表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/330

第130話 戦いへの招待


◇グレイスの視点です

◆神の視点です


「コトハリっ!!」

「!」


 ルナクスは乗っている龍を飛ばし、コトハリめがけて猛然と立ちむかっていった。


 普段の暗く、自信なさげな彼とは違う。

 その姿は果敢に強大な敵へと立ちむかう、戦士の姿そのものであった。


「今日こそ僕は、お前を倒す!!」


 ルナクスは『満月の盾』から三日月状の刃を撃ちだした。

 三日月の刃は高速で回転しながら、コトハリの首を狙って夜の空を飛んでいく!


「ちっ、目障りな雑魚が。

 また懲りもせずにやられにきたか」


 コトハリの周囲には、ルナクスの『満月の盾』のように、鏡の盾のような物体が浮遊していた。

『鏡』は三日月の刃を弾いて、斜め後方へと受けながした。


 そしてさらに、どこからともなく『光球』が現れ、『鏡』と一緒になってコトハリの周囲で宙を舞いはじめた。


残響(ざんきょう)光珠(こうじゅ)』――『爆裂球(インフィジャ)』!!


 コトハリが物を投げるように腕を振りおろすと、『光球』から分け出でるようにして、新たな光球が撃ちはなたれた。

 燃えるような、赤みを帯びた光球。


「!!」


 撃ちはなたれた赤い光球はルナクスに向かって真っすぐに飛んでいき、彼に接近したところで大爆発を起こした。

 激しく爆ぜる光と音とともに、爆炎が巻きおこる!


 ……通常であれば、その爆発に巻きこまれてかたちを保っていられる者などいない。

 しかし、ルナクスは過去のコトハリとの戦いの経験から、とっさに身を守る対策を取っていた。


『満月の盾』で爆風の衝撃を和らげながら、『爆裂球』と呼ばれた光球からまっしぐらに逃げて距離を取っていたのだ。


「ゲホゲホゲホっ!

 ……くそっ、コトハリめ……!」


 爆発の煙を吸いこんで激しく咳こみながらも、命からがら回避に成功したルナクス。

 巻きあがった火の粉に赤く照らされながら、コトハリと彼は(にら)みあっていた。


「……ふん。

 少しは学習したようだな、雑魚王子。

 だが、『爆裂球(インフィジャ)』を回避するのもやっとのようでは、私には勝てんぞ?」

「ルナクスーっ!」

「!」


 空中でコトハリとルナクスが睨みあっていたところ、ガレル、アレス、ティラン、サキナの部隊長四人が龍に乗って駆けつけてきた。


「君たちは……!」

「ルナクス、大丈夫か!?」

「我らも助太刀いたす」

「一緒に戦おー!」

「あの男は、私が射ぬく……!」


 コトハリはエミントスに襲撃をかけていた私兵たちから部隊長の情報を得ており、龍を操る身のこなしを見ただけで、彼らが騎士団の最精鋭であることを見抜いていた。

 しかしコトハリは、不敵な笑みを浮かべて彼らを見おろした。


「くははは……。

 雑魚が何人集まろうと無駄だ。

 だが、貴様らのために素晴らしき死に場所へと案内してやろう。

 付いてこい!」


 そう言って、コトハリは乗っていた獅子へと命じ、『太陽の楼宮』のほうへと飛びさっていく。


「! 待て、コトハリ!!」


 ――こうして、ルナクスと部隊長たちの追跡が始まったのであった。



 エミントス側の上空、俺とネイジュの近くでは、レゼルとエウロ、シュフェルとクラムたちも待機していた。

 部隊長たちはうまくルナクスと合流し、コトハリの追跡に向かったようだ。


「シュフェル、私たちも『太陽の楼宮』のほうへと行ってみましょう」

「うんっ、姉サマ!」


 レゼルがエウロやシュフェルに指示を出し、シャレイドラの楼宮に向かって飛びたとうとしたときだった。


 彼女の視界の端で、閃光がまたたく。


遠雷(フェルネリッツ)


 レゼルに向かって強烈な電撃の矢が飛ばされた。

 彼女はとっさに自身の周囲に風を発生させ、身を護る!


「くっ……!」

「姉サマ!!」


 直撃はまぬがれたものの、飛散した雷の粒子が彼女のからだへと通電し、身を痺れさせる。


 レゼルとシュフェルが電撃の矢が飛んできた方向を振りかえると、はるか遠方、オラウゼクスと雷龍が『月の楼宮』の上空に浮遊していた。

 オラウゼクスは神剣『ヴァリクラッド』の刃先で、自身の下方にたたずむ楼宮を指ししめしていた。


「オラウゼクス……!」


 彼はレゼルとシュフェルを呼んでいた。

 来なければ、エミントスの楼宮をなかにいる人びともろとも叩きつぶすつもりであることを示して。



 俺は、レゼルとシュフェルがオラウゼクスのもとへと向かったのを認めた。


「レゼルたちが戦うぞ!

 楼宮のなかにいる人々を全員退避させるんだ!!

 騎士団員もなるべく楼宮から距離をとれ!!」


 偵察兵の部隊員たちを向かわせ、楼宮の内部で待機している人々へと伝令を伝えさせた。


 ――レゼルたちはまだ睨みあっているだけなのに、すでに周囲では大量の自然素が渦まき、うねり、大気が震えて泣いている。

 このヴュスターデにおける最高戦力どうしのぶつかり合い。

 その戦いの壮絶さが、いやでも予感されるものであった。


 オラウゼクスに誘われて『月の楼宮』の屋上へと向かうふたりの背中を見送りながら、俺はレゼルたちの勝利を願うことしかできなかった。


「レゼル、シュフェル。

 がんばってくれよ……!」




 次回投稿は2023/4/25の19時に予約投稿の予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ