第323話 闇の片翼
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――レゼルの闇の片翼のなかでは、深遠なる闇の世界が広がっていた。
闇の世界のなかで、ひとり立つデスアシュテルの魂。
無限とも思えるほどに広がる夜闇。
孤独な世界。
……しかしその傍らに、寄りそうように立つ魂があった。
「お疲れさまでした。
やっとまた会えましたね」
そこにいたのは、レヴィの魂。
赤みの混じる黒髪に、オパールを思わせる虹色の瞳。
彼女は生きていたときと変わらぬままの姿で、ほほえんでいた。
しかし、デスアシュテルは浮かない表情を浮かべて、うつむいたままだ。
『すまない、レヴィ。結局私は、敗れてしまった。私たちの国の行く末を見届けることもできずに……』
「ううん、いいの。
だって、あなたは私との約束を守るため、これまでずっと戦いつづけてくれていたんですよね」
『レヴィ……』
デスアシュテルは顔をあげ、レヴィを見返した。
「あなたのおかげで、私たちは繁栄をつづけたファルンの千年後の姿を見ることができました。そのことがなにより私はうれしいのです。
……それに、レゼルさんならきっとこの国を、世界を、さらに良くしていってくれますよ」
レゼルの片翼に宿るふたつの魂。
ふたつの魂はきっとこれからもずっと寄りそいつづけ、レゼルの新たなちからとなってくれることだろう。
ふたつの魂は、常にともに……。
「これからは、ずっといっしょですね?」
レヴィはもう一度、ほほえみかけた。
今のふたりのあいだには、神と人との隔たりなどあるはずもなく。
ヨシュアもまた、レヴィへと優しくほほえみかけた。
「ああ、そうだな」
ふたつの魂を、穏やかな安らぎの夜闇が包みこんでいた。
今回は短かったので、次回投稿は10分後の19時10分に予約投稿します。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします!




