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家に到着し、セナは玄関前に立った。灯りは点いていない。莉奈の気配もしない。試しに軽くドアノブを押してみるが、鍵が掛けられていて開かなかった。
もどかしさを抑えながら、セナはポケットからある鍵を取りだした。錠に入れて回すと、上手い具合に鍵が開いた。中へ入り、彼方此方を駆け回る。
「莉奈、莉奈!」
莉奈の部屋、洗面台、トイレ、居間・・・・・・。どこを探しても莉奈の姿はなかった。途方に暮れて頭を掻いていると、ふと妙案が思いついた。
そうだ、探していない部屋はもう一つある。
セナはゆったりとした足取りで、莉奈の部屋を通り過ぎ、隣部屋のドアの前で足を止めた。そこは、居候の部屋としてセナに割り当てられていた部屋だった。
呼吸を整え、静かにドアを開く。徐々に部屋の内部が見えてくる。洋式箪笥、勉強机、壁に貼られたポスター、カレンダー、時計。そして、ベッド。
「おかえり、セナ」
ドアの死角となっていたシングルベッドの上に、莉奈が腰掛けて座っていた。乾かした髪をポニーテールにまとめ、淡いブラウスに無地のベージュ色したスカート。セナは思わず息を飲んだ。つい先ほど神社で見た姿とは一変していたからだ。
「ほら、雨で濡れてるでしょ」
予め用意していたのか、莉奈が手元に持っていたバスタオルでセナの頭を拭いてやった。
「・・・・・・ありがとう」
「こうやってるとさ、まるで本当の姉妹みたいだね」
「え」
セナが驚愕の視線を向けた。莉奈は笑いもせず、泣きもせず、その中間のような表情をしながら、言葉を続けた。
「宇宙船のない宇宙人は、どうやって地球に来たって証明できる?」
「何を言いたいの。私はちゃんと宇宙船で――――」
「宇宙船なんて、どこにもないよ」
莉奈ははっきりとした口調で言い切った。「あんたは、宇宙人でもなんでもない」
セナの肩を掴んで、莉奈は目と目を合わせた。
「歴とした地球人。名前は米野瀬奈。私の、妹」




