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第322話 闇と光の統合

 レゼルに記憶と想いを伝えたデスアシュテル。

 彼の肉体と、闇の神剣レヴァスキュリテの刀身を、淡い光が包みこんでいく。

 そうして彼らは少しずつかたちを失っていき、消えてなくなった。


 まっ白な空間に、ひとり残されたレゼル。

 残された光の片翼だけが、美しき光の残渣(ざんさ)をこぼしながら、(きら)めいていた。


 ……ふと、彼女は傍らに落ちていたルクテミシリオンを拾いあげた。

 すると、折れていたはずの一方の刀身が、根元から再生されてゆく!


 新たに生えいでたのは元の光りかがやく刀身ではなく、漆黒の闇の刀身であった。

 ルクテミシリオンの刀身が再生されたのとともに、レゼルの背中にも漆黒の片翼が顕現(けんげん)した。


 デスアシュテルが背にもっていたのと同じ、この世界のすべての闇を担う翼。

 レゼルはルクテミシリオンの新たな刀身と、自身に生えいでた翼を交互に見比べていた。


『これは……』


 するとどこからか、デスアシュテルの声が聞こえてきた。


『よくぞ私にうち勝った。褒美に、私のちからをくれてやる』


 デスアシュテルと、彼の半身であったレヴァスキュリテは一体となり、姿を変え、レゼルの新たなる翼となった。

 レゼルは『光の翼』と『闇の翼』をあわせもつ存在となったのである!


『創世の神と破壊の神のちからをあわせもった今のお前は、唯一神とも言える存在だ。

 永遠の命を手に入れることも、世界じゅうの人間と龍を意のままに操ることも、思いどおりの世界に造りかえることも可能だろう』


 創造を司る光のちからと、破壊を司る闇のちから。

 創造と破壊を繰りかえすことで、いかなることも可能となる。

 もちろん、レゼルが目指しつづけてきた、『夢の国』を造りだすことも――。


『これから迎えるのは神なき世界。

 得たちからをどのように使うのかは、お前の勝手だ。好きにするがいい』


 最後にそう語りかけると、デスアシュテルの声はしなくなった。

 レゼルの片翼のなかで、彼の意思は眠りについたのだ。


 レゼルはそっと目を閉じた。

 彼女の新たなちからとなった闇の龍神への感謝を、胸に秘めて。


『……デスアシュテル、ありがとうございます……』


 そうして、彼女はゆっくりと目をひらいた。


 次に彼女の眼前に広がっていたのは白の世界ではなく、蒼き草原。

 上を見あげれば天翼(てんよく)の浮遊城は消滅し、無限の空が広がるばかり。そして……。


「レゼルっ!!」


 グレイスがいた。


「レゼル様!!」

「姫様!!」


 グレイスだけじゃない。ともに戦ってきた仲間たちもいる。

 シュフェルはアレスに抱えられて、スヤスヤと眠っていた。


 みんな、地に降りたったまま目をひらかないレゼルのことが心配でとり囲んでいたのだ。

 彼女が意識を取りもどしたのを見て、グレイスはようやく安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 皆を代表して、彼がレゼルに声をかける。


「レゼル、お帰り」


 広げられていた『光の翼』と『闇の翼』は折りたたまれていき、レゼルの心のなかへと納められた。

 彼女もまた、とてもうれしそうな笑顔で、グレイスに応えた。


「皆さん、ただいま」




 次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします!

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