集中工事
集中工事、お客さまに安全な高速道路を安心してご利用いただくために短期間で集中的に工事を行うものです。 中央道集中工事の場合、個別に工事を実施する場合に比べ、年間の工事規制回数を約6割削減でき、工事による渋滞が大幅に削減できる効果があります。
「すみません。そこにタンクローリー入りますので道を空けてください」
鈴木は警備服を身に纏い、赤い電光を振り続けている。
夜間にバイトしているわけではない。どちらかというと趣味が少ない鈴木は貯金が趣味だと言ってもいい。
そのためある程度の収入があるので、貯金はそれなりにできている。
では何をしているのかということになるが、現在は中小企業の残業の一環として、夜間整備の手伝いをしているのだ。年末に新型ロボットは完成した。
しかし、発進させるための出動口が怪人に破壊される恐れがあるので、新型ロボットのために急遽新しい発進口を作ることになったのだ。
「ちょっと、ちょっと。こんな夜中に工事なんて聞いてないよ?ちゃんと許可とってある?」
警備服を着ている鈴木に警察官が話しかけてくる。
「はい。中小企業で許可を頂いてると思いますが」
「本当に?僕は聞いてないよ。君は誰の許可を取ったの?」
どうにもねちっこく聞いてくる警察官だと思いながら、許可証を取り出して警察官に見せる。
「うむ。まぁ本当に許可はとってあるみたいだね。だけどねぇ~苦情が来てるんだよ。こんな夜中に工事されたら民衆の皆さんの騒音妨害になるってね。そこんとこ分かってる?それにね。お宅らの中に自転車で着ている人いない?自転車は困るんだよね。この辺でビルを管理している人が厳しいからさぁ。苦情が多いんだよ」
しつこく警官が鈴木に絡んでくる。
鈴木もどう対処したものかと悩んでいると、平田 裕樹が鈴木の横に並び立つ。
「いやぁ~警官さん、すみません。すぐに終わらせますのでどうか勘弁してください」
平田は鈴木が営業三課の課長になったことで配属されてきた営業課係長でつまり部下だ。
歳は鈴木と一つしか変わらない。しかし、物腰が柔らかく、人当たりの良さそうな雰囲気と優しそうな顔をして仕事ができる。
「君は?」
「僕ですか?僕は中小企業の係長をしている平田と申します。本当にすみませんねぇ」
平田は警察官に謝罪をしながら、鈴木を手で下がるように指示を出す。鈴木を警察官から遠ざける。
鈴木が平田の指示に従って、警官から一定の距離を空けると、平田も警察から距離を取り始める。
「すみません。まだ仕事が残っていますので戻りますね。苦情が出ないように早々に終わらせますんで」
何度も警察に頭を下げて平田は警察と距離を空けた。
平田の対応に警察も二の句が継げずに、見送ることしかできなかったようだ。
「鈴木課長。あんなのは適当にあしらってればいいんですよ。どうせ自分の仕事が暇で話しかけてるだけなんですから。それにこんなオフィス街に住宅なんて少ないはずですよ。苦情とかもあの警官のでまかせかもしれません」
平田は鈴木に笑いかけて作業に戻って行く。
「ありがとう。平ちゃん」
平ちゃんとは平田の愛称で、会社ではほとんどの者がそう呼んでいる。
平田は人当たりもよく、仕事も真面目に取り組むので評価も高い。
必要なときに必要なことをしてくれるので、鈴木は部下としてありがたい存在だと思っていた。
「それにしても誰が警官を呼んだんだろう」
中小企業がここで工事を行うことは事前に周囲のビルのオーナーに連絡がいっている。
もちろん国や道路局にも連絡しているのだ。だからこそ、警察が茶々を入れてくるのは不自然に思えた。
「おーい。このまま進んでもいいのか?」
考え事をしているとトラックの運転手が鈴木に質問を投げかけてきた。
鈴木は考え事を一旦やめて、仕事に戻った。
年が明けて、日付は1月5日を迎えていた。
宇宙怪人とは律儀なもので、お正月も年末も関係なく毎日やってくる。
その度にロボットは出動して傷を負う。
次の日も戦うためには傷を残したままにできないため、鈴木達も正月返上で出社した。
「初詣ぐらいは行ってください」
望のそんな願いを叶えるために、元旦は睡眠時間を削って夜中からご来光を見に行ったりもしたが、半分寝ていて何が何やら覚えていない。
一応は望と正月を迎えられたので良しとしよう。
昼間は仕事があり、夜には望の家で行わるパーティーに招待されて出席したが、上流階級パーティー中だと言うのに寝ていない頭は真っ白になり、何も覚えていない。
「グル……」
そういえば家に帰ればホルンが鳴くようになった。
重低音でグルっと一言いうだけだが、鳴くときはご飯が欲しいときなので分かりやすい。
トイレは相変わらず垂れ流し状態だ。前よりもホルンの身体が大きくなったような気がする。止まり木がミシミシと折れそうな音を出している。
「夜勤は辛い」
1月5日は日曜日だったが、ロボットが出動できなくては日本が支配されてしまう。中小企業と子会社総出で、何とか作業を終えることができた。
「眠い」
鈴木は警備服のまま部屋に戻り眠りに就いた。課長になっても雑用は変わらないのが鈴木の日常であった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
感想・評価お待ちしております\(^o^)/




