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第146話 重ねあう鼓動

 レゼルとエウロ、シュフェルとクラムはそれぞれに共鳴音を鳴らし、一気に最大深度まで共鳴を深めた!

 次が最後の激突になることを感じとっていたふたりは、残されたちからのすべてをぶつけるべく、自然素を練りあげていった。


 対するオラウゼクスも、『和奏』をもってして、ふたりを迎えうつためのちからを高めていく。

 挑戦を受けてたつ立場であるはずの彼だが、もはや手加減するつもりも、余力を残すつもりもなかった。

 史上最強の挑戦者である彼女たちに、最大限の敬意を表していたのだ。


 最上層が吹きとび、吹きさらしとなった楼宮の王の間で。

 三点のちからの高まりが激突するべく、今一点に集約していく!


「行くよっ! シュフェル!!」

「うん、姉サマっ!!」


「すべてを投げうってかかってこい、小娘ども!!」


 並びたっていたレゼルとシュフェルたちが、ともに地を蹴り動きだした。

 ふたりは瞬時に目をあわせ、お互いの意思を確認する。

 言葉はなくとも、ともに寄りそい、戦いぬいてきた時間が、彼女たちの意思を瞬時に通いあわせていた。


 ――戦う前から、構想はあった。

 だが、どうがんばってもオラウゼクスとの戦いまでには実戦で使える段階には到達しないだろうというのも、ふたりの共通見解。


 しかし、オラウゼクスとの限界を超えた戦いが、彼女たちに驚異的なほどの経験値を蓄積(ちくせき)させていた。

 常に死と隣りあわせの状況がレゼルたちに学ぶ必然性を与え、そして目の前で次々と見事な技を繰りひろげるオラウゼクスは最強の敵にして最高の師となり、彼女たちに具体的な実現像(イメージ)を与えた。

 一歩間違えれば死が待ちうける状況下で、彼女たちは『和奏(わそう)』の精度を急速に磨きあげていったのだ。


 ……成功するかどうかはわからない。

 だが、人智を超えた強さを誇るこの男に勝つには、()()()に賭けるしかない!


 レゼルとシュフェルは、()()()()()()()()()()()()ため、互いに龍の鼓動を重ねあわせた。

 それは血のつながらないふたりが、ほんとうの姉妹以上に絆を深め、あたかもひとりの人間であったかのように一体となった瞬間でもあった。


 ――()()()()()!!


雷嵐(エクトドゥル・ロラージュ)』!!



 レゼルとシュフェルは『和奏』をもってして練りあげた猛風と、雷電と、闘気を混然一体とさせ、オラウゼクスへと突撃した。

 その姿はまるで風雷でかたちをなし、人間を食らおうと襲いかかる巨大な一匹の龍……いや、龍神の姿そのものであった。

 紛れもなく、今のレゼルたちが繰りだせる最強にして最後の技。


 ――ここにきて、これほどの技を実現するとは。

 だがそれでこそ、真の戦いの相手と呼ぶにふさわしい!


 万物を飲みこみながら自身に迫るレゼルたちを、オラウゼクスは真正面から迎えうった。

 ……オラウゼクスは三度、レゼルたちの前で自身の最強の技を披露することとなる。


 だが、彼の全身全霊を込めた此度(こたび)の技は今までの破壊力の比ではない。

 その自然現象の凄まじさはまさしく、腐敗した世界を終焉させるべく神がくだした裁きのようであった!


裁きの雷槌(トレ・エクタゼオン)』!!


 そしてついに、彼らはぶつかりあった。

 四本の刀身が混じりあった刹那(せつな)、月の楼宮を中心としてヴュスターデ全土に激震が走る!

 混沌としたちからの奔流が、まばゆいほどの光となってあたりを包みこんだ。




※『裁きの雷槌(さばき の らいつい)』……神がくだした裁きのごとき一撃を放つ技です。

 その技の本質は、オラウゼクスの最大出力である超極電圧を、一瞬で解きはなつことにあります。

 その電圧は、あまりの強さのために周囲の空間にも電離した空気(プラズマ)を発生させてしまうほど。

 数多(あまた)の光の軌跡が虹色に輝き、飛散していく様は、あたかも極楽鳥が羽を広げたかのような美しさであると言われています。


 次回投稿は2023/6/28の19時に予約投稿の予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

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