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第264話 龍を狩る技術


 前回の場面の続きです。


「オラオラオラぁっ!

 どいつもこいつも貧弱(ひんじゃく)だなぁっ!!

 龍ごと叩きつぶしちまうぞぉっ!!」

「「ハイッ……ホォッ!!」」


 ギルガドはその豪腕で棘つきの『大鐘(おおがね)』を振りまわした。

 ブラウジと五人衆を数人まとめて、龍ごと吹っとばしていく!


 いっぽう、ブラウジたちも一騎でギルガドの攻撃を受けぬように、常に陣形を崩さず、見事な立ちまわりを見せていた。

 しかしそれでもギルガドの攻撃の破壊力に押し負け、どんどん体力を削られていく!


 巨大な鉄塊(てっかい)である『大鐘』を、まるで木の棒でも振っているかのように軽々と振りまわす。

 ギルガドは戦闘技術という観点からはソリンゲンにはるかに劣るが、それを補って余りあるほどの膂力(りょりょく)をもっていたのである。


 さらに、ブラウジは五人衆とともに必死にギルガドの猛攻を耐えしのぎながら、彼の強さの秘密を分析していた。


「コヤツ……腕力ばかりの男ではないゾ……!」


 ギルガドは『龍を狩る者』として龍の特性を理解しており、龍の動きをとめる技術に長けていたのである。


 たとえば、『大鐘』。

 わざわざ内部を空洞にして鐘にしているのにも、理由がある。

 その鐘の響きには龍が苦手とする音色が混じっており、聞いた龍は動きが鈍る。


 また、『大鐘』の振りかた次第でその音色は大きく変わる。

 龍はさまざまな音調(おんちょう)の違いによって精神を振りまわされ、意識が遠のくのである。


 さらにギルガドは『龍辛香(りゅうしんこう)』という、龍の嗅覚を麻痺する香料まで身にまとっている。

 龍は五感を狂わされ、本来の実力を発揮することができない!

 (もちろん、ギルガド自身が乗っている龍はじゅうぶんに訓練されており、これらの『音』や『香り』に惑わされることはない)


「おいおい、どいつもこいつもうまそうだなぁ……? とっとと食わせろ!!」

「ガルっ……!!」


 ギルガドにひと(にら)みされると、ブラウジたちの龍はおびえ、足をとめてしまった。


 ――『龍睨み』。


『龍食い』の一族の特殊能力。

 その眼でにらまれると龍は本能的におびえ、萎縮(いしゅく)してしまう……!


 ギルガドは『大鐘』を大きく振りあげた!

 ……本来、『龍食い』の一族の戦闘法は野生の龍を狩ることを前提として発達したもの。

 しかし、世界的に龍に乗って戦う技術が確立されたことにより、彼らの戦法も変化していたのである!


竜骨潰し(ドリオッゾ・ゼルケ)』!!


「ハイホっ……!!」


 龍を生きたまま喰らうために、上に乗っている人間もろとも背骨を叩きわる上段からの一撃。

 頭上からの重たい一撃が、五人衆へとのしかかる!

 彼らは潰されまいと、必死に重みに耐えた。


「グワアアアウッ!!!」

「!!?」


 ギルガドは今度は突然、龍のように……いや、龍以上に凄まじい声で吠えた!

 そのあまりにも恐ろしげな威嚇(いかく)に、またも龍たちは動きをとめてしまう。


 龍たちが動きをとめているあいだに、ギルガドは再び『大鐘』を大きく振りかぶった。

 龍の身をまるで爆発してしまったかのように粉々に砕く、大振りの一撃!


龍爆砕撃(ドリエクスブレグリフ)』!!


「「ハィッ……!」」


 ブラウジと五人衆はちからを合わせてなんとかもちこたえるが、全員まとめて吹っとばされてしまった!  




 ……一方的、であった。


 ギルガドのあまりに破壊的な攻撃にひとり、またひとりと倒れていく。

 最終的にはブラウジまでもが倒れ、誰ひとりとして立ちあがることができなかった。


 ブラウジと五人衆が弱かったわけではない。

 アレスたちですら、この六人を一度に相手どれば勝負はどちらに転がるかわからぬほどであろう。

 しかし、ギルガドの圧倒的な武力を前に、ブラウジたちはなすすべなく敗北しようとしていたのである。


 倒れるブラウジを見おろしながら、ギルガドは豪快な高笑いをあげた。


「グワハハハ!

 雑魚どもが、ザマァねぇなぁ。

 だが、てめぇらが弱ぇのが悪いんだよ」

「……弱いのが悪い……じゃと……?」

「ああ、そうだよ」


 懸命に起きあがろうと、もがくブラウジ。

 意識朦朧(もうろう)としているブラウジをギルガドは(あざけ)り、彼へと語りかけた――。




 今回の場面は次回に続きます。


 次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします!

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