表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/45

生来

 凛士は物心ついたときに知らされた。どうやら自分は純粋ではないらしい。そしてそこに暮らす人たちも皆、純粋ではないらしい。平たい話をするならば、迫害されてきたのだ。


 迫害を受ける理由は様々だが、とりあえず非常に理不尽な理由があったらしい。ハーフ、というのが最大の理由らしい。でもあの頃は、掃きだめのような街で、荒廃した世界で顔を上げていた。特に将来のことなんて考えず、毎日ご飯を食べて生きることだけを考えていた。


 状況が変わったのは、凛士の母親が殺されてからである。丁度その時期に、とある計画が持ち上がったことも起因している。


 今の世界では、どう転んでもこんな掃きだめみたいな生活をしなければいけない。純粋で位の上の奴らみたいな、理不尽な差別のない楽園に送りこむという計画だ。一言で言ってしまえば、地下都市移住計画だ。


 凛士はその時、その真意について知らなかった。最初の移住希望者として選抜メンバーに入った凛士は、家族と、同じ村出身の数人と一緒に地下都市へとやってきたのだ。一体どんな世界が広がっているんだろう。農耕に従事して、作物を食べて過ごしたい。そんなささやかな願いを込めて、凛士たちはその計画に乗った。


 結果として、同乗者7人のうち生き残ったのは凛士1人だったことを、後になってから知ることになる。両親も死んだ、妹も死んだ、仲の良かった友達も死んだ。たった1人で、この世界に投げ出されてしまったのだ。


 当然パニックになった。そんなリスク、1つも聞かされていなかった。自分が聞いていたのは、この先には自由で迫害のない素晴らしい世界が待っていると、それだけだった。確かに成功率が低いとは言っていなかったかもしれない。死ぬ確率について、聞いていなかった自分たちが悪いというのか。否、否、そんなもの詭弁だ。


 流れ着いたのは、まるで廃墟のような建物で、誰も住んでいないのではないかと錯覚するほど廃れていた。元々地上と地下をつなぐシールポイントとなったのがその建物内ということもあり、まずはここがどこで、命乞いをしなければならなかったのだ。


 そして出会ったのが、この家だ。その日のことは、一字一句忘れていない。


「ターレスポイントはこちら、再度告ぐ。ターレスポイントはこちら」


 凛士はプルクと連絡を取っていた。敵の位置場所を伝えていた。1度結んでしまったポイントは、何度でも目的地として使えるのだ。その生存確率が上がっているのかはわからないが。


 「了解した。すぐに落ち合う」


 そう言うとすぐ連絡は切られた。彼らが到着するまで、部屋の外で待って居よう。そう思った矢先に電話が鳴った。固定電話だった。恐らくかけてきたのは、お姉ちゃんだろう。凛士はそう思うと、電話には出ないで部屋から出た。そして家から出た。プルク達と、仲間と合流することにしたのだ。


 その前に……凛士は火をつけた。爆弾に火をつけた。それを窓から外へ放り投げた。ものすごい轟音が鳴り響いた。あの人たちにも届いたらいいのにな。そう思っていた。これははなむけと覚悟の空砲だ。少しだけ視線をうつろにしたら、遠くで走ってくる音がした。武装した格好、赤色の目、間違いなくプルク達だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ