赤の恍惚
親戚が伝統工芸家だと知ったのは16体もの赤いアレを贈られてきてからである。
16て。
連射でもするのか。
やっぱり16送れないから逮捕されたとデマがとぶんか。
蝸牛考が適用できて令和になって今更デマの震源地が特定されちゃったりするのか。
そもそも読者にはこんな話しても通じるのか。
私は悩んだ。
あ、わたしはこれでも小説書きだ。多分。
というか賞取っている。
小説書きを堂々と名乗っていい。
作家を名乗るとくさす輩はいるかもだが。
で。めでたいものはたくさん贈られる。
十六匹だ。
モーやだ。まじいらん。
まあ、アマビエ様だって元は瓦版一枚あとは水木しげる先生だし、口裂け女拡散の経緯は教育出版の『おもしろ学校の日々』で詳細が明かされている。
これら怪異が拡散し、僻地の方がオリジナルが保存される研究の詳細は朝日新聞の特集記事に詳しい。アマビエも口裂け女も朝日新聞デジタルで読めるぞ。
そんなこたぁどーでも良い。
カナメはこの不要極まりない伝統工芸品である。
こやつらに罪はない。
むしろモー絶滅した天然痘を撲殺するありがたいものであり、最近は新型コロナ禍で再注目された。
いや、天然痘撲滅したならやっぱりモーいらないのでは。
私は彼らをじっとみる。
今時3Dプリンタに頼らず、手間暇かかった職人芸により首がいい具合に動く。
赤の色合いといいツヤといいまさに美形。
私の小説のヒーローに……いらんわ。
え。令嬢に駆け寄る張子?! どういう絵面ー?!
誰か解説してよ私が作者だけど!
サイズも複数ある。
それぞれがいい感じで首を振ってる。
だからいらんのだ。
意味なく話の腰を折ったりいきなりネットの他人に腰を振ってセクハラしないぶん現実の男よりはマシだが。
それはそうと今、深夜2時過ぎた。
ポケ⚪︎ンスリープの約束の時間なのでモー寝なければなるまい。
人間との約束はすっ飛ばしても〆切以外なんとかなるが⚪︎ケモンは許してくれない。
そもそも私のポケ⚪︎ンたちはいつも眠そうだ。マジモーごめんよ。
私はアメリカ軍直伝の即寝る技術で2分で寝た。
すやすや。
「目が覚めたか」
「心配したぞ」
青い草原、煌めく小川。白い雲はたなびく。
霞始靆と書いて『かすみはじめてたなびく』が2月23日ごろだが気温も湿度も心地よいくらいで季節を感じない。
私の目の前には親戚が手塩をかけて作った赤いヤツらがいる。
首が動いてキュートだが足も動く。
うん。サイズは30センチくらいとどでかい2メートル超え。
でも張子だ。
カッコつけても風で飛んでる。
かわいい。
足元の白い花を踏まないよう配慮する優しさがある。
踏んでも張子だ。花はそれしきでは枯れない。
私に対してイケメンムーブをする赤い奴らは私の親戚作成の赤い縁起物にそっくりだ。
16体もいる。いらん。
それぞれが私の気を引こうとする。
俺様タイプ、依存症タイプ、お子様にお兄様。オネェに優等生に劣等生に不良。戦士に魔法使いに盗賊に僧侶に遊び人に勇者に魔王に魔王軍幹部に四天王に……増えてるし。
『姫のために12神将を呼びました』
魔王軍、人材豊富だな。でも全員赤いアレだ。首振りがモーとてもラブリーな赤いアレだ。
『姫! 我々も陪臣を呼びました。もう少しで辿り着きます』
モーうっせえわ。
世界は病に侵された。
だが人類は最初から滅んでいた。
ユアショック!
今日も赤い奴らが病原をボコしていく。
私は何のためにここにいるのだろうか。モー誰にもわからない。
何故こいつらことごとく言動だけはイケメンなのか。嫌味かちくしょう。
そういえば畜生だった。
いや張子だから紙だ。
神かもしれないけど。
今日日は怪異や都市伝説でも神にしてもらえず萌えキャラにされてしまう。
私が恐怖ならば萌えキャラ落ちは死んでも嫌だ。死んでるだろうけど。てかコロシテ……コロシテェ……(殺意)。
ちなみに彼らは焼いて食おうにも肉は残らないし炎から即復活する。
キラキラひかる。うざい。
どこのヘビクイワシ似のクソ鳥だ。
空が青いから白を選んだのは奈良少年刑務所の受刑者たちだが、私は小説しか書いていないしむしろ人々の煩悩を晴らし怨みを晴らし物語で人々を楽しませて成仏に貢献している。賽の河原の子供たちを追いかける鬼と一緒にしてはいけない。
モー、マジ罰ゲームみたいな赤い伝統工芸品ハーレムはいらんのだ。元の世界に戻る方法はないのか。
赤いやつは修理すれば長生きできる。
艶やかに赤く、あるいは経年を経て渋く味わいある姿になる。
首もいい感じで回る。
いらん。
揃いも揃って首の回り具合大会で決着しなくていい。
この世界、剣で解決したりはしない。彼らは剣など持てない。
夢の中なのに退屈極まりない。ポ⚪︎モン早く起こしてアラームアラーム!
起きた。
ひどい夢だった。
原稿が朝起きたらできていた。
私はその原稿をチェックして即捨てた。
酔ってるのかなんて他人にはモー言われたくない。




