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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
第三章 謎が謎を呼ぶ!?

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お掃除しよう!

 エルク殿下の私室へは使用人専用の魔法陣でしか入れないらしい。

 そこでの行動はすべて魔法で自動記録され、何かおかしな行動に出れば証拠として提示されるらしい。


「ごめんなさいね、ルルさんを疑っているわけではなくって」

「ええ……。いろいろ事件が起きていますものね。対策は打っておかないと、大変な事態になるのでしょう」

「そうなのよ」


 まずは執務室を掃除するという。


「その前に、これを預けておくわ」


 手渡されたのはドロップサイズの宝石がいくつも填め込まれている腕輪と指揮棒である。


「腕輪は魔法の掃除道具が収納されている魔技巧品なの。指揮棒のほうは掃除道具を操る物ね」


 魔技巧品――さまざまな道具に魔法が付与された便利アイテムである。

 作れる職人はごくごくわずかで、魔技巧品自体が貴重品とされている。


「今後、その腕輪と指揮棒はルルさんが管理してね」

「よろしいのですか?」

「もちろん」


 噂では魔技巧品一つに、最低でも庶民の家が一軒建つくらいの価値があるという。

 預けられた腕輪と指揮棒が、妙にずっしり重たく感じてしまった。


「では、執務室からいきましょうか」

「はい」


 エルク殿下の私室へ繋がる魔法陣は、鍵がかかった部屋で厳重に管理されているようだ。

 しかも、登録された者しか出入りできないようになっているらしい。


「まさか、使用人の行き来のほとんどが転移陣なのって、エルク殿下に言い寄るのを防ぐための対策でもあるのですか?」

「よく気付いたわね。実はそうなの」


 皆、どうにかしてエルク殿下の顔をひと目見ようと、待ち伏せしたり、あとを追いかけたりしていたという。


「魔法陣のおかげで収まって、今は比較的快適に暮らしているそうよ」

「そ、そうだったのですね」


 まさかエルク殿下に懸想し、気持ちを我が物にしたいがためにボースハイトが生まれてしまったのか。

 それともボースハイトが使用人達をエルク殿下に気持ちのすべてがいくように仕向けたのか。

 いくらエルク殿下が魅力的な人間だからといって、ここまで夢中になるのか疑問だったのだ。

 特に下級使用人であれば、主人の目の前に姿を現したら解雇になると聞いたことがある。

 食堂で給仕を行う下級従僕は別として、基本的に使用人達は主人の目につかないよう、隠密のように生きているのだ。

 もしも見つかったら最悪仕事を失う。恋というものは冷静な判断力を失わせる力もあるとは聞いているのだが……。

 この辺は当時の証言を集めて回るしかないのだろう。


 ミセス・ケーラーの導きでエルク殿下の執務室に転移した。

 そこはダンスホールのように広々としていて、大きな窓からはやわらかな日差しが入る快適そうな部屋だった。

 執務机の背後には天上まで届くくらいの本棚がある。一番上の棚にある本ははしごなどに登って取るのだろう。

 来客用のテーブルと椅子があり、大きな暖炉を囲む立派なマントルピースがあるだけの部屋だった。


 姿を消しているアンゼルムが、私のほうを見たあと、本棚のほうへと向かった。あっという間に本棚の上部へと登っていく。

 何か証拠がないか探してくれるようだ。


「本棚がどうかしたの?」

「あ、いえ、大きいなと思いまして。それはそうと、えーと、そのー、ごくごくシンプルなお部屋ですね」

「そうなの。エルク殿下は清貧を美徳とするお方で、贅沢な調度品などは売り払って、養育院に寄付してしまったのよ」

「はあ、すごいですねえ」


 床には一面絨毯が敷かれていたそうだがそれもすべて剥がし、地方の救貧院に寄付したという。


「本当に困ったお方よねえ」


 寄付するだけでなく、暇さえあれば各地を慰問して回っているという。

 話を聞きながら、エルク殿下の欠点はどこにあるのか、と思ってしまった。


 執務机にはペンやインクなどの文房具がきれいに整理整頓された状態で置かれていたが、使い込んでいるような感じだった。さすが、清貧を美徳とするお方である。


「エルク殿下は食堂以外で飲食されないから、そこまで汚れないのよねえ」


 朝、さんざん寝室で食べたり飲んだりしてきた私は、今頃テアがきれいに掃除をしてくれているのだろうな、とふと思う。同時に申し訳なくなった。


「さて、お喋りはこれくらいにして、掃除に取りかかりましょうか!」

「はい」


 まずはブラシがけをするという。


「青い魔石に触れながら、靴でとんとんと床を叩いてくれる?」


 言われたとおりにすると、腕輪と青い魔石が浮かんで床に魔法陣が浮かび上がる。

 召喚されるように、二十個ほどのブラシが現れた。


「そのあと、磨いて、〝一掃せよクリーン・アップ〟! って呪文を唱えて」

「わかりました」


 この魔技巧品を使うことによる魔力の消費はないらしい。その都度その都度、魔石を入れ替えて腕輪自体に魔力を補給するそうだ。


 集中したのちに、呪文を唱える。


「磨いて、〝一掃せよクリーン・アップ〟!」


 私が発した言葉に呼応するように、ブラシが淡く光って一斉に動き始める。

 凍った湖を滑るように、ブラシが床を磨き始めた。


「わ、すごい!」

「何度見ても不思議よねえ」

「はい」


 ただ、このままでは縦横無尽、無計画に清掃するだけなので、指揮棒で統率しなければならないらしい。


「指揮棒でブラシを指して動かすと、指示を飛ばすことができるの。やってみて」


 くるくる回るばかりのブラシを指揮棒で指し、端から磨いていくように動かす。

 するとブラシは指示通りに動いた。


「まあ、ルルさん、上手だわ! 指揮はけっこう難しくって、最初からできる人は少ないのよ」


 褒められたので嬉しくなる。

  その後、ワックスをかけ、仕上げに布巾で磨いたら床は見違えるようにピカピカになった。

 そのあとも窓を拭いたり、本棚の埃を払ったり、と魔法で清掃しておく。

 広い部屋だったが、魔法のブラシのおかげで三十分ほどで掃除が完了した。 

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