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神縛町の荒女山  作者: 甫人 一車
〇〇八、女神様の呼び声
25/25

〇五


       ○



 その日の夕食は、豪華な焼肉だった。


 ゲンやんとセーハチが離れで話している間、キロクはその準備をしていたそうだ。


「手伝いに呼べばよかったのに」


 そういうゲンやんに、


「言われてみれば」


 と、キロクは頭を叩いた。

 どうも一生懸命になりすぎたせいで、二人のことを忘れていたらしい。


 真澄はというと、親戚の子らの面倒を見ていて大忙しだったとのこと。


「まいっちゃったよ、みんなうるさくってさあ?」


 そんなことを言いながら、真澄は明るい笑顔だった。

 面倒を見ていたというより、一緒に遊んでいたというほうが正解だろう。


「保母さんとか向いてるんじゃないの?」


「そうかなあ。そうかなあ?」


 と言うゲンやんに首をかしげながらも、まんざらではない様子。

 そして、一同そろって焼肉が開始されて、さらににぎやかになっていった。


 大小の子供らが騒ぎ、焼けるはしから肉を取っていく。

 大人たちもどんどん缶ビールのふたを開けて、お互いに勧めあいながら談笑する。


 テレビの音声がBGMみたく部屋に響く中、キロクは相変わらずの食欲だ。

 セーハチも普段の物静かを残しているようで、すばやく肉を確保する。


 それに遅れまじとゲンやんも箸を動かしていたのだが。

 ふと見ると、真澄が肉のった小皿を手にしたまま、テレビを見ている。


 食い入るように、とはこういったことを言うのだろう。

 テレビには、タコの触手みたいなものを頭にはやした、巨大な生物が映っている。


『これは、特撮映像やCGではありません。バミューダ沖近くに出現した……』


 あの生物は、多くの人間の目に触れる場所で、堂々と出現したらしい。


 ゲンやんは驚くよりも先に、セーハチをチラリと見た。

 セーハチは黙然としており、キロクは焼肉に夢中でテレビなど見ていない。


「どうなるのかな、これ……」


 テレビを見ながら真澄がくいくいとゲンやんの袖を引っ張った。


「神様……というか、女神様のみぞ知るってとこじゃないの」


 そう答えて、ゲンやんはタレのついた肉をガシガシと噛んだのだった。





 お わ り



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