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第250話 暴虐の悪夢

黒夢(くろゆめ)の騎士団』――。


 世界最強にして、世界最大規模を誇る帝国軍。

 当然、保有する龍と一般龍兵の数も他国とは桁違いである。


 その数十万を越える一般龍兵たちのなかから選出された、上位百名からなる精鋭部隊。


 剣、槍、斧、拳、その他世界に少数名しか使用者がいない稀少(きしょう)武器まで……。

 構成員は各武芸の頂点を極めた者たちである。


 漆黒の鎧を身にまとう最強の騎士たち。

 暴虐の限りを尽くし、少数部隊でありながら大規模軍を制圧するさまはまさしく、戦場で見る悪夢のよう。


 また、帝国は大小あわせて百を越える国々が統一されてできた国家であるが、『黒夢の騎士団』の構成員はその出自(しゅつじ)が皆さまざまであることが知られている。


 ――『ちからこそがすべて』。


 軍事至上主義を(うた)う帝国では、実力さえあれば重用(ちょうよう)するのに民族や宗教は問わない。

 その一点において、帝国ヴァレングライヒは居住民に対してきわめて寛容な国家であるとも言えたのである。




 翼竜騎士団の宿営地を襲撃した『黒夢の騎士団』。

 漆黒の鎧を身にまとう騎士たちに、体色の黒い龍たち。


 宿営地は戦場へと変わり、駆けつけた騎士団員たちが迎えうつ!

 だが……。


「ぐわあああぁっ!!」

「ダメだ……!

 こいつら全員、強すぎる……!!」

「一対一の状況をつくらせるな!

 常に複数で囲いこめ!

 意地でも生きのこれ!!」


 圧倒的な戦闘力の差に、次々と(ほふ)られていく騎士団員たち。


 多少の運の差はあれど、シャティユモンでの戦いを生きぬいた者たちは皆、騎士団のなかでも上位の騎士たちであると言ってよいだろう。

 しかし、『黒夢の騎士団』の構成員は彼らの実力をはるかに上まわる。

 さらに……!


「おいおい、なんだあいつら。

 ほかの連中とは段違いの奴らがいるぞ……!!」


 戦っていた騎士団員のひとりが恐れおののき、つぶやいた。



 

 ――『四夜(よつや)』。

 帝国最強の精鋭部隊のなかでも、さらに上位四名の騎士は『四夜』と称され、恐れられていた。




 広範囲に『(むち)』を振りまわし、近づく騎士団員の首を次々とはね飛ばしている女騎士がひとり。


 頭には(きら)めくティアラ。

 漆黒の軽装鎧を身に付けているが露出度が高く、ほとんど裸である。


 彼女はその美しくも白い肌に返り血を浴びせながら、恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべていた。

 血を浴びて笑い狂う、残虐なる女騎士。


「オ~ホホホ!

 下民ども、血飛沫(ちしぶき)をあげてワタクシにひざまずきなさいなっ!」


 ――『血染めの王女』、バルバネラ!




 長い柄の槍の先端に、斧の刃が取りつけられた『槍斧(ハルバード)』。


 先端に重量があるぶん威力があり、実用性の高い武器。

 しかしその構造上、先端に遠心力が強く働き、操作性は格段に落ちる。


 その『槍斧』をまるで、『棒術』のように華麗に扱う者がいた。

 近づく騎士団員を一瞬で葬りさるさまは、ただの殺戮(さつりく)技術の枠組みを越え、芸術的ですらあった。

 ……寡黙(かもく)にして実直、黒き長髪の武人。


「我が祖国に仇なす者は、何人(なんびと)たりとも許さぬ」


 ――『武芸の頂点』、ソリンゲン!



 

 男は龍に乗って戦場を駆けまわっていた。

 その男は騎士団員のそばに近寄ると、突如として乗っていた龍の上から姿を消した。

 そして夜闇にまぎれて騎士団員の背後に忍びよると――。


「ぐあぁっ!!」


 隠しもっていた刃で騎士団員の首をかき切り、一撃で命を奪いさっていく。


 坊主頭に、干物のような土気色の顔。

 だぶついた黒き『僧衣(そうい)』をまとい、顔をにたつかせながら暗躍(あんやく)する男。


「ひょほほ。

 いまわの際のうめき声は男女を問わず、そそるそそる♪」


 ――『黒衣の破戒僧(はがいそう)』、ケツァルツァ!




 巨大な棘つきの鉄塊(てっかい)を軽々と振りまわし、騎士団員を龍ごと叩きつぶしていく大男がいた。


 それは星球鎚矛(モーニングスター)……いや、なかが空洞となった『大鐘(おおがね)』だ。

 男が振りまわすたび、ガラガラと不思議な音色を奏でている。


『黒夢の騎士団』のなかでも、並みはずれて大きな体躯(たいく)を誇る男。

 獅子(しし)のような顔貌で、全身に(いばら)のような刺青が入れてある。


「つっ、強すぎる……!」

「なんだ、あの化けものは……!!」


 騎士団員たちが(おび)え、すくみあがるなか、男はおもむろに地面に転がっていた龍の首を拾いあげた。


「ん……?」

「なにをしてるんだ、あいつは……!?」


 男は手にもった龍の生首をうっとりと見つめると……。

 ムシャムシャと食べはじめた!


「げええぇっ!」

「なんなんだこの男はぁっ!!」


 男は龍の目玉をぷっと吐きだし、残った角を投げ捨てた。


「グワハハハハ!!

 ゴチソウがそのへん走りまわってやがるぜ。

 たらふく食いまくってやらぁ!!」


 ――『龍食いの暴王』、ギルガド!




 シュバイツァーは『四夜』をはじめ、自身がひき連れてきた『黒夢の騎士団』の戦いを見守っていた。

 彼らの残虐な戦いぶりは目に余るものがあったが、翼竜騎士団の強者たちを相手にして、まったく申し分ない働きであった。


「まったく、どいつもこいつも気違いみてぇなイロモノばかりだが……。

 実力さえありゃ文句は言わねぇ。

 きっちり働けよ、『黒夢の騎士団』!」




 圧倒的な武力によって、蹂躙(じゅうりん)されていく騎士団員たち。

 とくに『四夜』との実力差が如何(いかん)とも埋めがたく、勢いをとめることができない!


「駄目だ……!

 せめてあの四人だけでもなんとかならないと……!」


 途方に暮れ、騎士団員たちの龍を()る手がとまる。

 このまま翼龍騎士団は、なすすべなく壊滅するかと思われた。


 ……だが、そんな『四夜』の前に立ちはだかる者たちがいた!




 次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします!

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