表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
283/330

第282話 世界の命運を決める者たち

 ここは戦場の左翼(さよく)

 レゼルの登場により、静かに戦局を見守っていた()()()もついに動きだした。


地讃礼拝(ビデ・ヴェレフルング)』!!


「!? うわああああぁっ!!」


 大地が光りかがやくのと同時に、その直上にいた連合国軍の兵士たちが地面に叩きつけられた!

 兵士たちとその龍は地面にめりこみ、自身の肉体の重みでひしゃげていく。


 ――『地讃礼拝』。


 大地の自然素を操り、極端な重力場を形成する。


 シュバイツァーが本気をだせば、じつに広範囲に重力場を形成することができる。

 その効果範囲は連合国軍の一個師団を容易に潰すことができるほどであり、たった一度の龍の御技(みわざ)の発動で、連合国軍は壊滅的な打撃を受けていた。


 ……大地を思わせる深い土色の髪。

 自然素の濃度が高すぎて、透きとおる結晶体となっている『晶龍(しょうりゅう)』に乗る。


 帝国五帝将最強の男、シュバイツァーの出陣である!


 彼と晶龍は、強力な重力場のなかを平然と歩いていく。


「てめぇら、黙って見てりゃあずいぶんと調子に乗りやがって。

 ぶっ潰される覚悟はできてんだろぉな、あぁん!?」

「ううぅ……!」


 シュバイツァーの圧倒的な闘気に気圧(けお)され、兵士たちは皆、震えあがる。

 彼に真正面から攻められて、立ちむかえる一般龍兵などいるはずがない。

 シュバイツァーと晶龍はその一騎のみで、数十万騎の軍勢にも(まさ)る戦力なのである。


 一方的な殺戮が始まろうとしていた、そのとき。

 上空から空をつんざく雷鳴(らいめい)とともに、ひとりの龍騎士が現れた!


「シュバイツぁあ あ あ  あ  あ  あ  あ゛ ッ  ! ! ! 」


 少女はあらん限りの声で叫び、戦いの場へと舞いおりた。

 大切な人の(かたき)を、自分自身の手で討つために!


「きたな、クソガキが……!」


 シュバイツァーは、自身の前に現れた雷の龍騎士をにらみつけた。

 彼もまた、彼女こそが自身が討つべき最大の敵であるのだということを認識していたのだ。


 シュフェルとクラムは着地するとともに、雷の自然素をみなぎらせた。

 ありあまった雷電が、大地を伝って駆けぬけていく! 


「テメェはアタシが、絶対(ぜってぇ)にぶったぎる!!」


 シュバイツァーもまた、自身の周囲の砂と岩を巻きおこし、全力で彼女へと応えた!


「上等だ、格の違いを見せつけてやらぁ!!」




 戦場の左翼でシュバイツァーとシュフェルが激突していたころのこと。

 反対側の右翼(うよく)でも、動きだした者がひとり。


 白に近い銀の髪。

 禍々しく骨格をゆがませた『屍龍(しりゅう)』に乗る。


 五帝将がひとり、『冥門(めいもん)』ヴィレオラ!


 ヴィレオラは冥界のちからの弱体化により『死霊兵』の召喚を控えることを余儀(よぎ)なくされ、後方で待機していた。

 しかし今、戦いが正念場を迎えたことを悟り、彼女も前線へとでてきていたのだ。


亡者の(ディメント・)嘆き(ラートゥン)』!!


 彼女は『冥門』をひらき、数多(あまた)の呪霊を呼びだした!


「あっ……かはっ……!!」


 呪霊にとり憑かれた兵士は首を押さえ、苦しそうにもだえ死んだ。

 一般龍兵に呪霊の攻撃を防ぐ手立てはなく、なすすべなく呪い殺されていく!


 冥界のちからが弱まったとは言えど、依然としてヴィレオラが連合国軍にとって脅威(きょうい)であることに間違いはなかった。

 シュフェルがシュバイツァーのもとに行ってしまった今、連合国軍は右翼側から壊滅(かいめつ)においやられる可能性があった。

 ヴィレオラ、彼女ただひとりの手によって。


 しかし、そんなヴィレオラを食いとめようと、戦場を駆けぬけてくる者たちがいた!


 ある者は、分厚い敵陣の壁をものともせずに突きやぶり、大地を駆けぬけた。


 ある者は、次々と立ちふさがる標的を射抜き、自由に空をはばたいた。


 そしてまたある者は、無限とも思える敵の群れをかいくぐり、決戦の場へとたどり着いた。


 そうして彼らはヴィレオラの前に立ちはだかる。その身に宿すは『命の結晶』の赤き光。

 絶望的とも思える実力差を(いと)うことなく、彼らは戦場に己の命を(きら)めかせた!


「五帝将ヴィレオラよ、お相手は我らがいたす」

「このあいだはよくもやってくれたわね。

 シュフェル様を痛めつけた代償(だいしょう)は高くつくわ」

「たとえボクたちの命に代えても、あなたはここでとめてみせる……!」


 ヴィレオラに最後の戦いを挑むのは、アレス、サキナ、ティランの三人!

 そしてその挑戦をヴィレオラは、真正面から受けてたったのであった!


「フッ。

 わたしもずいぶんとナメられたものだな。

 いいだろう。貴様ら全員、冥界送りだ!!」




 レゼルとエウロは『流星群(フィルテリト)』を放って戦場に着地したのち、再び天空へと舞いあがっていた。


 今や、彼女たちの行く手をさえぎろうとする者などいなかった。

 彼女はただ真っすぐ、真っすぐに自身の戦うべき相手のもとへと向かっていった。


 そうして彼女は、自身を待つ者のもとへとたどり着く。

天翼(てんよく)の浮遊城』、その頂上で待つ者。


 その髪は闇夜を思わせる滅紫(けしむらさき)

 またがるは現生の龍のなかで最強の存在、『闇の龍王』オルタロヴォス。


 帝国皇帝および、闇の龍神デスアシュテルである!!


 宙を舞って現れたレゼルと、毅然(きぜん)として待ちかまえていたデスアシュテル。 

 ふたりは、互いに互いを見合わせた。

 今、神のちからをもつふたりの龍騎士が相見(あいま)えたのだ!


『あまねく光の導き手として……。

 あなたに引導(いんどう)を渡します、闇の龍神デスアシュテル!!』

『ぬかすがいい。

 貴様を光の龍神もろとも永遠の闇へと(ほうむ)りさってやる、カレドラル国女王レゼル!!』


 世界の命運を決める者たちの真の戦いが今、始まろうとしていた――。




 次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ