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第百九話 「最後の演目」

 城の中で他愛のない話をしていると、時間はどんどんと過ぎていった。

 そして気付けば一次本戦の制限時間である一時間が経ち、城の外から終了を告げる笛の重たい音が聞こえてくる。

 最終的に核を攻撃しに来る人たちはいなくて、僕たちは無事に最終本戦の出場を確定させることができたのだった。

 窓から外を見てみると、最後の最後まで外で戦いを続けていたチームがいくつかいて、観客たちはその人たちに対して盛大な拍手を送っている。

 僕たちは攻城をすぐに終わらせて籠城の時間が長かったため、闘技祭らしい見せ場を作ることはできなかった。

 まあ勝ちは勝ちなのでそれでよしとしよう。

 僕たちは闘技祭を盛り上げるために参加したわけではなく、優勝して賞金を手に入れるのが目的なのだから。


「これにて一次本戦は終了ってことで、全チームお疲れさまぁ~」


 それから一次本戦に参加したチームは会場の真ん中に集められて、主任試験官のグーチェンさんから最終本戦へ進むチームの発表や、観客たちから健闘を称える声を頂戴する。

 どうやらオルガンのチームは仲間のふたりが奮闘したようで、オルガンがミュゼットに気絶させられたのにもかかわらず攻城と籠城を成功させていた。

 これはさすがに意外であった。

 いまだに奴は気を失ったままなのか、最後の集合の時に姿はなくて少し安心したが、彼の仲間であるふたりの少女からはものすごい剣幕で睨まれてしまった。

 ともあれ最終本戦への出場を決め、観客たちの拍手を背中に受けながら会場を後にした僕たちは、祝勝と作戦会議を兼ねて食事に向かうことにする。


「もたもたしてたらまた観客たちに取り囲まれそうだし、早いうちに闘技場を出よう」


「そ、そうですね。またあんな目に遭うのはごめんです」


 一次本戦の時に様子が少しおかしかったヴィオラだが、今はすっかり元の彼女に戻っている。

 むしろ一次本戦前より、若干機嫌が良さそうに見えた。

 それから僕たちはそそくさと闘技場を後にして、大都市マキナの街道を三人で歩く。

 ヘルプさんの道案内で落ち着いて話し合いができそうな食堂に辿り着き、そこで僕たちは腰を落ち着けたのだった。

 やがて頼んだ飲み物が運ばれてくると、一次本戦の健闘をお互いに称え合う。


「じゃ、最終本戦出場おめでとー」


「はい、おめでとうございます」


「おめでとうですわ」


 三人とも至って普段通りのテンションでそう言い合ってグラスを打ちつける。

 というのも、そこまで苦労して最終本戦への出場を決めたわけではないから。

 それとまだ優勝したわけでもなく、おまけに懸念点であるオルガンのチームが残っているため、思い切り喜ぶのはまだ早いと心のどこかで思っているからである。

 そのことについて反省を踏まえて、この席で僕は言及することにした。


「何事もなく一次本戦を突破できてよかったけど、まさかまだオルガンのチームが残ってるなんてね。奴を無力化したから大丈夫だって思ってたけど、仲間のふたりが相当がんばったってことなのかな」


「あっ、さっき私たちを睨んでいた、赤髪の派手目な姉妹さんのことですか? ものすごい剣幕でとても怖かったですよね……!」


「ハーディとガーディですわね。あのおふたりも武闘派のペザンテ侯爵家の生まれで実力は確かですわ」


 どうやらミュゼットはオルガンと一緒に出場していたふたりについて知っているらしい。

 だからだろうか、今回の結果について少し申し訳なさそうに話した。


「それでもオルガン抜きのたったふたりで攻城と籠城を成し遂げるとはさすがに思いませんでしたわ。こんなことなら確実にオルガンのチームの城も崩してしまった方がよかったですわね」


「そうだね。まあでも、下手に攻め込んで返り討ちにあう方が怖かったから結果的にはこれでよかった気もするよ。僕たちは僕たちで一次本戦の勝利条件を満たしていたわけだし。リスクを背負ってまで落としに行く必要はなかったんじゃないかな」


 正直落とせていた方が最終本戦への安心感は強かったけど。

 ただ、攻め込みにいくリスクが高かったのもまた確かだ。

 ヴィオラの『リバースルーム』を使った作戦も、一度公然に晒して知られている可能性もあったし、思わぬ反撃をもらうことも充分に考えられた。

 それにもし知られていないのだとしたら、そのアドバンテージは次の最終本戦で生かした方がいいだろう。

 向こうの主戦力であろうオルガンの攻撃は、ミュゼットの加護で防げることはわかったし。

 こちら側の貴重な手札を晒してまで、オルガンのチームを落とすメリットはそこまでないように思える。

 それ以上に未知数である残りのチームへの手札を温存しておいた方が利口だ。


「それに残ってるのはあとたった五チームだけだよ。今の時点でも充分にチーム数は絞られているし、優勝できる可能性はすごく高いんじゃないかな」


「それもそうですわね。またあの男がちょっかいをかけてくるようでしたら、もう一度わたくしの加護で跳ね除ければいいだけですものね」


 ミュゼットは得意げな顔でグラスに口をつける。

 すると今度はヴィオラが、両手で持ったグラスのふちを指でなぞりながら、感慨深そうに呟いた。


「それにしても、一次本戦出場チームが全十五でしたよね? そのうち最終本戦に残ったのが五チームだけですか……。狭き門を潜り抜けたという感じがしますね」


「まあ、一次本戦の攻城戦の内容からして、確実に八チームは落ちる計算ですものね。下手をすれば今回の一次本戦で最後の一チームが決まり切る可能性もありましたから、まさに狭き門を突破したと言えると思いますわ」


「その狭き門を通過した強豪の五チームの中で、明日一番を決めるわけですか……。どんな対戦形式になるのか気になりますね」


「あっ、そのことなんだけど、もう最終本戦の内容は決まってるみたいなんだ。って、さっきヘルプさんに教えてもらったよ」


 ヴィオラとミュゼットが驚いたように目を丸くし、ふたりして前のめりな姿勢になる。

 予選の時と一次本戦の時は、対戦形式は前の日の夜に決まっていたので、この段階で決まっているのは僕としても驚かされたものだ。

 おかげで早い段階で最終本戦のための話し合いがこうして行える。

 周りに他のチームの人がいるかもしれないと思った僕は、やや声を落としてヘルプさんから聞いた最終本戦の内容を明かした。


「最終本戦は闘技場に設置したリングで執り行う、場外判定ありの純粋な“試合”だってさ」

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