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第263話 龍食いの暴王


 今回からブラウジ+五人衆 対 ギルガド戦、開始です!


 帝国最強の部隊、『黒夢(くろゆめ)の騎士団』。

 さらにそのなかでも最上位の騎士『四夜』との戦い。


 サキナ、アレス、ティランの活躍により、『四夜(よつや)』を次々とうち破ることができていた。

 ……しかしその裏では、騎士団にとって最大の困難となる戦いが繰りひろげられていたのである!


「グワハハハ!

 おいおい、てめぇらで俺サマの相手が務まんのかよ?

 向こうのイキがいい奴らをぶつけたほうがいいんじゃねぇのかぁ?」


 野獣のような容貌に、巨人のように大きな体躯(たいく)

 ソリンゲンと並び、『黒夢の騎士団』最強の男、ギルガド。


 そのギルガドに相対するのはブラウジとその直属の部下、『重装龍兵五人衆』である。


 ……ギルガドにアレスたち部隊長をぶつけたいのはやまやま。

 しかし、ほかの『四夜』と単身で渡りあえるのも彼らしかいない。

 アレスたちが死闘を繰りひろげているあいだ、ギルガドをとめられるのはブラウジと重装龍兵五人衆しかいなかったのである。


「たしかに、オヌシの相手にワシらではもの足りぬかもしれぬのぅ。

 だが、あまり馬鹿にしたものでもないかもしれんゾ?」

「あぁ?

 てめぇらみたいな貧弱なザコが、俺サマの相手になるわけねぇだろう……がっ!!」


 ギルガドが、ブラウジたち目がけてその『大鐘(おおがね)』を振りおろす!


 一撃で、彼らが乗っている龍ごと叩き潰してしまえそうなほどの威力!

 だが……。


「「ハイホー!!」」

「!?」


 五人衆のうちのふたりが、『大鐘』を受けとめる!

 彼らとその龍は全身の筋肉をきしませながらも、その絶大な威力を誇る一撃を受けとめてみせていた。

 さらに、左右からひとりずつ飛びだしてきて、同時に斧のひと振りで攻撃する!


「「ハイホー!!」」

「ヌッ……」


 ギルガドは『大鐘』を振りまわし、左右からの同時攻撃を防いだ。

 しかしそこで最後のひとりが現れ、真上から斧を振るった!


「ハイホー!!!」

「クソがっ……!」


 ギルガドは『大鐘』で最後の一撃も防いでみせるが、危うく頭部に致命傷を食らうところであった!


「なるほどなぁ。

 ひとりひとりはトロいが、なかなかいやらしい連携をしてきやがる。

 ここまで生きのこってきたのはマグレじゃなさそうだな!」


 ギルガドからの素直な賛辞(さんじ)に、ブラウジは鼻を鳴らしてみせた。


「フン、当たり前じゃ。

 アレスたちが頭角を現すまでは、その者たちは一般龍兵の主力として活躍しつづけてきたのじゃからナ。

 そして……」


 ブラウジとその龍は、ギルガドへと向けて駆けだし……。


「その者たちに武術を教えたのは、このワシじゃあっ!!」


 強烈な斧の一撃をお見舞いした!


「ぬぅんっ!!」

「ッ!!」


 ギルガドはブラウジの一撃を受けとめたが、乗っている龍もろとも大きく後ずさりした!


 ……ブラウジとて、ただの老兵ではない。

 かつては現在のアレスと同等以上の体格・腕力をもち、一般龍兵のなかで筆頭(ひっとう)の騎士だったのである。

 長年にわたって騎士団を引っぱってきた彼の実力は、生半可なものではない!


「グワハハハ……。

 ジジイのくせになかなかやるようだな。

 だが、まだまだだ。

 そんなんじゃぜんぜんちからが足りねぇ……」




 ――『龍食いの暴王』ギルガド。


 ギルガドもまた、帝国の辺境に住む少数民族の一員にして、その王にあたる男であった。


 彼は『龍食い』の一族の末裔(まつえい)

 自然素の塊である龍を食って消化できる特異体質のもち主。

 普通の人間が龍を食えば、体内で龍が蓄えていた自然素が暴れまわり、速やかに死にいたるはずなのである。


『龍食い』の一族はその自然素の暴走を(ぎょ)し、莫大なちからを得ることができる。

 その特異な体質により、彼らは尋常ならざる身体能力をもっていたのだ。


 しかし、龍を尊重するこの世界において、『龍食い』の一族は常に迫害の対象であった。

 彼らは各地を転々としていたが、大陸のどの国にあっても数の暴力によって(しいた)げられ、辺境の地へと追いやられた。


 だが、そんな彼らを受けいれる国家がついに現れたのである。


 ――『ちからこそがすべて』。


 そう、神聖軍事帝国ヴァレングライヒ!

 武力を第一とする帝国において、ようやく彼らはその存在を認められたのであった――。




 今回の場面は次回に続きます。


 次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします。

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