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神縛町の荒女山  作者: 甫人 一車
〇〇五、雨降る夜に見たものと……
13/25

〇二



       ○



 翌日は朝から雨だった。


 真澄が言ったように、三人は家の中でカンヅメ状態となることに。

 その間三人は陰洲家で掃除を手伝ったり、真澄と無駄話をしたり、またはテレビやビデオを見たりしてすごした。


 やがて、午後二時を少し回った頃。


 真澄がケータイで友人と話している間、三人は縁側で雨の庭を見ていた。


「なあ、昨日ボーッとしてたことあったけど、気になることでもあった?」


 静かな時間が流れる中、ゲンやんはキロクに思い切って切り出してみる。

 キロクは返事をしなかった。


「なんでもない」


 と言うこともなく、黙って雨が降る様子を見ているだけ。


「……言いにくかったんだけど」


 しばらくして、ぽつりとキロクは言葉を漏らす。


「ああ、真澄ちゃんとかがいると言いにくかった?」


 ゲンやんは、すっとキロクの横顔を見た。

 その表情は、なんだか昨日のおかしな状態に戻っているようにも見えた。


「なんというか、自分でもわからないけど……あの崖崩れのところで」


 そこで、キロクは言葉を切って、ううんと首を振る。


「……見えた。いや、いたというのかなあ」


「なにが?」


 キロクの語る口調が、どうも冗談ではなさそうなので、ゲンやんは怖くなる。


「女の子、だったかも」


「かも、ってなんだ」


 セーハチが鋭い視線で問いつめる。


「うーん。そういう風に見えたような……? あの崖崩れのところに、上のほうに」


「いや、わからないよ」


 もどかしくなるゲンやんに、キロクはちょっと待てと考えながら、


「こんな具合にだな。このへんが道路で」


 と、自分の腕を崖崩れ現場の傾斜に見立てて、肘の辺りを指す。


「それで、このへんに女の子がいたんだよ。立ってた」


 そういって指したのは、指先の辺りである。


 つまりそれを現実の現場に照らし合わせると……。


「幻覚だろ」


 セーハチは切り捨てるように言った。


「そうかなあ……? でもいたと思うんだ。きれいな子だった」


 キロクは納得できないようで、つたない反論をする。


「でも、本当にそこに女の子がいたなら、それフツーじゃないよ」


 ゲンやんが意見をのべると、キロクも黙ってしまう。


「そんな子がいたのなら噂とかになって、真澄ちゃんが話とかするんじゃない?」


「確かにな。大体キロク、お前きれいがどうとか言ってたけど、双眼鏡でも人間の顔なんかはハッキリしなかったぞ、あそこからだと」


 セーハチはうなずいてから、追求する。


「むむむ……」


 キロクは言葉に詰まったようで、うなるだけである。


「いや、見えたのが本当に本当だったら、それ……」


 ゲンやんが言いかけ、三人は静まり返る。

 キロクも心なしか顔を青くしているようでだった。


「おーい」


 と、そこへ女の子の声が響いた。


「うわっ」


「ひゃああ」


 ゲンやん、キロクは同時に叫んで、しりもちをつく。


「なにやってんの……? 男同士でこそこそと」


 真澄は呆れた顔で二人を見ている。


「暇だから怖い話をしてた」


 セーハチは顔色ひとつ変えずに、そう言った。


「お、なになに? そういう楽しいことをやってるとな」


 途端に真澄は目を輝かせ、三人に割り込んできた。


「さっきのは落ちも終わったし、あんたが話す?」


「そりゃ良かった。では、とっときのお話してあげようかなあ」


 にんまりとしながら座り直す真澄に、ゲンやんとキロクはホッとしてしまう。


(もしかすると……)


 崖崩れのあった辺りは、なにか曰くがあるのかもしれない、とゲンやんは思った。

 でも、もしも本当にそんなものがあったとしたら、ちょっと生々しすぎる。


 結局言い出せないまま、いつの間にか怪談を語り合うことになっていた。




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