突然
「で?どういうわけなのお姉ちゃん??」
「ちょっと凛桜!!顔が近いぞ」
時刻は午後10時ごろである。帰宅した凛桜が最初に見かけたのは、ソファにて身体の慢性疲労によってダウンしていた姉と、頭から血をだらだら流しながらその姉の面倒を見ている見知らぬ金髪少年だった。冷静に考えてほしい。どんなよくできた妹でも、姉を詰問してしまうだろう。
「まず聞くわ。この子は誰?」
「知らないな。凛桜は知っているかい?」
「お姉ちゃんが知らないのに私が知っているわけないでしょうが!!!」
そして凛桜は少年に向けてぎろりとにらんだ。
「さっきから無言貫いているけれど、あなたは誰なの?どうやってここに入ってきたの?何の目的でここにいるの??黙ってないで話してみたらどうなの??ねえ??」
しかしこのやり取り、もう軽く20分は続けているものの、少年はまったく口を開こうとしなかった。というかごまかそうと集中を切らせるようなこともしないで、ただ飲み物だの濡れたタオルだの甲斐甲斐しく持ってきていた。
「なあ凛士りんし。芋けんぴ持ってきてくれないか?」
「あ、ちょっとお姉ちゃん!!しかもこの子、凛士っていうの?」
「いや、今私が名付けた」
「いやいやいや、何勝手に家族感出そうとしているのよ!!」
「……芋けんぴ」
「おうサンキュー凛士」
「だから!!!!」
凛桜のイライラゲージがマックスになろうとしていた。それを敏感に感じ取ったのか、凛姫はフォローを入れた。
「まあでもよくよく考えても見てくれ。日頃お前は学校という名の社会訓練で無給の社畜生活を強いられているだろう?」
「学校に対する評価ひどすぎない?」
「そしたら家には私しかいないわけじゃないか」
「まあそれは仕方ないわね」
「私はこんな身だからさ、ろくに芋けんぴも食べられないわけじゃないか。後芋けんぴも食べられないし、芋けんぴも食べられない」
「お姉ちゃん芋けんぴ食べることしか脳がないの??」
凛士はすっとラスト芋けんぴを差し出していた。それを凛姫は寝転がりながら手に取った。
「ほら、気もきくぞこいつ」
「こら凛士!他の呼び方わかんないから暫定的にこう呼ぶけれども凛士!お姉ちゃんを甘やかすのはやめて!!」
そういわれたものの、凛士は凛桜の方を見ないでツーンとしていた。そしてお風呂場に行ってお風呂の準備をし始めていた。というかこいつ、なんで人の風呂場に遠慮なく入って掃除できているんだ?
「あ、お風呂の沸かし方は先ほどマニュアルを渡した」
凛姫は先手を打つように私の疑問を解消してきた。ありがとうとは思わなかった。むしろ何してくれとんじゃぼけがという思いの方が強く出てしまった。見知らぬ男に家事をさせる姉。どんなよくできた妹でも多少の文句はこぼしてしまうだろう。
「決めたんだよ凛桜」
「なにを?お姉ちゃん」
「この子をわが野口家の弟とする!!どうだ??名案だろ??私の身の回りの世話もしてくれるし、家事掃除洗濯全部覚えさせたら凛桜の仕事量も減るだろ」
「それ弟ではなくハウスキーパーよね??というか結局何もわかっていないんですけど!!この子はいったいどこの誰なの??」
「……………」
ここで凛桜がすっと黙った。少しの間を開けて、凛士がひょっこり顔を出した。奥の方では浴室で水がドバアと流れる音がしていた。えげつない音がしていたが、これはいつものことである。
「ちょっと、どうしたの??」
「ほら、先にお風呂入りな。今日は汗まみれで大変だっただろう。しっかり洗い流して、明日以降に備えるんだよ」
そう急かされたから、凛桜は渋々と浴室へと向かっていった。




