表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/45

説教

 少ししてからのことである。具体的にどれくらい少し経ったのかというと、お昼ご飯の炒飯を2人にごちそうしてお昼寝モードに入らんとしていた時である。優雅なひと時を過ごそうとしていた3人に対して水を差すかのように、その男は連絡を寄こしてきた。


「話がある!!!!!」

「却下だ!!!!!」


 一瞬でその会話をぶった切った。なぜそんなことをしたのかというと、その相手がいつもの北里だったからだ。


「却下って、話があるのは野口ではない。君だ君」

「君という名前のものはここにはいない。そして私は目玉焼きでは黄身よりも白身の方が好きなタイプだ」

「そんなこと興味がない!!!それより、野口凛桜!!」


 いきなり名前を呼ばれて、凛桜は動揺してごろっと寝ていたソファから起き上がった。


「なんですかー?北里さんらしくなく大声で話しているじゃないですかーまるでこれから説教を始める人みたいー」

「説教を始めるんだ!!!君が今日やらかしたことを列挙してみなさい!!!今すぐ!!!」

「か弱いお姉ちゃんの危険を察知したから、飛ぶように家に帰ってプルクを撃退しましたー!功績しかなくない??」

「何が功績だ!!!!プルクを街下に落としたせいで街中大混乱に陥ってたんだぞ!!!死骸だったから大した被害が出ていなかったが、もしも動ける状態で落ちてみろ!!どれだけのパニックになることか……」

「い、いやーそんなのゾンビが降ってきたくらいのもの……」

「んなわけないだろう!!!ちょっと変わるぞ!!」


 ん?と思ったのもつかの間、通話主が教官へと早変わりした。


「おいこら野口……街を大パニックに陥れただけじゃなくて、午後からの座学もぶっちする予定かぁ!?」

「ひっ!!!小国おぐに教官!!!」


 小国教官は筋肉もりもりな姿をこちらに見せつつ睨んできていた。凛桜は流石に怯えて、自然な動きで正座になってしまっていた。


「い、いやあだってね。実質的に姉が危篤状態だったわけですよ!?!?プルクに襲われているあんな状態の姉を見たら、誰しもが心配になって駆け付けていくでしょう??」

「ならばすぐに戻ってくることだってできるよな!?!?いつまでそこに居座っているのだ!?!?」

「小国さんは危篤で病院に戻った生徒が、安静になったからと連れ戻すような輩なのですか!?!?!?見損ないましたよ!!!!」

「いいから帰って来い!!!座学の藤先生が困っているんだ!!!!」


 ぎゃあぎゃあとした言い争い。それを凛士と凛姫はぼうっとした顔で眺めていた。凛士は何を言っているんだろうここの人達はという右も左もわからぬ顔をしていた。凛姫は久しぶりに聞く小国の声に若干の嫌悪感を覚えていた。別に小国が悪いというわけではない。むしろ彼はよい教師だと思うし、凛桜はさっさと学校に戻れとも思った。しかしながら小国の若干すすけた声が、凛姫にとってはあまり好ましいものではなかったのだ。こんなふうに遠慮なくものを言えるのも、同期ならではだろう。


「小国君、元気していたか?」


 凛姫は突然声をかけると、小国は少しだけばつの悪い顔をしていた。


「悪いがね小国君、これはカメラも見えるようになっているのだよ。だから今君がこんなやつを話したくないやと思った微妙な表情もこちらに映っているさ」

「被害妄想で俺の心情を偽るな!!!!そんなこと微塵も思っていない!!!」


 小国は明らかに動揺した声と顔をし、そして口を開いた。


「体は動くのか?野口」


 ここでは空気を読んで、凛桜は私だって野口だと言わなかった。凛姫は少し思慮にふけってから、少し息を大きく吸ってから答えた。


「元気だよ。なんせ、幸せな家族に囲まれているからな」

「微妙に質問から外れているぞ、野口」

「いいじゃないか。北里は昔からそこのところがガキなんだよな」

「わかる」

「な、何を言い出しているんだ!!!」


 そうして3人話している姿を見て、凛桜は昔の彼ら彼女らを妄想していた。北里は2人と比べて少し年が下だが、昔もこうやって忌憚なく話をしていたのだろう。それもまだ凛姫が自分の足で動けていた時に……


「あ、凛桜はさっさと連れてってくれていいぞ」

「へ!?!?!?」


 いきなりの流れ弾に、凛桜は驚きを隠せなかった。そして凛姫は、凛桜の方を見てニコッと笑ってこう言った。


「早く行ってきなさい、凛桜。お姉ちゃんは大丈夫だよ」


 そして私の耳元で小さく小さくささやいた。


「凛士もいるしね」


 その言葉だけはあまり賛同しかねなかったが、ともかく凛桜は凛姫に背中を押されながら学校に戻ることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ