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【33】おっさん、修理する


 アレックスたちからかけられた不名誉な嫌疑をどうにかこうにか晴らし、俺は大金の代わりに壊れたオートマタを報酬として受け取った。


 報酬分で足りなければ不足分を現金で支払うつもりだったのだが、アレックスからは大丈夫だと言われる。


 何でも、こういった古代の遺物の研究者に売ろうとしたが、オートマタ自体は各地で見つかっていて、それほど珍しいわけでもなく、おまけに長年研究されても成果がほとんどないことから、今のところ買い手が見つかっていないらしい。今はオートマタの研究自体、かなり下火になっているとか。


 かといって分解して素材を売ろうとしても、貴重な素材が使われているとはいえ、その量は多くなく、思ったほどの値段にはならなかったようだ。


 そんなわけで、俺はオートマタを今回の報酬として手に入れた。


 幼い少女型のオートマタは、人に比べれば少し重いが、一人で運べない重さでもない。アレックスたちから貰い受け、一人で何とか家まで持ち帰った。もちろん、布で包んだ上で運んだから、幼女誘拐などの嫌疑をかけられることもなかった。


 見た目は完全に人間だから、そのまま運んだら勘違いされてしまいかねないからな。


 ともかく――アレックスたちは、翌日、さっそく【迷いの森】へアイテムを設置しに行ったみたいだ。


 果たして【迷いの森】に正道を開拓できるのか、関わった俺としても気になるところだし、アレックスたちの帰還を楽しみに待とう。


 一方、俺は普段通りに店を営業しつつ、閉店後や定休日などを利用して、オートマタの修復に着手した。


 とりあえず一番最初に行ったのは、オートマタを鑑定したことだ。


 鑑定結果は以下の通り。



【名称】魔導式自律人形

【種別】マジックアイテム

【効果】魔導機械工学によって製造された自律人形。当該機体は高度な人工人格を備え、学習機能がある。他、大容量畜魔器によって稼働用魔力を最大約200日分蓄えることが可能で、所有者登録があれば、蓄えた魔力を所有者が引き出して使うこともできる。なお、当該機体に戦闘用機能は存在しない。一日の稼働用魔力は仕事量により変動はあるが、平均「500」消費する。

【貯蓄魔力】0/99999

【耐久値】0/100

【修復素材】鉄、銅、銀、金、ミスリル、純粋魔力結晶、精霊結晶、翼竜種皮膜、炭素、硫黄、塩化ナトリウム、純化処理済み魔石粉末、ミミックスライム粘液、石英…………



 修復素材には知っている素材から聞いたこともない素材まで、実に多種多様な名称がずらずらと並んでいた。


 簡単に用意できる物がある一方、絶対に用意できないと思われる物も多い。純粋魔力結晶は高ランク迷宮で稀に採掘される鉱物で凄まじく高いし、精霊結晶に至っては純粋魔力結晶以上の貴重品だ。純化処理済み魔石粉末など聞いたこともないし、それは塩化ナトリウムなる素材についても同様。炭素というのは炭とは違う物なのだろうか?


「全部用意するのは、どうも無理っぽいな……」


 幸いにして、『パーフェクトリペア』ならば修復素材を魔力で代用することもできるが、素材によって必要とする魔力が変化するのは、実はすでに知っている。


 木剣の他に、半分に切断した銀の匙を素材なしで修復してみたのだが、木剣は「200」で済んだのに、質量としてはそれより遥かに小さい銀の匙は、なんと「400」も消費してしまったのだ。


 果たして魔力だけで、完全に修復することができるのか。できるにしても、どれくらいの魔力が必要なのか。


「まあ、試してみるしかないよな」


 場所は自宅。


 アイテムを作るための工房として利用している一室で、作業台の上に寝かせた少女型のオートマタに手を翳してスキルを発動する。


 ――『パーフェクトリペア』


 オートマタが微かに光り輝き、俺の中からどんどんと魔力が失われていく。


 おおよそ「1000」の魔力を消費したところで、俺はスキルを中断した。急速に魔力を消費したことによる目眩と息切れにも似た症状を堪えながら、スキル行使の結果を確認してみた。


「…………変化があったようには、見えないが……いや、肌の劣化が、少し改善している……のか?」


 目に見える変化といえば、それくらいのものであった。


 近くでよくよく観察してみて、ようやく気づくくらいのものだが、オートマタの人工的な皮膚には、おそらく劣化によると思われるひび割れが無数に走っていたのだ。


 そのひび割れが修復されたような……気がする。


 もちろん失われた右腕や右足には何の変化もない。


「1000」という決して少なくない魔力を消費してこれでは、完全修復まで何年掛かるか分かったものではなかった。


 素材を使わず、魔力だけで修復するのは現実的ではないらしい。


 となれば、できる限り素材を集めて修復する他ないだろう。どうしても手に入らない素材については、魔力で代用するしかないだろうが。


 そんなわけで、俺は『アイテム鑑定』で表示される修復素材を集めることにした。


 鉄、銅、銀は、比較的に簡単に手に入る。金も少量であれば、購入することはできるだろう。大量に必要だったりしたら、金銭的な理由で難しいが。


 そしてミスリルについては、幸いにして手持ちがある。


 俺がまだ冒険者として活躍することを目指していた頃、爪の先に火を灯すような節制を重ねて貯金し、苦労して購入したミスリル製の短剣があるのだ。


 とはいっても、純ミスリルではなく合金製だが。


 ちょうど鉄との合金だし、精錬せずに使えないだろうか。もしも純ミスリルが必要だったら、少し困るところだ。


 他、翼竜の皮膜とミミックスライムの粘液については冒険者ギルドに依頼すると、翼竜の皮膜はギルドに在庫があったらしく、すぐに手に入った。粘液については、冒険者に依頼を出すことになった。ミミックスライムはミスティア大森林に生息しているから、入手するのはそれほど難しくないだろう。


 炭素とやらは良く分からないが、炭を用意してみた。硫黄の入手も難しくはない。塩化ナトリウムとやらは、ちょっと分からない。石英の入手も大丈夫。純化処理済み魔石粉末……ただの魔石ではダメだろうか? とりあえず、魔石を用意してみた。


 とにもかくにも、そうして集められるだけの素材をかき集めて、『パーフェクトリペア』を繰り返す。


 集めた素材も、ほとんどはスキル行使中に光となってオートマタに吸収されたが、吸収されなかった素材が一つだけあった。


 魔石がそうだ。純化処理済み魔石粉末と魔石は別物らしい。炭素は炭でも良かったようだが……。しかし幸いにして、他の物は素材として使うことができた。


 そうして『パーフェクトリペア』を繰り返すこと、おおよそ二週間。


 素材ありきでも消費した魔力は3万を優に超えているのではなかろうか?


 ここ最近は、毎日限界まで魔力回復ポーションを飲んでの作業になっていた。


「見た目は完全に修復されたんだが……まだダメか」


 作業台の上に寝かせられたオートマタは、失われていた右腕も右足も、欠損していた部位の全てが見事に修復され、元通りになっている。


 肌の質感も、まさに生きているかのようだ。


 外から見た限りにおいては、完全に修復されているように見えるのだが、鑑定してみるとまだ完全ではないらしい。



【名称】魔導式自律人形

【種別】マジックアイテム

【効果】魔導機械工学によって製造された自律人形。当該機体は高度な人工人格を備え、学習機能がある。他、大容量畜魔器によって稼働用魔力を最大約200日分蓄えることが可能で、所有者登録があれば、蓄えた魔力を所有者が引き出して使うこともできる。なお、当該機体に戦闘用機能は存在しない。一日の稼働用魔力は仕事量により変動はあるが、平均「500」消費する。

【貯蓄魔力】0/99999

【耐久値】0/100

【修復素材】純粋魔力結晶、精霊結晶



 どうやら『パーフェクトリペア』は、術者が構造を理解していない物でも、問題なく修復することができるらしい。それはここまで修復されたことから、ほぼ確実だ。


 スキルの検証という目的は達したと言って良いだろう。しかし、ここまで来たら完璧に修復したいものだ。


 だが、修復素材で表示される素材が「残り三つ」になった後、すでに1万以上の魔力を消費して『パーフェクトリペア』を使い続けているが、【耐久値】がゼロから増える様子はない。


 内一つは「純化処理済み魔石粉末」だったのだが、途中で表記が消えたので、たぶん魔力によって代替したのだろう。


 スキルの入れ換え業を始めて以降、店にやって来るお客は増え続けているし、補充商品を作る上でも、これ以上無駄に魔力を消費している余裕もない。


 かといって、残る修復素材は高価過ぎて手が出せない。


 一旦、オートマタの修復は保留にするべきかと考え始めた頃――俺はアレックスたち経由で、領主様から呼び出されることになった。


 アレックスたちが俺の作ったアイテムを持って【迷いの森】へ出向いてから二週間と少しばかりが経過し、ようやくカウンティアに戻って来たのだった。


 その翌日のことである。



お読みくださりありがとうございます(・∀・)

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