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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第35話 暗殺者は不審に思う

 俺達は生存者の男を追う。

 曲がり角の先には、一本道が続いていた。

 突き当たりはかなり遠くにある。

 どれだけ少なく見積もっても、この長さは警察署の敷地からはみ出していた。


 天井も遥か頭上にあり、壁一面に無数のドアが設けられている。

 床も大きく傾いており、平衡感覚が狂いそうだ。

 まるで奇抜な作風の絵画のような光景であった。


 とは言え、空間的な矛盾を指摘しても仕方ない。

 今更な話だ。

 内装の奇天烈さがエスカレートしているが、気にすることでもないだろう。

 俺達の目的に直結するわけでもない。


 生存者の男は前方にいた。

 彼は転びそうになりながらも、必死で走っている。


(なぜ逃げるんだ?)


 パニック状態にしても、少し違和感がある。

 そんなに俺達が怖いのだろうか。

 とにかく、この距離なら追い付ける。

 さっさと捕まえて、逃げられないようにしよう。

 保護する前に死なれると徒労になってしまう。


 そう考えたその時、壁一面のドアが一斉に開いた。

 ドアの向こうからモンスターが溢れ出してくる。

 天井付近のドアも開いており、容赦なくモンスターが落下してきた。


「おいおい、マジかよ」


 俺は苦笑いしながら眼前の光景を眺める。

 現れたモンスターは圧倒的な密度を以て通路を埋めてしまっていた。

 素通りは絶対にできない状態だ。

 生存者の姿も完全に確認できない。


 後ろで銃声が鳴り響いた。

 警部が近くのモンスターを射殺したのだ。

 彼女は毅然とした調子で俺に命令する。


「考える前に手を動かせ」


「オーケー、やってやるさ」


 このような状況にも関わらず、警部は生存者を救うつもりらしい。

 きっと死体を目にするまでは止まらないだろう。

 どのみちこの密集具合は危険だ。

 気を抜くと押し潰されそうなるため、何をするにしてもモンスター共を倒すしかなかった。


 俺はナイフを手に取ると、近くのゾンビを刺して心臓を抉る。

 そこから蹴り飛ばして道を強引に開けた。

 しかし、後ろから別のゾンビに跳びかかられて、首筋に噛み付かれる。

 食い千切られる激痛と共に、鮮血が壁を濡らした。


「おっと、危ねぇな」


 俺は背負い投げでゾンビを壁に叩きつける。

 さらに顔面に前蹴りを炸裂させて、頭部を粉砕した。

 頭部を失ったゾンビは途端に静かになる。


 噛まれた首を撫でていると、前方から鎧騎士が突撃してきた。

 他のモンスターを押し退けながら斧を振り下ろしてくる。


 俺は刃を両手で挟んで止めると、斧を奪い取って鎧騎士に叩き込んだ。

 鉄兜が宙を舞い、鎧の内側からピンク色の触手が伸びてくる。

 どうやらこいつが本体らしい。


「気持ち悪いなおい」


 絡み付いてくる触手を切断した俺は、鎧の内部に手を突っ込んで中身を丸ごと引きずり出した。

 触手はまるで蛸のような形状をしていた。

 そいつを力任せに引き裂いて、後方へと投げ捨てる。

 すると、警部の放った弾丸が正確に撃ち抜いてくれた。

 触手はバラバラになって壁の汚れとなる。


 モンスターの壁を切り崩しながら進んでいくと、木製の古びた宝箱が小さく跳ねながら近付いてきた。

 俺のそばまで来た瞬間、蓋が開く。

 中身はびっしりと牙が生えており、赤黒い舌がうねっていた。

 豹変した宝箱は、俺に食らい付こうと迫る。


「はは、随分と熱烈なキスだっ」


 俺は全開になった蓋を掴んで固定した。

 手のひらに牙が刺さるも、気にせず力を込めていく。

 間もなく過剰な負荷によって金具が割れて蓋が外れた。


 痛みがあるのか、宝箱は甲高い悲鳴を上げる。

 痙攣するその舌を掴んで引き千切った。

 止めに斧を振り下ろして宝箱を真っ二つに叩き斬る。

 宝箱は緑色の血を噴きながら絶命した。


(まったく、埒が明かないな……)


 俺は斧を振り回しながら、辺りの状況を確認する。

 モンスター達はドアから際限なく溢れている。

 少し後ろでは、警部も銃を使って奮闘していた。

 あまり長期戦になると、彼女の体力が持たないかもしれない。


(先に死体を拝んでおくとするか。確認さえすれば、警部も諦めるだろう)


 俺はモンスターの頭を踏み台に跳躍し、さらに壁を蹴って高さを稼いだ。

 落下し始める前に、手頃な壁のドアに掴まって前方を望む。


 生存者の男は、モンスター達の間を縫うように走っていた。

 モンスターは彼を襲おうとしない。

 それどころか道を譲っているようにも見える。

 まるで守られているかのように、男は通路の奥へと進んでいった。


「ふむ……」


 少し事情が変わってきた。

 生存者の保護が目的だったが、別の意味でも逃がしてはならないようだ。

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