〇五
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その日の夕食は、豪華な焼肉だった。
ゲンやんとセーハチが離れで話している間、キロクはその準備をしていたそうだ。
「手伝いに呼べばよかったのに」
そういうゲンやんに、
「言われてみれば」
と、キロクは頭を叩いた。
どうも一生懸命になりすぎたせいで、二人のことを忘れていたらしい。
真澄はというと、親戚の子らの面倒を見ていて大忙しだったとのこと。
「まいっちゃったよ、みんなうるさくってさあ?」
そんなことを言いながら、真澄は明るい笑顔だった。
面倒を見ていたというより、一緒に遊んでいたというほうが正解だろう。
「保母さんとか向いてるんじゃないの?」
「そうかなあ。そうかなあ?」
と言うゲンやんに首をかしげながらも、まんざらではない様子。
そして、一同そろって焼肉が開始されて、さらににぎやかになっていった。
大小の子供らが騒ぎ、焼けるはしから肉を取っていく。
大人たちもどんどん缶ビールのふたを開けて、お互いに勧めあいながら談笑する。
テレビの音声がBGMみたく部屋に響く中、キロクは相変わらずの食欲だ。
セーハチも普段の物静かを残しているようで、すばやく肉を確保する。
それに遅れまじとゲンやんも箸を動かしていたのだが。
ふと見ると、真澄が肉のった小皿を手にしたまま、テレビを見ている。
食い入るように、とはこういったことを言うのだろう。
テレビには、タコの触手みたいなものを頭にはやした、巨大な生物が映っている。
『これは、特撮映像やCGではありません。バミューダ沖近くに出現した……』
あの生物は、多くの人間の目に触れる場所で、堂々と出現したらしい。
ゲンやんは驚くよりも先に、セーハチをチラリと見た。
セーハチは黙然としており、キロクは焼肉に夢中でテレビなど見ていない。
「どうなるのかな、これ……」
テレビを見ながら真澄がくいくいとゲンやんの袖を引っ張った。
「神様……というか、女神様のみぞ知るってとこじゃないの」
そう答えて、ゲンやんはタレのついた肉をガシガシと噛んだのだった。
お わ り




