を提出してくれよ。行っていいよ」
「失礼します」
深々と頭を下げた壺井の顔を前川は見れない。
彼が、憎々しげに顔を歪めていたことなど前川にはわからないのだ。
「覚えていろよ」
壺井は前川の執務室から出て行く際に、ボソリと呟いた。
その呟きを聞いた者を聞いたならば、後の結果は変わっていたかもしれない。
鈴木が残業時のお弁当支給を始めてから、鈴木 太郎と言う名前は知らぬものはいない名前になっていた。
「『地下の掃除屋』がまた面白いことしているらしいな。今度は弁当支給かよ」
「らしいな。なんでも利益が上がったことで、他社へ大して還元する意味が込められてるらしいぞ」
「はぁ~下の者のことをよく考えてるんだな」
「本当にな。それに捻子屋さんとこの言ってたけどな。何かトラブるがあったり、困ったことがあったら鈴木に言えばいいって言ってたぞ。だいたいの相談は乗ってくれるらしい」
「はぁ~そんな人の良い奴なのか……」
そんな会話や噂がそこらしからで聞こえ始めていた。
「課長って本当に地下で有名人ですね」
平田はそんな噂を耳にしつつ、鈴木の横に並んで歩いていた。
「有名人?そんなわけないよ。特に変わったことはしてないんだから」
鈴木は笑顔で、平田の言葉に応じる。
そんな鈴木の様子に平田は呆れていた。
平田も鈴木と付き合いだして一カ月が経とうとしていた。
そこで気付いたことは、鈴木という人物は確かに平凡なのだ。
平凡なのだが、人が当たり前にできることはもちろんできるし、人が当たり前にできない苦手がこともそこそこ平凡にこなしてしまう。
それに飽き足らず、人が思いついてもできないことを平然とやってのけるのだ。
「鈴木課長って変わり者って言われませんか?」
「いいや。至って平凡で面白みのない奴だと言われたことはあるけど」
鈴木の回答に平田は、それを言った人は本当の鈴木を知らないのだと思った。
「それで次は何を考えているんですか?」
「次はって、まるでいつも何か考えてるみたいな言い方だな」
「違うんですか?」
「まぁ、そろそろ実験も終わった新型ロボットが実働試験に入るから。実践導入に備えて準備が必要だと思ってるぐらいだよ」
「なるほど、今度は新型ロボットでとんでもないことをするんですね……不正もせずによくここまで……」
平田の呟きは鈴木には聞こえない。
「最後なんて言ったんだ?」
「いえいえ。こっちの話です。それより赤城の梶原さんでも誘ってクラブに行きましょうよ」
平田は梶原を誘うことで、経費が使えることを知っている。
そのためこうして鈴木に願ってくるのだ。
「またかい。まぁ実働試験の話しもしたいから梶原さんに会うのはいいけど……」
鈴木も少しぐらいならば、問題ないかと平田の提案に乗ることにした。
実働試験がとんでもない事件を起こすとは、このときの鈴木には予測もできなかった。
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