81話 大規模宇宙港
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首星ディロスから恒星外に向かって、約2億8000万キロメートルの宙域に、首星の公転と連動する巨大な宇宙港が建造されていた。
巨大な投網のような姿をしており、ロープの部分は物資の集積所となっている。そして網の結び目にあたる部分は、管理ステーションになっていた。
宇宙港に物資を運ぶのは、大型コンテナを抱えたイスラフェルや、中型コンテナを抱えたサラマンダーだ。それらは宇宙港から2000万キロメートル先の転移門を通って、マクリール星系から跳んでくる。
コンテナごとに指定された輪の中に入り、貨物を集積所に移すと、艇体を翻して速やかに帰還していく。宇宙港に集積されたコンテナ群は、首星から送られた無人船によって、星系各所の集積所や工場へ運び込まれていった。
それら物資を受け入れる宇宙港の発案者は、転移門が繋がるアテナ星系の住民だった。
新星系から膨大な資源が適正価格の3割で入ってきて、それを後方星系に右から左へと流すだけでも儲けられるようになった彼らは、儲けを拡大させるべく、作業の効率化を模索した。
「戦闘艇の役割と拘束時間を減らせば、転移門の往復に集中できるはずだ」
流通ルートで戦闘艇が不可欠なのは、高次元空間である転移門を通過する際に、魔素機関を稼働させてシールドで艇体とコンテナを守るタイミングだけだ。
それ以外の作業を他で補えば、同じ数の戦闘艇でも輸送量が倍加する。具体的には、転移門付近に宇宙港を建造したり、無人船を導入したりして、戦闘艇がやっていたことを肩代わりさせれば良い。
だが新星系の政策は王国政府が決定しており、戦闘艇は王国軍が運用して、転移門はアマカワ侯爵が管理している。
運用を変えさせることに高いハードルがあったアテナ星系の人々は、アテナ星系を取り纏めるストラーニ公爵代理のベルナール第一王子に対して、宇宙港の建造などの効率化を陳情した。
はたして、ベルナールは陳情を受けた。
「良いだろう。建造計画の献策は、アテナとディーテの両方になるが」
ベルナールは国王候補であって、王国全体の利益を考えなければならない。
陳情を取り纏めたベルナールは、ストラーニ公爵を兼ねる女王ユーナに奏上して、アテナとディーテの両星系に大規模宇宙港を建造させたのであった。
ベルナールが提出した計画は、実現が容易で、王国の利に適う内容だった。
提案された宇宙港は、網の結び目にあたる管理ステーションに、廃艦予定となっていた旧世代の大型艦艇や大型民間船、諸侯の船などを用いて、移動と連結だけで直ぐに設置できるものだった。
宇宙港の建造は、新星系から流れてくる資源量を増大させる内容であって、諸侯の領地を含めた王国全体の利益に資するために、諸侯に協力させ易い。
また旧世代の艦船を運用することで問題となり得る安全基準に関しても、居住惑星外で、無人船とアンドロイドに運用させるためにクリアできた。
かくして宇宙港は採用され、王国全体が経済活動を拡大させていった。
陳情を取り纏めたベルナールは、アテナ星域会戦の軍事面での実績に続く、大規模宇宙港の提案による経済発展の加速という内政面での実績を得たのである。
ベルナールの内政面での活躍は、貴族達を大いに悩ませていた。
『タクラーム公爵家の支援を受けるジョスラン王子が有利かと思ったが、これは分からなくなってきた』
両王子の武勲章は並んでおり、兄のベルナールは内政の実績が出来て、弟のジョスランは士官学校に入学して軍事で期待される。
魔法学院の生徒と、士官候補生であれば、士官候補生のジョスランが有利だった。ディーテ王国の成り立ちや、戦時という現状を踏まえれば、軍が分かって国民を率いる能力も有る方が良いからだ。
だが内政面で、国家に貢献した実績を積んだベルナールは、単なる魔法学院の生徒ではなくなった。単なる士官候補生よりも、明らかに上である。
ベルナールが実績を積んだ分だけ、ジョスラン陣営にとっては脅威となって、後ろ盾のタクラーム公爵家も余裕がなくなる。
『タクラーム公爵家に敵対したと思われるのも困るし、迂闊に触れられない』
貴族達が慎重になるのは、ジョスランが次王に成った場合、次王とタクラーム公爵の他にも、次王を選んだユーナとハルトが新王を支える立場になり、大抵の貴族も新王派に付くからだ。ベルナールを支持した非主流派が受ける不利益は、計り知れない。
これは逆の立場にも言えることであって、ベルナールが次王に成る場合、ユーナとハルトが新王を支えるために、大抵の貴族が新王に付いて、非主流派となるタクラーム公爵家とストラーニ公爵家は少数派として不利益を蒙る。
貴族が自派閥を優遇したり、貸し借りを精算したりするのは、自家の魔力を保つために避けられない行動だ。子孫を残すことが1人で出来ない以上、ハルト達であろうとも、子孫のためには味方を優遇せざるを得ない。
そんなハルトとユーナは、新星系2つと転移門を管理する。
次王を中心とした新主流派の力は絶大であり、貴族達は非主流派になりたくないのだ。新星系が転移門で繋がる以前に旗色を明らかにしていたタクラーム公爵も、ここまでの事態に至るのは想定外だっただろう。
貴族達が悩む中、宇宙港の建造は着々と進み、並行して運用も始まった。
今後も宇宙港は拡張され続けるが、運用が始まった時点で1度区切りを付けるべく、大規模宇宙港の開港記念式典が執り行われた。
諸侯や領地政府、関係省庁の上層部、取引に関わる企業の経営陣、経済界の重鎮達、各種メディアなどが集められた大規模な式典の主催者となったのは、大規模宇宙港を取り纏めたベルナールである。
ベルナールが主催する式典は恙無く進行して、華やかな祝賀会に移行した。陳情を取り纏めて実現させ、式典から祝賀会までを執り行ったベルナールに対する次王候補者としての評価は、能力的には及第点には達していた。
軍事、内政、式典等の全てを行えて、ユーナに女王を続けられない事態が訪れた際、ベルナールが国王代理を務められると示せた事には、非常に大きな意味がある。
祝賀会に移行した会場では、国王に成れる能力と可能性を示したベルナールの下に諸侯が集い……は、しなかった。
真っ先に駆け付けた貴族は、ベルナール派の急先鋒と見なされる。ベルナール派だと旗色を明確にすれば、ジョスランが王位に就いた時には大変な事になるだろう。
結果としてベルナールの下に真っ先に駆け付ける貴族は1人もおらず、貴族達が周りの様子を窺う事態が発生した。
祝賀会場では、沈黙に耐えかねた若い貴族子女達が、周囲と囁き合っていた。
「レオン、アテナ星系のシャレット侯爵家に復帰したお前は、挨拶に行かないのか。ベルナール殿下は、アテナ星系とは関係が深いだろう」
「うちの親は小心者だから、2度目の絶縁が不可避だ。言い出したお前が行くのはどうだ」
「生憎と我が家は、吹けば簡単に吹き飛ぶ程度の子爵家だ。最初の挨拶は、上級貴族家の当主が行くべきだろうな……自家の命運を背負って」
「だったら当主では無い俺に勧めるな」
貴族子女に限らず、情勢を理解する当主達の誰もが動かなかった。
衆目が固唾を呑んで見守る中、式典会場の中心からベルナールに向かって歩み出した女性が居た。
あれは誰だ……と、問う貴族子女は、存在しない。
伯爵家当主、王国軍大将の記章、勲2等の武勲章を付けている彼女の顔と名前は、貴族子女のみならず、王国では小さな子供にすら知られている。
公人として王国軍副司令長官、私人として女王の親友、名誉としてケルビエル要塞運行補助者の1人。ケルビエル要塞は首星やアテナ星系を守り、人類連合を瞬く間に滅ぼし、天華を蹴散らしてきた。
王国の至宝が1つである彼女は、その存在によって周囲を圧倒しながら、ベルナールの下へ堂々と歩み寄っていった。
やがて彼女はベルナールの下に辿り着くと、薄紅色のドレスの裾を軽く摘まんで、ウェーブの掛かった淡い金と緑の腰まで伸びるロングヘアを靡かせながら一礼をして、軽やかな声で祝辞を述べた。
「ごきげんよう、ベルナール殿下。リスナール伯爵コレットでございます。殿下が発案された大規模宇宙港が開港の時を迎え、王国の発展に大きく寄与する事にお喜び申し上げます。僭越ではございますが、僅かながらも年長の貴族家当主であるあたくしが、殿下の王国に対する献身を称えますわ」
穏やかに微笑んだコレットは、小声で付け加えた。
「やるじゃない。あたしは、あなたに対する評価を上げたわよ」
それはベルナールが緊張していた場合に和らげるべく添えた言葉だった。
コレットが衆目の前で堂々と、親しく語り掛けられたのは、彼女は誰もが認める女王派であり、女王が指名する王子を支持する事が明らかだからだ。ベルナールに率先して挨拶したところで、ベルナール派の急先鋒だとは思われない。
コレットの行動がベルナールの歓心を買う事は無いが、ジョスランから不興を買う事も無い。貴族達がベルナールに話し掛けられる流れを作ろうと動いたのだと、概ね正確に理解される。
話し掛けられたベルナールも、コレットの立場と意図は理解していた。
「こちらも真っ先に祝辞を頂いた事に礼を言おう。最初に誰が来るかと思っていたが、流石は王国軍の副司令長官だけあって、迅速であらせられる」
「あら、諸侯を試しておられたのでしたら、お邪魔してしまったかしら」
「いや、誰も率先しては来ないという結果は出た。これ以上は不要だ」
ベルナールが出した結論に、コレットも賛意を示した。
そもそも自由に動けるコレットの立場が特殊であって、貴族の反応は正常なのだ。
陞爵したリスナール伯爵家は、王都を兼ねるアマカワ侯爵領の隣に領地を与えられている。アマカワ侯爵領と同じ役人達が一纏めに管理しており、制度は全て同じで、リスナール伯爵領は王都近郊部の扱いだ。
陞爵直後で、王国から行政面や財政面で支援が行われる他、懇意なユーナやハルトの領地……新星系2つと、転移門を介した安定的な交易を行える。
貴族の最優先事項である魔力の維持は、子供が高魔力になると確約されたハルトに遺伝子提供の約束を取り付けている。子供が2人居れば、片方を他家に出して借りを返してもらう形で配偶者を迎え入れれば、三代目以降も安泰となる。
コレットのような立場の貴族家は、フィリーネのカルネウス侯爵家や、両王子の祖父であるオルネラス侯爵家など、指折り数えるほどしか無い。
「ジョスラン王子であったとしても、タクラーム公爵派の貴族達が率先して挨拶に来る流れだったと思いますわ。一族を守る責任がある当主は、迂闊に動けなくて当然ですので、あまりお気に為されませんように」
もっとも、抜け道が存在しないわけでは無い。
いくつか存在する選択肢で最も効果的な方法が、両王子の妹であるミラベルを婚約者にする事だ。
第二王子ジョスランの2歳年下であるミラベルは、現在は中等部2年生で、推定魔力は侯爵家の第一夫人に成り得る2万1530。彼女は両王子の実妹であるのみならず、女王ユーナとも母親違いの妹で、ハルトの義妹予定者だ。
ミラベルを妻に迎えた貴族は、妻が行う『兄姉へのお願い』で、貴族に発生する大抵の問題を軽々と乗り越えられるようになる。それどころか、兄姉や周囲が勝手に配慮してくれるために、問題自体が殆ど発生しなくなる。
前王ヴァルフレートは、遺言で子供達に「婚約者は自由に選べ」と宣言しており、ユーナや前第一王妃カサンドラも前王の意思を尊重している。そのためミラベルは、自身の婚約相手を自分で選択できる。
開港記念式典に出席したミラベルの周囲には、ベルナールの下に誰も駆け付けなかったのとは真逆に大勢の貴族子弟が集まり、自分や実家のためにミラベルの歓心を買おうと懸命に話し掛けていた。
中等部2年生の女子を相手に、年上の男達が節操もなく群がる姿には、中立派のコレットも若干眉を顰めたが。
「ミラベル殿下は、群がられる事を覚悟の上で出席されたのかしら」
「あいつも、相手を選ばなければならない立場だ。ああ見えて、ちゃんと周りとの距離も測っている」
「あら、意外ですわね」
コレットが意外性を感じたのは、どちらかといえば浅からぬ見識を有していたベルナールに対してだった。
ベルナールが最初から今ほどの知性を示して、王国民から不人気ではない貴族令嬢と婚約して、合同防衛演習で指導者のフィリーネに反抗的な態度でなければ、諸侯会議でジョスランが失敗した時点で次王が確定していた、と、コレットは確信している。
タクラーム公爵家に対するユーナとコレットの忌避感は、進学先を魔法学院高等部から士官学校に変えたほど強い。
フィリーネに対する反抗が、ベルナールに大きなマイナス評価を与えた結果、タクラーム公爵家令嬢リシンと婚約したジョスランの失敗に決定打とならなかったのだ。
結果として両王子は、能力や功績を公平に評価されている。大規模宇宙港を実現させたベルナールの行動は、相応に評価されるだろう。それをコレットが口に出すことはなかったが。
「ミラベル殿下が覚悟の上で列席されたのでしたら、お節介は止めておきましょうか。守ってくれる友人も居るようですし」
「気に掛けてくれた事について、兄として礼を述べておこう」
「どういたしまして」
ミラベルには、中等部の同級生が傍に付いていた。ミラベルの友人である彼女も、社交界ではミラベルに負けず劣らずの有名人だ。
デイジー・ブラウン。魔法学院中等部に在籍していながら、貴族どころか準貴族でも無く、それどころか王国民ですら無い。
深城を組み込んだディーテ王国が、現時点では唯一国交を樹立しているフロージ共和国から来た彼女は、フロージ共和国大使の娘という立場だ。
父であるグレイソン・ブラウン大使は、妻と離婚して娘を引き取っている。
『妻と離婚した男を外交官に選ぶフロージ共和国は如何なものか』
そのように眉を顰める者も居たが、離婚当時は小さかった娘のデイジーは、父を庇って母の家庭内でのヒステリーや暴力を批判して、父親に付いていく意志を示した。
幼い子供が、母親ではなく父親を選ぶのは相当の事だと考えられて、問題は母親にあったと判断された結果、グレイソンは解任されなかった。
かくして王国に派遣されたグレイソンは、第一次ディーテ星域会戦で前任の大使が死んだ結果、公使から繰り上がって現在に至る。
外国の大使を死なせてしまった負い目があった王国は、生き残ったフロージ共和国の外交官と家族に、多少の配慮をした。
その1つが、戦争で被害を受けた大使の娘デイジーに、本人が希望する進学先で席を用意した事で、デイジーは魔法学院への進学を希望した。
フロージ共和国は、王国の高魔力者と頻回に接する大使や公使に、自国の高魔力者を充てている。その娘デイジーの魔力は1万6132で、王国では伯爵家の当主が務まる程であり、希望通りに魔法学院中等部へ入学した。
魔法学院に初の外国人が入学して、ミラベルの同級生となって親交を深めた結果が現状である。
ミラベルに付き添うフロージ共和国大使の娘デイジーは、群がる貴族子弟が機密の観点から迂闊な事を口走れない壁として、この上なく有効に機能していた。
単に紳士的な男性として振る舞わざるを得ない貴族子弟達は、ミラベル達が関心を持つ話題を見極めて談笑し、顔と名前を覚えさせて好感度を上げるという迂遠な方法を選択している。
それらの様子を遠目に眺めていたベルナール達の下に、デイジーの父親であるグレイソン・ブラウン大使が歩み寄って来た。
「ベルナール殿下。この度は、大規模宇宙港の開港、おめでとうございます」
堅苦しい口調で声を掛けたグレイソンは、キッチリと固めたオールバックに神経質そうな顔をした、細身で長身な男だ。
平均寿命200年の世代で50代半ばの彼は、送り出した母国から見れば、ディーテ王国という超巨大国家の特命全権大使を務めるには若いと見なされる。
だがグレイソンは、共和国が送り込んだ外交官としての役割は瑕疵なく果たしている。ハルトとカーマン博士が精霊結晶を販売した最初期には、他国民への販売規制が入る前に精霊結晶を手に入れた。
経歴も妻と離婚した以外は完璧で、祖父が2つの次官を歴任し、祖母は元閣僚の娘。父が大学教授で、母は著名な音楽家。そして本人は、フロージ共和国最難関の大学院を卒業した後、王国最難関の王立大学に留学してから、共和国外務省に入省している。
高校生の時に、共和国のピアノコンクール高校生部門で入賞している他、絵画を描き、自作の値は付かないが良い出来の陶芸品を王国側の関係者に贈り、オペラを観賞して回るなど趣味が豊富で、王国貴族を相手にする際に有力な手札を沢山持っている。
油断ならない大使を相手に、ベルナールは表情を改めて挨拶を返した。
「ブラウン大使、わざわざ出席頂き感謝する。ちょうど我が妹と貴殿のご令嬢を話題にしていたところだったが、タイミングを見計らわれたのであろうな」
「わたくしの娘が話題になっているのでしたら、お話に入り易いですからな」
肯定したグレイソンは、マクリール星系から流入した安価な原材料が、共和国との交易にも多方面で影響を及ぼす事を指摘して、全体としては共和国の経済も上向くために好ましい事だろうと述べた。
王位継承争いをしている王子の片方に、言質を取らせない定型文をなぞる迂遠な会話だったが、隣で聞いていたコレットが要約すれば「今度ともよろしく」である。
グレイソンは同席していたコレットに対しても、転移門の利便性を語った上で、フロージ共和国も開ければ、王国との行き来が便利になるのではないか、と、探りを入れてきた。コレットは微笑と共に、軽く受け流したが。
主催者と、同席する有力者の双方に挨拶する目的を終えたグレイソンに対して、今度はベルナールの方から尋ねた。
「ミラベルの友人である貴殿の娘についてだが、高等部の卒業後はどうされるかお考えだろうか。私も高等部の3年生で、周囲の進路は色々と聞いているが、貴殿の娘のような立場は前例が無い故」
一人娘の進路を問われたブラウンは、即答せずにそれらしく考えるような仕草を見せた後、淡々と答えた。
「わたくしも前王陛下に倣って、娘の進路と結婚相手は、自由に選ばせてみましょうか。娘が国際結婚をして、王国で暮らすのであれば、退職後は王国で暮らすのも悪くありませんな。こちらの友人も増えましたし、娘もわたくしを心配しなくて済むでしょう」
「王国に住むのであれば、いつでも力になろう。貴殿の娘はミラベルの親友であるし、我ら王族にとって親友とは、得難い存在だ」
ベルナールは姉の親友であるコレットを一瞥した後、ミラベルとデイジーに視線を送った。
その先では、『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』の諺に則ってデイジーを抑えんとした貴族子弟に対して、ミラベルとデイジーが2人揃って仲良く責め立てていた。


























