〇二
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その世の夕飯も、真澄を始めとする四人によって作られることになった。
簡単な野菜スープに、ポテトサラダ。それにゴーヤと豚肉と卵のコショウ炒め。
これもまた、真澄による指揮のもと三人組が不器用な手つきでがんばったもの。
味つけなどの肝心な部分は真澄が全てやったが、セーハチは一番器用なせいか、昼間よりも重要なところを多くまかされたようである。
真澄は合間合間にお風呂の用意したり、洗濯ものをたたんだりしていた。
いや、この時もゲンやんは縁側廊下に呼びつけられ、
「君たちの、よくわからないから自分で片づけてくれる?」
と、言われて三人の洗濯ものをまとめてたたむこととなった。
「いっつもこうやって手伝いしてるの?」
服をたたみながら、ゲンやんが尋ねたところ、
「いーや、ぜんぜん? でも、夏休みだしさ。人手も多いじゃない。だから有効活用しようと思ったわけだよん」
真澄はタオルを手際よく片づけながら邪気なく言った。
「君たちも何もしないでボケッとしてるのは、苦痛だし。気づまりっしょ」
「そりゃまあ」
ゲンやんが思わずうなずいたところで、タイマーの鳴る音がした。
「おっと、お風呂ができたみたいだっと」
真澄は風呂場に飛んでいくと、
「ばあちゃん、お風呂わいたから入ればあ!」
おばあちゃんにかけた声が、ゲンやんのほうまでよく聞こえてきた。
「じゃあ、それ君たちんところに持っていってね」
帰って気た真澄は、ゲンやんのたたんだ服を見ながら言った。
「それから、ばあちゃん先に食べてていいって言うから、すぐにごはんにする?」
と、台所を親指で指した。
「おじさんたちは?」
「今日はどっちも少し遅めだから。行こっ」
真澄は人差し指をちょいっとまげて、ゲンやんに促す。
そして、再び座卓には料理がずらりと並べられることとなった。
昨日おじさんが作ってくれたような豪華なものではなかったが、それでも自分たちで作ったという感慨があるから、また別の味わいがある。
なんだかんだで、三人は夕飯に舌鼓を打つのだった。
様子のおかしかったキロクも、すっかりと調子を取り戻してごはんをかきこんでいる。
セーハチは相変わらず静かに食事をしているが、時折キロクのほうをチラリと確認しているようであった。
(やっぱり、気になるよなあ)
そんなセーハチに、ゲンやんは共感してしまう。
夢遊病にでもかかったようなキロクの言動が、どうにも気になっているのだ。
これは、ゲンやん自身も同じだったから。
あの時のキロクは、かなりおかしかったと思う。
ゲンやんもそれを本当に実感したのは、キロクが、
「池に行く」
など行って歩き出した時だったけれど。
外では夕方からの雨がまだ降り続いている。
「君たち、明日はもしかすると家に缶詰かも。雨のせいで」
外を見ながら、真澄が同情するように三人に言った。
雨は、夕方から強くなったり弱くなったりしながら、しばらやみそうにない。
(ゆうべもこんな感じじゃなかったかな)
箸を止めて、ゲンやんは小さくため息をついた。
キロクの食欲は普段どおりで、そのへんを考慮してかなり多めに作られた料理をどんどんと減らしていく。
しかし、あまりにもあっけらかんとしているために、ゲンやんは逆に不安になる。
今まであんな状態になったキロクは、見たことがなかったからだ。
風邪を引いてボーッとしていた時ですら、まだ話が通じた。
「そういえばさ? 昼間なんかボケーッとしてたけど、なんかあったの?」
ゲンやんは聞きたくてもなかなか聞けなかったことを、真澄が言った。
「う、うん。ちょっと寝ぼけてたかも? あはは……」
キロクは気まずそうに笑って、それ以上は言わなかった。
どうやら、自覚はあるということらしい。
ゲンやんはセーハチを見たが、視線に気づいたセーハチは小さく首を振っただけだ。
「ふーん。あ、そう」
真澄もあまり興味がなかったのか、それ以上は聞かなかった。
リモコンを手に取り、テレビのチャンネルを変える。
何度かチャンネルが変え後、天気予報のニュースで真澄は手に止める。
大雨の警報のテロップが、ゆっくりと流れていた。




