【29】おっさん、確認する
冒険者クラン【ブラッド・メイカーズ】の倉庫は一階東の端にあった。
倉庫と言っても別に蔵を建てているわけではなく、クランハウス一階の何部屋かを、物置代わりに使っているようだ。
俺がアレックスたちに案内されたのはその部屋の内の一つで、ここにスキル付きのアイテムを纏めてくれたらしい。
「これは……大量だな」
「すみません、何が必要になるか判断できなかったものですから。とりあえず、片っ端から集めてみました」
物置部屋の中に入ると大量のアイテムたちが雑多に置かれていた。
部屋の三辺には棚が設置され、まったく統一性のないアイテムたちが収納されている。のみならず、床や部屋中央に置かれている机の上にも集めたアイテムが並べられていた。
これら全てがスキル付きのアイテムなのだと思うと、何というか壮観だ。
一部は領主様から預かった品だというが、それでも大部分は【ブラッド・メイカーズ】の所有品のはずで、さすがにA級クランは伊達ではない。全部売ったら凄い金額になりそうだな。
「ロイドさん、こっちの部屋も見てください」
「ん? まだ何かあるのか?」
アレックスに最初に案内されたのとは別の部屋へと誘導される。
付いて行くと、それはすぐ隣の部屋で、そこにもアイテムが所狭しと置かれていた。
ただ、最初の部屋は幾らか整理されていたのに比べて、こちらはただ物を置いただけという感じで、ごちゃっとしている。
「こっちに置いてあるのは魔道具やスキルの付いていないアイテムなどですね。スキルを付与するためのアイテムとして使ってください。中には結構良い素材で作られている物もありますから、複数のスキルを付与するのに使えるはずです」
「ああ、なるほどな。ありがとう、使わせてもらうよ」
アレックスには店でスキル入れ換えをするときに、『スキル抽出』と『スキル付与』の仕様は説明していた。なので気を回してスキルを付与するためのアイテムも用意してくれたみたいだ。
俺は礼を言いつつ部屋の中に入り、ざっと見回してみる。
魔道具からスキルの付いていないらしい武器や防具に装飾品など、本当に色々ある。魔道具それ自体はスキルを付与することはできないのだが、高品質の魔道具の場合は使われている素材が高価なので、『アイテム分解』で取り出した素材を利用する――という手もあるだろう。
ただ、高品質の魔道具を分解するというのは申し訳ない気もするし、できれば装備品の類いで済ませたいところだ。
「本当に色々あるな。……って、うおッ!?」
室内のアイテムを確認していると、とあるアイテムを目にしてぎょっとしてしまった。
それは人の形をしている。
見た目は10歳くらいの少女に見えるのだが、良く見れば人ではないことが分かった。右腕と右足が失われていて、その断面から金属の部品や用途不明なケーブルのような物が覗いているのだ。
「ああ、あれは【魔女の塔】を探索した時に見つけたオートマタですね。といっても、僕らが見つけたときにはもう壊れていたんですが、研究者なら買い取ってくれるかと思って持ち帰ったんです。最悪、古代の遺物なので素材だけでも高く売れるはずですから」
と、アレックスが説明してくれた。
――オートマタ。
それは現在の技術では作ることのできない古代の遺物で、ロストテクノロジーの塊だ。迷宮化した古代の遺跡などでは保存状態の良い形で見つかることもあると聞いている。
目の前の少女型オートマタは手足どころか右半身にかなりの損傷があるようだ。静かに目を閉じている表情はあどけなく、ただ安らかに眠っているだけにも見えた。
このオートマタをスキル付与の対象物にするには、『アイテム分解』を使った上で別の物に加工せねばならないが、あまりにも人間そっくりなために、分解するのはただの魔道具以上に躊躇してしまうな。
おそらく、今回の依頼で使うことはないだろう。
一通り物置部屋のアイテムを確認して、俺はアレックスたちに向き直った。
「分かった。それじゃあ、ご期待に添えるかは分からないけど、とりあえず頑張ってみるよ」
「はい、お願いします、ロイドさん」
「頼むぜ」
アレックスとスカーレットは頷き、それからクランマスター室に戻っていった。
一方、俺は隣の部屋に戻ってスキル付きのアイテムを手に取る。
素材となるアイテムを確認していくだけでも一苦労だ。果たして今日中に終わるかどうか。
一応は領主様のご依頼ということだし、優先順位は高く見積もるべきだろう。もしも今日中に終わらなかったら、明日以降も店を閉めた方が良いかもしれないな。
「さて……やるか」
俺は気合いを入れて作業に取りかかった。
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