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夢幻の少女ラクラス  作者: 明帆
第二部 ティラミス編 - 第二章 科学研究都市ティラミス

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第三十九話 彩環大鉱山

 リアンの記憶について。

 止まってしまった時を取り戻せる。

 ――そう信じたかった。そう、信じていたかった……。

 しかし、リアンの記憶を取り戻すことは『極めて困難』というのがストロー博士の答え。

 

 この悪夢を打ち破れる可能性は限りなくゼロに近い――。

 現実は、いつも……、残酷。


彩環大鉱山(サイカンダイコウザン)』と呼ばれる鉱山の地下深くに眠るとされる強い水の力を宿す宝石『真氷蒼石(シンヒョウソウセキ)』。

 その鉱石を媒介に雷の魔法でリアンの記憶の中枢に刺激を与える。それが今回の対処方法だという。雷は水を介することでより強い刺激となるらしい。


 新たな地で私達の冒険が再び始まる。旅支度をしっかり整えて皆と合流しよう……。


 彩環大鉱山は、大陸最南端東の果てに位置するティラミスよりすぐ西に連なる山々、『壮厳連山(ソウゲンレンザン)』と呼ばれる霊峰群の一角にある。

 この高低差が激しい山々には美しい鉱石が眠り、化学研究に役立つ純度が高い宝石も多く採石されているらしい。

 ティラミスで知った記憶を封じる魔導石もここで採掘された焔炎紅石(ホムラコウセキ)を加工したものとのこと。

 一方、魔法研究に必要とされる魔石についても、この場所特有の魔物から一部の希少なものを入手できるという噂もあった。


 ちなみに、魔石については、もともと宿主の属性や採掘された場所に存在する魔力が籠っている。そのため、魔法研究の素材にするだけなら基本的に魔石を加工する必要はない。

 反対に魔導石は、魔力を秘めた宝石を加工することでその真価を引き出すことが一般的に知られている。


 この魔石と魔導石の違いを知っているのと知らないとでは、魔導研究と魔法研究の違いを知らないと同じこと。この知識は私にとってはとても重要なこと。


 それはそうと、今分かることは、この山々に足を踏み入れる者が少ないことと、陸路で山向こうに抜けるには山々の中心を避けるように迂回しながら慎重に進まないと危険なこと……。

 ストロー博士が所有する古い文献に記された、荘厳連山に「雷」以外の八属性、「闇」・「光」・「月」・「陽」・「火」・「水」・「土」・「風」の魔力を帯びた区域がそれぞれ存在するという情報……。


 焔炎紅石の採取できる場所がティラミス側から入山して直後、山の中心に向かった先の地熱を発する暑い区域にあるらしいので、文献に記された情報もあながち作り話というわけではなさそう。


 では、この貴重な鉱石が採取できる区域について、その全貌が今までなぜ明らかにされてこなかったのか。

 それは、この区域が特別な魔力に包まれていて山々の上空を通過することができないこと、道無き道を陸路から進むのが困難であること、更には、火の区域でさえ魔法を創造的に扱えなければ奥深くまで足を踏み入れられないなどの理由があってのこと。

 この地方にまつわる噂や伝承、言い伝えは多く残っていて、調べれば直ぐに情報が見付かった。

 私達がシャルロット経緯でティラミスへ向かったのも限られた移動手段のうち海路を選択したから。


 このような背景があるのなら、超越した人材の宝庫である中央が調べたら済むような話……と思うところ、中央とこの地の関わりの情報は出てこない。

 この事実からも、何かがありそうな予感だけはする。


 そんなこんなでこれから私達は彩環大鉱山に向かう。

 今回も誰一人欠けることなく無事に笑顔で戻ってくる。

 そして、リアンに奇跡が起こることを私は最後まで信じ抜く。

 あの日、ボーロ・レイが滅びた時にアリヴィアとリアンに立てた誓いは今も私の胸に生き続けている。

 何があっても、私はもう諦めたりなんかしない。


 私に諦めるという選択肢はない――。


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