第251話 立ちはだかる者たち
前回の場面の続きです。
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『黒夢の騎士団』のなかでも上位四人の騎士、『四夜』
圧倒的な武力によって、騎士団員たちは蹂躙されていく。
……だが、そんな『四夜』の前に立ちはだかる者たちがいた!
「オ~ホホホ!
逃げてもムダよ、ワタクシの『鞭』からは誰も逃げられないわっ!!」
激しく振りまわされるバルバネラの鞭。
人間を甲冑ごと切断するどころか、龍や宿営地に置かれた資材まで容易に斬りきざまれている。
「くそっ!
とてもじゃないが近づけそうにない!」
「なんで鞭であんなにスパスパ切れるんだ!?」
やむを得ずバルバネラから距離を取ろうとする騎士団員たち。
と、そのうちのひとりの龍が足元の資材につまずき、転げてしまった!
「!? うわっ!」
その騎士団員は龍もろとも地面にからだを打ちつけてしまった!
防御することすらままならないまま、彼のもとへと無情なる鞭の一撃が振りおろされた。
しかし――。
「「!?」」
彼が打ちすえられる直前、鞭の先端が飛んできた弓矢に弾かれた!
バルバネラは振りまわしていた鞭をもう片方の手に納め、矢が飛んできた方向へと視線を向ける。
彼女の視線の先には、矢をつがえて引きしぼるサキナの姿があった!
「なんてはしたない格好。
目に毒だから速やかに私の前から失せなさい」
矢を向けて挑発するサキナに、バルバネラは額に青筋を立てて応えた。
「ハァ? 誰に物を言ってるのかしら。
その澄ました顔を苦渋でゆがませてやるわ!!」
圧倒的な武芸で騎士団員たちを次々と斬り伏せていくソリンゲン。
あまりに洗練されすぎているため、対人戦ではなく、彼はただ武芸の型を披露しているだけなのではないかと見る者が誤認してしまうほど。
もちろん、ソリンゲン自身も相手がいる戦いであることはよくわかっている。
彼は騎士団員たちを屠りながら、そのひとりひとりを観察し、評価していたのである。
「我ら帝国民こそやはり最強。
他民族に太刀打ちできる者などおらぬ」
……だが、そんな彼の『槍斧』を受けとめる者がいた!
激しい激突音とともに、二本の槍が交差する。
「じつに見事な技の数々。
ぜひ手合わせを願いたい」
「ほう……? 少しは骨がありそうだな」
交差する槍を挟んで、にらみあうふたり。
絶対なる強者に挑む男、その名はアレス!
亡霊のように戦場を徘徊し、騎士団員の背後をとっては命を奪っていくケツァルツァ。
今も新たな標的の背後へとまわりこむ。
「……はっ!?」
騎士団員が首筋にナイフの刃をあてられ、ようやく背後の存在に気づく。
背後への警戒は怠っていなかったが、ちょっとした意識の隙間を狙われてしまうのだ。
「ひょほほ。隙だらけですぞぉ」
ケツァルツァが今にも彼の首をかき切ろうとした、そのとき。
「!?」
さらにその背後から、ナイフで攻撃を仕掛ける者がいた!
とっさにケツァルツァは軟体動物のように上体をぐにゃりとねじり、自身のナイフでその攻撃を受けながした。
ティランが龍の背から飛びたち、ケツァルツァへと斬りかかっていたのだ!
「さっきから戦場でコソコソ動きまわって……。
これ以上、ボクの仲間は殺させない!」
「ひょほほほ。拙僧の動きを見抜くとは……。
さては、似た者どうしですかな?」
ティランとケツァルツァは互いの龍の背中へと戻り、間合いを取りはじめた。
「グワハハハハ!
どいつもこいつも貧弱な奴らばかりだなぁ!
そんなんじゃこの俺サマが大切な龍をぜんぶ食っちまうぞ!!」
『大鐘』で騎士団員たちを龍ごと叩きつぶし、吹っとぱしながら進むながら進むギルガド。
その一撃一撃はまるで爆発でも起こしたかのような重みと破壊力。
自身の一撃で吹きとんだ龍の肉片をつかみ取っては、口元へと運んでいる。
圧倒的なちからの違いを前にして、誰も彼の進行をとめることができない。
……だが、そんな彼を食いとめようとする者たちがいた!
「我ら『龍御加護の民』は龍を我が身のごとく愛する民族でのぅ。
食事ならよそでやってくれぬカナ?」
「「ハイホー!!」」
篝火の明かりに照らされて、輝く白金の鎧。
ブラウジと重装龍兵五人衆!!
ギルガドは龍の手首をかじると肉片を吐き捨て、彼らを見おろした。
「フン、雑魚どもがぁ。
てめえらの龍も、まとめて餌食にしてやるぜ!!」
こうして、翼竜騎士団と『四夜』の激闘が始まったのであった――。
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