164話「ボス討伐の報酬と海竜の気配」
メガネグマサイボーグの攻撃を見る前に、スライムたちは後方に待機させておいた。粘液を練って貰っておく。マシン系の倒し方は、岩石地帯の闘技場で知っている。
「ビームに気を付けろ。口が開いたら放ってくるかもしれない」
そう言ったところでスライムたちにわかるはずもない。
メガネグマサイボーグが口を開いた。身構えていつでも避けられる準備をしていたら、口から氷の息を吐いてきた。
ヒョォ!
「おうっ! そういうのもあるのか。スライムたちは近づけられないかな」
氷の息なら、それほど怖くはない。
壁を走り、距離を詰めた。氷の息を吐くメガネグマサイボーグは壁に張り付いているミミックまで凍らせていたが、走るスピードにはついて来れていない。
ズガッ!
盛り上がった機械の肩に俺のバールが突き刺さる。
ガッコンッ!
メガネグマサイボーグから、てこの原理で肩を外した。
バチバチバチ!!
周囲に電気が走った。
「粘液を頼む!」
スライムの群れが一斉に練った粘液を吐き出した。
ビチョビチョビチョ!!
メガネグマサイボーグが床に張り付き、自分の電気で感電。魔力がなくなるまで身体中に電気が走り、そのままプスプスと煙を上げ始めた。
凍っているミミックを壁から引きはがし、粘液に付けて感電しなくなったことを確認。メガネグマサイボーグを床に倒して、胸を開いて魔石を外した。すでに中身は機械の身体だ。
「食べられるものは食べていいぞー」
スライムたちに解体した魔物を食べさせてスキルを強化しよう。スライムは身体能力を上げる必要がないところがいいところだ。
「変なスキルを取った方がいいぞ。粘液系は取ると戦闘で便利かもしれない」
氷魔法と雷魔法を使えるようになったスライムとカチカチに固くなるスライムができた。あとは普通に移動速度が異常に速い油スライムばかり。素早く移動できることが嬉しかったのかな。
「隙間に入り込んで、隠し部屋とか隠し通路があったら教えてくれ」
スライムたちに指示を出しながら、スライムが食べられなかった素材をサイボーグから引きはがす。鉄板は溶かせば使えるだろう。あとはミミックからベトベトの魔石を回収した。
周りを見渡すとスライムたちが集まっていた。何かを見つけたらしい。
メキメキメキ……。
スライムの群れが壁を破壊して隠し通路の扉をこじ開けていた。どこかにスイッチがあるはずだが、力技で突破している。
中にはミミックがいるが、すでに動かなくなってかなりの時間が経つようで蜘蛛の巣が張っている。ミミックの舌を引きずり出してみると、中から指輪やネックレス、手袋などが出てきた。
「アクセサリーショップと防具屋の間にあったからな。宝物はこういうのが多いのか?」
他にもミミックの死体があったが、いずれも大量の指輪や腕輪が入っていた。呪いの効果もあるようだが、別に欲しい呪いもないので、革袋に放り込んでおく。後で鑑定してもらおう。
「よーし、じゃあ、皆外に出るかぁ」
再びスライムを集めてみると、数が減っていた。どうやら罠を踏んで燃やされてしまったスライムもいるらしい。他にはミミックの歯を装備していたり、呪いを飲み込んだのか真っ黒くなっていたり、発光キノコを食べて身体を光らせたり、とだんだん個性が生まれ始めていた。
外に出てみると、妙に騒がしい気がした。
「お疲れ様です」
「おっ、出てきた。ダンジョンどうだった?」
泥人形の店員が、スライムを引き連れている俺に驚いている。
「攻略してきましたよ。ほら」
革袋の中身を見せると、「おおっ!」と驚き、店主のミミックを呼んでいた。
「これ、古いうちの商品だ」
「わっ、このネックレス、爺さんが残した記録に載っていたやつかもしれん」
アクセサリーショップのミミックも出てきて、ネックレスを見つめていた。
「呪いがかかっているかもしれないから気を付けてくださいね。鑑定してもらえますか? 欲しいものがあれば交渉には応じますよ」
「いいのか!?」
「ええ。効果とか一般価格がわかると助かりますので、鑑定を頼みます」
俺は革袋をひっくり返して、アクセサリーショップのテーブルに並べた。
ドゴンッ。
近場から、何かを殴るような音が聞こえてきた。
「騒がしいようですけど、何かありました?」
「ああ、忘れてた! 海竜が上陸してきたんだ。今はサテュロス族がたった一人で時間を稼いでくれているが、応援に行ってあげてくれ」
ロサリオだな。
「わかりました! 東の方ですかね?」
「そう! 音を辿っていけばすぐに見えるはずだ」
ミミックの店主に言われ、スライムを引き連れて音の方へと向かってみた。
建物を曲がると、ロサリオが立ち上がろうとする海竜の足を払っていた。まだ、一体しか海竜も出てないからかのん気に戦っているらしい。
「お疲れー、どうだ?」
「おお、来たか。どうにか海竜には仲間を呼んでもらおうと思ってるんだけど……。スライムを使役したのか?」
「うん。どうにか召喚できれば、物流も変わるからさ」
「そうだな。戦うか?」
「頼む」
ギィイアアアア!
ロサリオが海竜の逆鱗を持って引っ張り上げた。
「それぞれ自分が思うように戦ってみてくれ。海竜からの攻撃が出たら、ちゃんと避けるようにね」
スライムたちは縦横無尽に街中を駆け回り、海竜を翻弄している。
「普通のスライムより速くないか?」
「油を飲ませたら、全員速くなった」
「スリップするように移動するスライムなんて見たことない。いい移動方法だ」
「ロサリオのダンジョンはどうだった?」
「ゴーレムばっかりで防御結界を張る指輪が落ちてたくらい。一応、ボスの攻撃を見切ろうとは思ったんだけど、途中で面倒くさくなって槍で穴を開けちまったよ。コタローのダンジョンは?」
「ボスがメガネグマサイボーグだった。マシン族だからな。スライムでやりたい放題だった。あとバールな」
「ふーん。いい物は落ちてたか?」
「ああ、スライムたちが隠し部屋のドアをぶち壊してくれるからさ。たくさんアクセサリーとか見つけたよ。今鑑定してもらっている」
「いいなぁ。後でスライムたちを貸してくれよ。他のダンジョンにも入りたいからさ」
「いいよ」
海竜が出たというのにお茶屋のベンチに座っているので、茶飲み話でもしているかのようだ。
「あ、二体目、来たぞ」
岸辺から二体目の海竜が上陸してきた。
「すぐに倒すなよ。ツアー参加者が戦うまで待たないとな」
「ああ、そうか」
この時はのん気に構えていたが、周辺の海には海竜の群れが波をかき分けてやってきていた。




