第247話 光の龍神との対面
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いくつもの扉をくぐったその先に、俺たちが探し求めていたものがいた。
巨大な空間に、天窓からはいくつかの光の筋が射しこみ、降りそそがれている。
そして中央の壇上に、俺たちは彼のものの姿を見た。
「これは……!」
「主よ……!」
レゼルはエウロから降り、涙を流してひざまずく。
そこには、巨大な龍が横たわっていた。
――『光の龍神』ゼトレルミエル。
大きい。
大きさは、通常の龍のゆうに十倍以上はありそうだ。
からだからはあらゆる色合いの光を放っており、ゆらめいて見える。
原初の神にして、この世界の創成の神。
その龍の姿は、俺まで思わずひざまずいて祈りを捧げたくなるほどの威厳と神秘性を備えていた。
エウロとヒュードも、自分たちを含めたすべてのものの父であることを感覚的に理解しているのか、興奮して落ち着きがない。
翼を震わせて、そわそわしている。
だが――。
「ほんとうに、生きているのか……?」
龍神のからだから放たれる光は今にも消えいりそうなほどに弱々しい。
その身は痩せほそり、からだじゅうに深い皴が刻みこまれている。
龍神は俺たちが近づいても身動きひとつせず、亡骸と見紛うほどに老いさらばえていたのだ。
……俺たちは、闇の龍神である帝国皇帝と戦う術を教えてもらうために、ここまでやってきた。
破滅の神と戦うことは、創世の神である光の龍神にとっても利となるはずである。
あわよくば、神のちからを分け与えてもらえるのではないかとさえ思っていたのだ。
しかし今、俺たちの目の前にいる光の龍神の姿はちからを授けるどころか、今にもその命の灯火が燃えつきそうであるように見えたのであった。
俺とレゼルがどうすればよいのかわからずに途方に暮れていると、どこからか声が聞こえてきた。
これは……頭のなかに直接話しかけられている?
ゼトレルミエルは俺たちのほうを振りむくどころか、あいかわらず身動きひとつしていない。
聞く者に安らぎを与える声。
まるで自身が原始の生命へと還り、すべてが統合されて調和していくかのような感覚。
しかしその声は同時に、万物の父であるかのような厳格さもあわせもっていた。
『我が子、人の子たちよ。
よくぞここまできた。
お前たちが何者で、なにが目的かはわかっている。
デスアシュテルのことだな』
「……!」
さすがは創世の神。
俺たちの考えなどお見通しというわけだ。
衰えているように見えても、その神性は健在のようである。
レゼルは一歩前にでて、ゼトレルミエルへと問いかけた。
「主よ。お教えください。
どうしてあなたはこの場所でお隠れなっているのですか?
そして闇の龍神は、いったいなにが目的なのですか?」
レゼルからの問いかけに対し、ゼトレルミエルは再び、頭のなかに響く声で俺たちに働きかけてきた。
『デスアシュテルもまた我が子のひとりにして、我が分身に等しき存在。
彼のものについて知るには、この世の成り立ちから語らなければならぬ』
ゼトレルミエルがそう言うと、不思議と俺たちの頭のなかにも数千年前の光景が視覚として浮かびあがってきた。
この世界の、成り立ち――。
今回の場面は次回に続きます。
次回投稿は明日の19時に予約投稿の予定です。余裕があれば少し早めに手動投稿します。何とぞよろしくお願いいたします。




