敵襲
朝起きた瞬間に、聞き覚えのないアラームが凛桜の耳元を劈いた。ソファで寝ていた凛桜は、がばっと起きてあたりを見渡した。
「Sakura。緊急事態だ!!」
叫んでいたのは北里だった。
「敵襲だ。プルクが侵入してきた!!」
その言葉を聞いて、凛桜はパジャマを着たままロッカーへ走っていった。状況なんて知るもんか。パワードスーツを着てこの世界の平和を守るだけだ。
「東雲君!!」
「申し訳ございませんがとても捕捉できません。ゲートを無断通過したと思われるプルクは、およそ1万~」
「1万!?!?!?!?聞いたことない数字だぞ。警備は……」
「無論、国境からの侵入ではありません。転移によるものです」
そう言いつつ東雲は受話器を手に取って電話をかけ始めた。
「こちらPCPJ、緊急事態だ。プルクが侵入している。国民に一時外出禁止警告をお願いします!!!」
電話を切るとともに、つけっぱなしだった報道局の速報欄に情報が流れ始めた。後数分もすれば特別番組が始まるだろう。
「くっそ、想像以上だ」
そう吐き捨てたのは、目にクマをつけた凛姫だった。
「数がか?」
「そうだ。成功率が著しく低いことから避けてくるだろうと思っていたが、まさか本当にやってくるとは……多分プルク達、今侵入しているおよそ数倍の人間を失っている計算になる」
「そういうことですな。あなたの発表資料が水の泡になりましたよ」
高峰もそう言ってため息をついていた。
「とりあえず照本君に頼んで防衛省の表玄関は封鎖してもらうよう要請いたしました。もしも狙ってくるとしたらここかと思いましてね。もしくは国会とか、政府機関に麻痺を与えられるような建物ですかね」
「感謝する技師長」
北里はそう言いつつも頭を掻いていた。
「何が目的なんだ……多くの犠牲を出してまでやってくる意図とは……」
そうぶつぶつと言っているうちに、爆発音が鳴り響いた。遠くからだったが、その場を凍らせるには十分な火力だった。
「北里さん、考えている暇はないでしょう。プルク殲滅のために警察と隊員を派遣しております」
「いやそうなのだが……まあそうだな。そういうのは上に任せようか。ありがとう東雲くん。まずは国民の保護とプルクの同定を……」
「北里!!!!!」
パワードスーツを着た凛桜が部屋に入ってきた。
「どこにいけばいい?ぶち殺してくる」
「いったん待て。まずは避難誘導をしよう。君の出番はそれからだ」
凛桜は今にも外に出ていかんとする勢いだった。
「うーん、どうしようかねえ……」
そう言ったのは凛姫だったが、すぐに訂正した。
「まあ、いいか。屋内でもぶっ放せばいいんだ」
「凛姫さん、めっちゃ不穏な顔をしています」
「まさかロケットランチャーでこの街ごと吹き飛ばすとか、そんなことを言わないだろう……」
またも爆発音、徐々に近づいている気すらした。
「いやあ、北里君は私のことを何だと思っているんだい??では拡散へと向かおうか」
「何を拡散する気だ?」
「大したものではないですよ。こちらも昨日、こんなこともあろうかと準備をしていましてねえ」
凛姫ではなく、高峰が北里の質問に答えた。
「期待しておいてください」
そしてこう言い残し、北里を引っ張っていった。待機命令を言い渡された凛桜は、もじもじとしつつ待っていたのだった。
「凛桜ちゃん」
東雲はそんな彼女に声をかけた。
「少しだけ聞いて良い?」
「どうしましたかー?」
「どうしてあなたの家に向かって、沢山のプルクが向かっているの?」




