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【完結】悪役令嬢が転生者の異世界で主人公やってます!  作者: 夕綾 るか
第一章

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いわゆる、偽装婚約じゃなくて?


 アラスターがすでに亡くなっていることを知った私は、父から聞いた話と物語を照らし合わせていた。


 物語と違っていた点はクオーツ侯爵家の馬車は単独事故だったということと、その場にいたのが二人だけだったということだ。

 このどちらにも共通するのは――“少年”が存在していないこと。


 何があって、その少年がその場にいなかったのか。そして、アラスターはなぜ亡くなったのか。少年が出てこなかったことによって、彼が少年の代わりに亡くなった、ということだろうか。


(でも――物語の登場人物がそんな簡単に亡くなってしまうもの? そもそも、ディアーナはいつ転生したことに気がついたのだろう?)


 彼女がその事故の前に転生していた場合、その中で何か不都合なことが起こったのかもしれない。


 どちらにしても過去に戻ってアラスターの命を救うことはできないし、今から彼を生き返らせることもできない。


 ただ、私の胸の中にはモヤモヤと嫌な霧が立ち込めていた。





「あのね、アイリーン。もし君さえよければなんだけど――」


 数日経った、ある日。


 レオから昼食に誘われた私はいつものカフェテリアではなく、中庭のベンチに座っていた。


 言いづらそうに口籠りながら、こちらを伺うレオに私は首を傾げる。レオは意を決したように大きく息を吐き出した。


「――僕の婚約者にならない?」

「……」


(――え? 婚約者?)


「フレデリック殿下やディルク様に絡まれるのって、ディアーナ様が関係しているんでしょ?」


 あまりに突飛な発言に呆然としていた私に、レオが話を続ける。


「それなら、アイリーンが僕と婚約してしまえば何も言われなくなるのかな、って」


 確かに――私も婚約者ができれば、私の言っている事を信じて貰えるのでは、と思っていた。

 けれど、それにレオを巻き込もうと思っていない。まあ、これまでは散々巻き込んできてしまったから、偉そうなことは言えないけど。

 普段から気配を消して過ごしているレオにそこまで負担をかけたくない。せっかくできた友だちだから。


「でも、それだとレオに迷惑をかけてしまうわ」

「僕はアイリーンのことが好きだよ」

「……えっ?」


(――今、好きって言った?)


「だから、アイリーンが僕の婚約者になってくれたら嬉しいかな」


(それって、友だちとして好きってことよね?)


 そんなサラリと愛の告白するはずないもの。

 今目の前にいるレオは先ほどまで口籠っていたとは思えないほど堂々としていて、何なら口元に微笑みまで浮かべている。


 だから、きっと――

 

「偽装婚約、ってことね!」

「……は?」


 レオは呆気に取られたように口をあんぐりと開けたまま固まった。


「だって、友だちとして好きってことよね? それに友だちを助けるために婚約者のフリをしてくれるってことでしょう?」


 レオは小さく息を吐いた。


「そんなわけ、あるはずないでしょ」


 そして、いつものように右手で右耳辺りの髪をクシャッと掴むと、こめかみを刺激するようにグリグリと擦った。


 ――また、そのクセ。どこかで……


 既視感のある動作に見入っていると、レオは事の経緯を話し始めた。


「実は……少し前、僕の家にロードナイト伯爵が来たんだ」

「ええ?」

「まあ、いろいろと話はあったのだけれど、そこで僕から伯爵にお願いしたんだ」

「どうして……?」


 父がガーネット伯爵家に行っていたことも驚いたし、いろいろとあった話の内容も気になるけど、一番気になったのは、レオがどうしてそんなお願いを父にしたのか、だ。


 レオは少し考えをまとめるかのように視線を落としてから説明し始めた。


「学園でのアイリーンの様子と、フレデリック殿下やディルク様、カイルスとの会話の内容を調査する過程で、僕にも直接確認に来たんだよ。証言しているうちに、僕は彼らの話がどれも未来に起きることで、今の話ではないということに気がついたんだ。それだけではなく、まるでアイリーンが彼らのことを好きになるとでもいうような言い方をしていることにも」


 レオの口元が真横に結ばれる。


「だから、僕が婚約者になってアイリーンを側で護ります、って伯爵に言ったんだよ。伯爵は僕の気持ちに気づいていたみたいだし」

「へ……?」


(お父様がレオの気持ちに気づいてた? って、どういうこと? レオと会ったこともなかったのに?)


「伯爵がうちに来た時、イヤーカフのことがバレちゃって」

「それだけで……何で?」


 レオがイヤーカフを外してみせる。


「この石、だよ」

「レッドガーネット?」

「そう。これは君の家に請求したもので、それを僕が持っていた」


(――ん? だから?)


「アイリーンも同じものを持っているけど、石の色は違っている」

「ええ、そうね」


 そういえばこの前、父にイヤーカフを見せてくれと言われたことがあった。請求書の記載で不明点があるからと言っていたけど。


「僕らはイヤーカフを贈り合う関係で、石はどちらもガーネットだった。石が好きなアイリーンならガーネットが持つ石の意味、わかるよね?」


 私は息を吸い込んだ。


「――“変わらぬ愛”……」

「“一途な愛”って意味もあるよ」


 私はハッと顔を上げた。

 魔法具を外したレオの瞳がまっすぐに私を見つめていた。



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