表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/45

検討

 久しぶりについたPCPJの本部は、凛姫がいたころとは全く様相が変わっていた。主に変わっていたのは、部屋の内装だ。基本的にインテリア趣味のない凛姫がいたころは、無機質なレイアウトでまさにラボといった雰囲気だった。それが今となっては様変わりしてしまった。


「なあ、凛桜」

「なに?お姉ちゃん」

「あのつるされているTシャツは誰の私物だ?」

「あーあの黒色に白文字で『Go To your HELL!!!!!!!!!!』って書いてあるあれ?もちろんしのちゃんのだよ」


 それは昔凛姫が座っていた付近に飾ってあった。他にも髑髏のマークとか染料の缶とかが転がっていた。部屋がこうなら、オペレート中に前髪を青色に染めてくそださTシャツ着てくるわと凛姫は納得した。


「それでさ」

「ん?」

「あそこにフィギアが大量に置かれているのだが」

「置かれているね。技師の中に好きな人がいるんだって」

「魔法少女ものか」

「魔法少女ものだね」

「集めているのは男か?」

「男だね」


 凛姫は深く突っ込まないようにした。凛桜もそれに同調した。


「あのコーヒーメーカーは壊していいか?」

「ぶっ壊してお願い」

「何与太話を続けているんだ?早く来てくれないか」


 ドアの入り口で感想を言い合っていたら、北里から早く歩くように指示されてしまった。


「車椅子の人間に言うことではなかろうて」

「それくらい一刻を争うのだよ」

「ほえー」

「なんだその気の抜けた返事は」


 そう言いつつ3人は資料室まで来て、そこで話を聞くことになった。わかってはいたが、議題はプルクの侵入経路についてだ。


「では報告させていただきます、技師長の高峰です」


 頭を下げた高峰という男性は、確か結構な古株で、まだ凛姫が中学生だったころからこのPCPJに関する業務を行っていた記憶があった。ダンディズムを感じさせる髭が特徴的だったが、昔はもっと痩せていたのに今は見る影もなくなってしまっていた。ストレスによる肥満化だろうか。


「こちらが現在調査を進めているプルクの侵入経路です。白線の波が当該地区で見つかり、地下への侵入を試み成功したプルクがいたのではないかと調査を始めました。次のスライドからがその調査内容です」


 高峰は前置きを手短に済ませた。どうやら一刻を争うというのは大袈裟なものではないようだと2人は感じていた。


「この線は当該建物のいたるところで発見されました。その数25。その中でも最も地上に迫る位置で発見されたものには、断面に亀裂が入っていました。これは空間転移系の異能力かと思い、地表面を化学成分のクロマトグラフで同定したところ、プルクのものとみられる汗成分が検出されました。この汗を抜き出して12℃での性能耐久試験機にかけ、最大限力の発揮できる環境に置いた際に、わずかながら壁をすり抜ける動作を行いました。よって彼らは、何らかの形で転移能力を身に着けたものと仮説を立てております」

「なるほどねえ」


 凛姫は相槌を打ったが、凛桜は何を言っているのかちんぷんかんぷんだった。


「ちなみにさ、そのすり抜ける動作って規則性はあった?」

「いえ、カオスフルでした」

「ほーん、基本的にこういうプルクの持つ転移物質、オードルリリースはその方向性や転移先が読めないことから、これまで実際に使ってくることは難しいと言われてきたんだけれども、それを使ってきた可能性があるね」

「ただ技術的な問題を解決したうえで使用してきたとは到底考えられず、謂わば博打のようなやり方です」

「斥候だとしても雑すぎるな」


 北里はそう言って手を組んだ。


「まあ斥候は生きて帰ってきて情報を渡すのが最大にして最上の任務ですからねー」


 ここでしか口をはさめないと思ったので凛桜は解っている風に言った。


「色んなところに波があったのは精度が落ちているためか」

「だとするならば彼らの目的はなんだ?ということに帰結するな。精度の低い方法で斥候を送ったバカ者だとしたら話は簡単だ」


 北里の言葉を遮るように凛姫は話し始めた。


「だがそれは違う。彼らは転移の技術をもらいここに潜入しながら、全くもって彼らにミッションが与えられているとは思えなかった」

「それはデータからも出ています!!プルクが来た時の推移を足跡から解析したのですが、どう見てもその場に留まっていて何もしていないようにしか見えませんでした!!指示があったならもっと動くはずです」


 照本がそう言って分析表を見せた。それを見た時に、凛姫は少しドキッとしてしまった。しかしその分布図を見て、安心するとともに首を傾げてしまった。


「確かにな……」


 北里は再度首を傾げていた。


「因みに、デパートの屋上の表れたプルク達、あれもそう言った転移によってきたと言っていいのか?」

「そうだね。私も一応データを持ってきた。ドローンの映像だ」


 そして凛姫は自身のドローンに写っていた映像について説明し始めたのであった。そして次いで、まだ仮説段階の話を打ち上げておいた。


「何者かが、プルクを引き入れている可能性がある。目的はわからないが、内部統制も気にかけなければならない!なんて、部外者の私が言うことでは無いけどね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ