表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/85

召喚獣魔闘大会②

出場選手と言えども本戦とは別でこれから予選大会をクリアしなければならない。


それまでは学校から支給された金で寝泊まりする事となっている。


「3人部屋で」


「おい、俺は1人部屋でいいぞ」


「3人部屋でいいよ。その方が安いでしょう」


途中で寄った町や村での宿泊代金は安く別々の部屋でも問題なかったが、王都での宿泊となると高い。


「お客様、4名のお間違いではないでしょうか?」


笑顔をヒクつかせながら受付係は問いかける。


「合っているよ。あぁ、アリアは私の召喚獣だから」


「え?」


受付は俺を見て固まる。


「お嬢ちゃん、嘘はダメよ?」


「嘘じゃねぇぜ。こう見えてもヴァンパイアなんだぞ」


「ヴァンパイア!? Aランク以上・・・」


「ここで正体を出してもいいんだが、それとも吸われてみるか?」


吸血牙を見せてみる。


「いえいえいえ、結構です。3人部屋ですね」


受付係は3人部屋の鍵をアンロッドに渡した。


「お荷物をお運びいたします」


流石宿泊代が掛かるだけあってサービス旺盛だ。


「ご夕食は19時です。お湯が必要であれば夕食時にお申し付けください。朝食は朝8時までです。では、ごゆっくりと」


そう言って係の者は部屋を出て行く。


「で、アタシはどうすりゃいいんだよ?宿泊代も出してくれたしよ」


ベッドに身を投げ出している少女。


「とりあえず、この王都を案内して」


「それだけでいいのかよ? お貴族様にしちゃ護衛も居ねぇし」


「私達は貴族じゃないわ・・・ブルングは騎士爵の息子だけど」


「おいおい、騎士爵は一代限りの爵位。俺には回って来ねぇよ・・・だから俺はドラグーンを目指しているんだよ」


ブルングは竜騎士を目指している。


「ってことは、召喚獣魔闘大会の出場者か! こんな子供が?」


ピシッ


「痛ってぇ」


「アナタの方が子供でしょ・・・それより体拭いているの?」


少女からは異臭が漂っていた。係の人も嫌な顔をしていた。


「はっ! これだから苦労を知らない奴は嫌いだよ。アタシ等はスラムで暮らしているんだぜ。体を拭く暇がありゃ今日の食い扶持を探すんもんだぜ」


「つまり、拭いてないのね・・・」


ゴソゴソと綺麗めなタオルを出すアンロッド。


「アリア、お湯」


「俺はポットか?」


「いつまでも耐えられないでしょ」


「分かったよ。石鹸もだすぞ」


「石鹸だって!? なんでそんな高級な物まで持ってんだよ」


石鹸とは王族ないし貴族でも上位の物しか使用を許されていない代物だ。


「だから、アンタ達から良い匂いがするのかよ」


「いや、俺達も最近知ったんだぜ」


「持っているなんて知らなかったんだから」


この旅で石鹸を取り出したら2人とも驚いた。


「ブルングは外に出て行って」


「あぁ」


ブルングは部屋の外へと出て行く。


カコンッ


大人が入っても壊れなさそうな大きな木桶を床に置く。


「ホットウォーター」


火と水の魔法を合成させてお湯を作り出して木桶に貯めていく。


「すげぇ」


初めて魔法を見るのか少女は目を輝かせて見ている。


「早く脱ぎなさい」


「人前で脱ぐのはちょっと」


「はぁ・・・アリア」


「あぁ」


「ちょ、自分で」


シュルッ


一瞬で少女のボロのような衣服を脱がす。


「やっぱり」


スラム街に住んでいると言っていたから予想はしていた。


ガリガリの体に至る所にある古傷に最近受けたであろう打撲痕。


「同情するのかい? アタシ達だって好きであんな所で住んでいる訳じゃない。生きるためには」


「それでもやって良い事と悪い事は区別できるだろ?」


「アタシ達の力じゃ真っ当に生きようには無理なんだ・・・アンタ達のように力なんて無いんだから」


「これが現実だ。分かったか?」


「うん」


少女の悲痛な叫びは何も知らないアンロッドには重く聞こえた。


今の力では目の前の少女は救う事が出来ないと痛感される。


「同情なんかするなよ。たったの数日だけでも雇ってくれる方がいいんだからよ」


「なら遠慮する事は無いな?」


モコモコ


タオルを石鹸で泡立たせる。


部屋に石鹸の香りが広がる。


「私・・・ちょっと出てるわ」


「大丈夫か?」


「ブルングも居るから」


「危険があったら言えよ」


「うん」


アンロッドは部屋の外へと出て行きブルングを連れて行った。


「できれば2人きりにしないで欲しかったって」


「ん? なんだ?」


「ひぃいいい!」


「大人しく洗われろ」


「その手がキモイんだよ!」


「体を洗うのと同時に頭も洗えるんだぞ」


ブラッドハンドを生やして少女の体と頭を同時に洗う。


ブォオオオ


火と風の合成魔法で温風を少女の濡れた髪に当てて乾かしていた。


ガチャッ


「着替えを買ってきた」


「所持金は大丈夫なのか?」


「多少は余裕を持たせているから。ブルングが少し稼いでくれているし」


この1週間の旅の最中に2人は冒険者登録をして弱いモンスターを討伐して少し稼いでいた。


「古着で悪いけど」


「ありがてぇぜ。アタシ等が手に入れられるのはボロだからよ」


「そう」


「アタシはルーってんだ」


「アンロッドよ。外にいるのがブルング」


「アリアだ」


コンコン


「もぅいいか? そろそろ夕食だぜ」


ノックがされてブルングから声を掛けられる。


「いま、行くわ」


スルッ


ルーが古着を着て出て行く。


「ルーの体」


「一応治せるところは治しておいた・・・が一時的に過ぎんぞ」


「どうして減らないの?」


「この世全体が変わらなければいつまでも続く連鎖だ。それでも両親を同時に無くす事は日常茶飯事だろう」


「どうしたら減らせる? 魔王なんでしょ?」


「おいおい、悪の権化に聞くか?」


「この2年一緒にいるけど悪なんて一方的に決めていただけだから」


「これまでが演技だったらどうする? お前が成長するのを待ち続けてその時が訪れたらパクッとするまで待っていたら」


「契約紋があるわ」


「コレが絶対だという保証は誰が決めた? 俺は魔王だぞ?」


首に刻まれた契約紋を指さして笑う。


「それでも、私は信じている」


「おい、早くしろよ」


ブルングが部屋に入ってきて促される。


「うめぇ! 久しぶりのうめぇ飯だ」


大口を開いてバクバクと食べるルー。


「そんなに急いで食べると」


「んぐっ!?」


ドンドンドンッ


ゴクゴクッ


喉を詰まらせかけて水で流し込む。


「ぷはぁ! あぶねぇ」


「言わんこっちゃない。口の周りも汚れているわ」


グイッ


ハンカチでルーの口を拭く。


「クククッ」


「何よ?」


「いや、お姉ちゃんしてるなって」


「・・・」


「悪い意味で言ってねぇよ。なぁ?」


「俺に振るな」


ブルングの横で亜空間から取り出したワインを飲みながら答える。


「アリアは食わないのか?」


「欲しいんならやる」


「あぁ!」


俺にも置かれた夕食のトレーを引き寄せて食べ始めるルー。


人型の召喚獣にも同じものを出すルールがこの宿にはあった。


再びガツガツ食べるルーを他所に変な視線を感じている。


いくら王都の宿でも居るところには居る。


「ブルング、2人を頼む」


「またか? 美人ってのは損だな」


「美女や美少女なら歓迎なんだがな」


「程ほどにな」


「それは相手次第だな」


フッ


グラスとワインを亜空間にしまって宿を出て行く。


少し遅れて数人の気配も着いてくるように追ってくる。


宿から離れた所まで表通りを歩き、不意に路地裏へと入る。


後を追ってきた気配も路地裏へと入ってくる。


「どこ行った?」


「あんな美人、早々お目にかかれねぇぜ」


「それにあの首飾り、そうとうな値になるぜ」


「あの餓鬼どもを人質にでもするか」


路地裏で物騒な事を言い始める男達。


ヒュオッ


スタッ


「「「「!!?」」」」


4人の背後に降り立って驚く。


「黙って聞いていれば物騒な事を話すな」


「へへっ、口は悪いが」


「大人しくしていれば餓鬼どもには手は出さねぇぜ」


「だから、俺達と楽しい事しようぜ」


「へっへっへっ」


下卑た目で男達は俺を舐めるように見る。


「ブラッドハンド」


ズォオオッ


「なっ、なんだ!?」


「腕が生えた」


「ひぃい!」


「バケモンだぁあ」


4人が狼狽え始める。


「一撃で楽にしてやる」


「ハイ、ストップ!」


路地裏には似つかわしくない声が響いた。


奥から人影が出て来た。


「ここを何処だと思っているのかな。天下の王都だよ」


優しい物言いだが圧を感じる。


「あの服装は飛竜隊の」


「くそ、覚えてやがれ!」


男達は俺の両脇を通過して逃げていく。


「こんな場所に一人でいる方もどうかと思うよ?」


「アイツ等を助けたのにか?」


「バレてたか・・・アナタは誰かの召喚獣でしょ?」


「それが如何した?」


「召喚獣が人に危害を加えた場合、召喚主にも責任が問われてしまうんだ。だから止めたんだよ」


「バレなければ良いだろ」


「僕が見てしまったんだ。止めるのは当然さ」


「それは助かった。じゃあな」


「僕はミハエル。飛竜隊のミハエル・バートンだ」


「アリア」


「ヴァンパイアのアリアだね。覚えておくよ」


人化していても分かる奴には分かるようだ。


俺は宿へと返っていった。


流石にあの連中は食堂にはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ