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反撃①

「10万の軍勢だと?」


時は流れて冬の国で出来る事は全てやってきたつもりだった。


そんな時、偵察部隊から大軍勢の報告を受けた。


「あの砦では攻略されてしまうな」


牽制する為に作り出した砦では10万の軍勢には耐えられないだろう。


「こちらの戦力は?」


「戦える者で3万、魔王領から呼び寄せれば更に2万か援軍に来れますね」


「それでも倍の戦力差があるのか」


幾ら火縄銃があっても心もとない数字だ。


鉄不足で全員分の火縄銃を作り出せていないし、火薬の量にも限りがある。


恐らく人間達が徒党を組み大軍勢を作り出したのだろう。


冬の国が奪われた危機感を煽り多くの人を募った。


・・・


ザッザッザッ


冬の国へと近づいている事を肌に感じながら回復した勇者が帝国一の剣の使い手である軍団長と共に馬を歩かせている。


前も後ろも帝国兵が乱れない隊列を組んで進んでいる。


「勇者殿、体は大丈夫か?」


「あぁ、心配かけたな。リハビリも終わって戦えるようになった」


2年前、新たに表れた魔王の一撃を防ぐために左腕を失い魔法で治療したがリハビリ期間が長くなってしまった。


勇者の復活を待ってから大遠征軍を各国から兵を募り冬の国奪還作戦が始まった。


魔王軍は冬の国を奪いつくして難民が各国へ大量に流れてきていた。


「私は皆を守る自信が無い・・・」


あの重い一撃で4万の兵士たちを犠牲にしてしまった記憶を思い出す。


「対策は万全にしていますぞ。結界師も各国から呼び寄せて全軍をカバーできる様に対策も立ててありますからな」


「そろそろ、冬の国に入るか?」


「予定では、む?」


前の方から伝令兵が走ってきた。


「軍団長、川向こうの国境に砦が建てられています」


「小賢しい真似を・・・規模は!」


「一般的な砦と同じ規模が2つ」


「2つだと!?」


「魔族達が其処で待ち構えている模様」


「片方を相手していれば真横から攻撃されるか・・・だが、我が軍は10万にも及ぶ大遠征軍だ。勇者殿もいる! 距離を取って陣形を立てよ」


冬の国との境目にある川を挟んだ双子の砦前へと進み、横に長い陣形が組まれていく。


「渡河は可能か!」


「浅瀬故に可能です」


「弓の届く距離ではないな。渡河を開始せよ」


まずは2万の軍勢を渡河させる。


ヒュオッ


砦から大量の矢が放たれた。


「魔族達は目測も出来ないのか」


軍団長は届かない距離から矢を放ったことに笑う。


「あれは・・・ボウガン?」


遠視のスキルで砦の様子を見ていた勇者が呟く。


「軍団長! 兵士を下がらせろ」


「勇者殿?」


勇者がいち早く気づくが遅い。


ギャァアア


グアアアアッ


悲鳴がアチコチから上がり始めた。


ガシャッ


グシャッ


ボルトが兜を突き破り即死した兵士達が渡河中に倒れ込む。


死体が渡河を更に遅らせる原因を作り出して次々に倒れる兵士達。


「戻せ!」


ドンドンドンッ


太鼓が鳴らされて撤退の音が戦場に響く。


「被害は?」


「およそ4000です」


2万の内一瞬で4000が死んだ?


砦が2つとは言え甚大な被害に軍団長は思考が遅くなる。


「次の指示を!」


「川から砦への攻撃は出来るか?」


「腕の上手い弓兵を使えれば何とか」


「止せ。無駄に殺す事になるぞ」


「しかし、向こうの攻撃が届く以上は反撃が出来ないんだぞ」


「重騎士隊を壁にするしかないだろう」


「確かにあの防御力があれば」


鋼鉄のフルプレートアーマーを着込んだ重騎士隊の防御力があれば進めると踏む。


「重騎士隊を」


「あと5時間程で着くかと」


「ぐぬぬっ」


重騎士隊の移動速度は兵の中で一番遅く進軍時でも最後となる。


鎧を荷馬車に積んで移動する手もあるが数千にも登る重騎士隊の鎧を運ぶには多くの荷馬車や馬が必要となる。


さらに強襲されれば重騎士隊は案山子同然となってしまう。


故に遅くなっても良いから鎧を身に付かせての行軍となってしまった。


「見張りを立てて兵士達には休憩を」


「はっ!」


装備が軽い兵士たちが続々と到着し野営の準備をし始める。


重騎士隊が到着した頃には夜となり体を休ませる為に翌日に進軍する事となった。


「ふわぁあ」


「ちゃんとしろ」


見張りが2ペアで等間隔に配置され冬の国を監視していた。


何があっても対処できるように交代制での見張りだ。


しかし眠い物は眠い。


グルルッ


「おい、あれ」


双子砦の間に2つの光る眼が浮かんでいた。


「ド、ドラゴ!」


カッ


闇の奔流が川辺に近い野営地を薙ぎ払った。


ドゴォオンッ


轟音が周囲に響き渡り全軍をたたき起こす事となった。


バサッ


「何事だ!?」


テントから出て来た軍団長は川辺の近くが燃え盛っている事に動きを止める。


「ドラゴンのブレスを受けました!」


「馬鹿な! 500mは離れているんだぞ」


「竜王の仕業だろう・・・寝ている所を襲撃とは」


「火を消せ!」


他へ燃え移らないように兵士達を使って燃え盛る野営地を鎮火させる。


「被害状況は?」


朝日が昇り、燃え尽きた野営地が日に照らされる。


闇に飲まれ即死した者、火に焙られて焼死した者の遺体が転がっている。


「およそ1万」


「1万が一夜にして・・・」


「おのれ・・・夜襲をするとは汚い真似を」


「既に1万4000の被害が出ているのか・・・こちらは何も成していないのに」


「重騎士隊を集めよ! あの忌々しい砦を破壊するのだ」


矢継ぎ早に指示を飛ばして重騎士隊を前線に集める。


5000人からなる重騎士隊の渡河が始まる。


川は脛程度しか水量がなく重い鎧を着込んでいても渡れる水深だったが川幅はそこそこ広い。


ゴゴゴゴゴッ


地鳴りに近い音が重騎士隊が川の半分まで来た時に聞こえ始めた。


「まさか」


川上から大量の水が流れてきた。


「早く渡らせろ!」


ドンドンドンドンッ!


急がせる太鼓の音が響くが水音で殆どかき消されてしまっている。


ドバァアンッ


重騎士隊が水に飲まれていくのを見る事しか出来なかった。


ザバッ


ザバァンッ


何とか渡河できた重騎士隊が対岸へと這い上がるが数が激減しているのは誰の目に見ても明らかだった。


「重騎士隊までもが砦にたどり着く前に・・・」


「軍団長、次の指示を」


「今、考えている!」


「古典的な罠・・・あの武器は何処から?」


勇者は冷静に分析していた。


水を貯めての水鉄砲、籠城からの強力な反撃手段・・・。


「はっ!? 軍団長、魔王軍には戦略家がいる」


「あの魔王軍に戦略家だと!?」


「新たな武器を開発する知恵もある・・・」


「馬鹿な」


・・・


「ボウガンによる遠距離防衛、竜王による夜襲、水鉄砲による攻撃は成功か」


双子砦から寄せられた報告に笑う。


「出来るだけ数を減らせ。危険と感じたら双子砦を放棄する様に伝えろ」


双子砦は急増で作り出した防衛力は普通の砦以下だ・・・10万の軍勢の前では軽く潰されてしまうだろう。


・・・


「全軍前進だ」


生き残った重騎士隊を囮に敵の攻撃を分散させて数で押し通る事となる。


盾を掲げ何重にも防御力を固めて突き進む。


ボルトが盾を貫通して死ぬ兵が続出するが防御に徹した進行は功を奏す。


「梯子を掛けろ!」


砦内に侵入する為に長い梯子が壁に立てかける。


ボウガンを持った魔族達が梯子を上ってくる兵士を集中的に狙うが次々と登り始める。


ブォオオッ


撤退の角笛が鳴り響き魔族達は一斉に反対側の出口へと向かう。


防衛力が極端に落ちた砦に万の軍勢が押し寄せる。


「軍団長、コレを」


敵の武器を拾ってきた兵士が軍団長へと届ける。


「これが我々を苦しめていた武器・・・」


「ボウガン・・・」


「なんだソレは?」


「従来の鎧をも貫通する遠距離武器だ。弓矢以上の力を持っている・・なぜ、この世界に?」


「こんな物で我が兵が」


ドガァアアアアアアアンッ


双子砦で壁を吹き飛ばす程の大爆発が発生した。


「何事だ!?」


「突然、砦内部で大爆発が起こりました」


「あの中には大勢の兵士が突入していたんだぞ!?」


「あの爆発力で砦が崩壊しています」


木で出来た砦は姿形もなく吹き飛んでいた。


「この匂いは・・・火薬?」


勇者は子供の頃嗅いだ匂いを嗅ぎ取った。


「まさか・・・そんな事が」


「勇者殿、なにか思い当たる節があるのか?」


「魔王軍に俺と同じ世界の人間がいるかもしれない・・・」


「渡り人が魔王軍に!? では、捕虜に」


「恐らくは」


勇者の読みは当たっていたが、異界から呼び出された渡り人が魔王軍に捕まっている訳では無かった。


「陣形を立て直すぞ」


推定2万以上の損失を被っても大遠征軍は止まる事を知らない。

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