日常に戻る
◇◆◇◆
「────神殿の上層部の断罪は、上手くいったようだ」
そう言って、皇室より届いた手紙を一瞥するのはセオドアさんだった。
リビングのソファに腰掛ける彼は、『まあ、あれだけお膳立てしたのだから当然だな』と口にする。
おもむろに手紙を仕舞う彼の前で、私は少し肩の力を抜いた。
「それは何よりです」
安心してソファの背もたれに寄り掛かり、私は僅かに表情を和らげる。
その横で、キースさんが軽く伸びをした。
「それにしても、思ったより動きが早かったッスね〜」
「皇室は神殿のことをあまり良く思ってなかったから、これ幸いと断罪したらしい」
『近頃の神殿は色んな意味で、目に余るからな』と語り、セオドアさんは肩を竦めた。
────と、ここでアランさんがガシガシと頭を搔く。
「ところで、情報源の俺達のことはきちんと伏せてあるんだよな?」
「ああ。実家を通して情報提供を行ったから、皇室にも我々のことはバレていない筈だ」
『神殿には、尚更』と述べるセオドアさんに、アランさんはニッと笑う。
「なら、一先ずこれで一件落着だな────って、ことで!ミレイ、タブレットを貸してくれ!いい加減、漫画が読みたい!」
座ったまま私の方に身を乗り出し、アランさんは『続きがめっちゃ気になってて!』と述べた。
その瞬間、キースさんとセオドアさんが顔を上げる。
「あっ、僕もレシピ本見たいッス!そろそろ昼食だし、先にタブレットを借りてもいいッスか!」
「待て。ここは神殿の断罪で最も貢献した私に、譲れ。滞っていた魔法の研究を再開したい」
「いくらセオドアの頼みでも、それは無理だ!てか、俺達だって神殿の断罪に結構貢献しただろ!」
『その言い分は認められない!』と抗議し、アランさんは代わりに早い者勝ち理論を展開した。
が、キースさんとセオドアさんに反対されて……ちょっとした言い合いになる。
最近、神殿の対応に追われて好きなようにタブレットを使えなかったから、皆我慢の限界みたいだね。
まあ、それは私も同じ訳で……
「ここは公平に、くじ引きで順番を決めましょう」
片手を上げて提案すると、アランさん達は少し考え込んだあと『そうするか』と頷いた。
このまま言い合いを続けても埒が明かない、と判断したらしい。
いそいそとくじ引きの準備をする彼らの前で、私はようやく日常が戻ってきたことを……神殿の件が完全に終わったことを実感する。
と同時に────『どうか、この平穏が永遠に続きますように』と願った。
『本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜』はこれにて完結となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
本当の本当に、ありがとうございました!!!
正直、本作は緩急の付け方が微妙で……物語としてあまり盛り上がらなかったので、途中リタイアの方かなり多かったと思うんです。
だから、こうしてあとがきまで読んでいただけているのが凄く嬉しいです!
次こういう物語を書くときはもっと面白く出来るよう、頑張ります!
それでは、本作の裏話を紹介します。
・本作は当初スローライフ系の物語にするつもりだった
→主人公をのんびりした性格にしたのも、序盤ゆったりした展開にしたのもスローライフっぽくするためです。
でも、上手く物語を展開出来ず……結局シリアスな方向にシフトしちゃったんですよね。
(緩急の付け方が微妙になったのは、多分ここが問題かと)
・本当はミレイに元の世界の道具や知識を広めさせて、周りに『あいつ、すげぇーな』って感心される展開を多く入れる筈だった
→過保護な不死鳥により、『元の世界のことは広めるな!タブレットのことも隠せ!』と徹底されたため、そういう展開は挟めず……強いて言うなら既製服の流れだけど、これまた微妙な感じになってしまって。
あと、ミレイが『あくまで、他人の知識や発明を拝借しているだけ』という感覚なので、他人事感ハンパないんですよね。
(いや、その感覚はある意味間違っていないんですが)
・タブレットで未来を知っているミレイがたまに口を滑らせて、一部の人間に予言者なんじゃないか?と勘違いされる展開を入れる予定だった
→これまた上記と同じ理由で、ボツになりました。
・初期プロットでは、神獣騒動をきっかけにミレイが表舞台に立つ手筈となっていた
→『これ以上、ミレイの存在を隠しておくことは出来ない。だから、大公家を後ろ盾にしつつ表舞台に立ち、ガッツリ周りを牽制しよう!』みたいな流れになる予定でした。
ただ、この先の展開がどうしても貴族絡みの面倒臭いものになってしまうため(主人公達が不本意ながらも仕方なく力を貸す、みたいな流れになりそうなので)、悩んだ末に記憶消去の方向へシフトしました。
・当初、アランは爽やかな好青年キャラになる筈だった
→結局、私の手癖というか……書き慣れている脳筋キャラに落ち着きました。
・ミレイ奪還や神殿成敗の際、ジーク(セオドアの兄)も協力者として出す予定だった
→初期段階では、ベネット男爵を問い詰めるときに登場させる筈でした。
でも、そのシーンはただでさえキャラが多かったため『神殿成敗のときでいいか』となり、登場を見送り。
それで、『いつ登場させようか』と悩んでいる間に本編完結……本当にごめん、ジーク。
本作の裏話(というか、反省会みたいになってしまいましたね!申し訳ありません!)は、これで以上になります。
それでは、改めまして……
本作を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
また気が向いた時にでも、ミレイ達の物語を見に来ていただけますと幸いです┏○ペコッ




