表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

幸せな日の打ち合わせ

またTwitter(現X)トレンド入りお祝いに番外編SS更新ですわよ!

しかも今回はトレンド1位行きました!話題にしていただきありがとうございます!


「俺と……レ、レミリアの、結婚式についてだが。魔国内では転移門を通じて招いた各国の大使と共に、城の大広間で式を挙げた後、パレードを行う、同時に街中では祝祭として国全体を盛り上げる、大まかに言うとこのような内容で良いな」

「その後の流れも、新婚旅行を兼ねて世界各国を周る……とざっくりまとめておきますか。それにしても兄さん。いい加減、レミリアさんと結婚するという事実に慣れてくださいよ」


 相思相愛となって結婚式の準備と計画を進めている段階だと言うのに、未だに言及する時に口ごもるのを弟に指摘されたアンヘルが少し決まりが悪そうに目を逸らした。

 好きな女性の前で頼りない所を見せてしまったのではと内心焦るアンヘルには気付かないように、レミリアは少し困ったように笑っている。


「やっぱり……あまりにも大仰すぎるのではないかしら? 魔国の皆さんも祝ってくださるし、結婚式はぜひ挙げたいけど、諸外国から人を大勢呼び寄せるとなると……復興もまだ終わっていないと言うのに……」

「いやいやレミリア様。だからこそ華やかに、盛大に行う必要があるではないですか」


 横から口を挟んだのはレミリアの騎士であり親友でもあり、彼女の熱心な信望者でもあるスフィアだった。その目は真剣だ。


「そうですよ。諸外国には、この国の王と王妃を、そして……復興した魔国とそこで暮らす魔族やこの国の技術や資源をしっかり見てもらわなければなりません」

「そうね。この機会にレミリアさんが開発した新技術をばっちり売り込みましょう。結婚式をきっかけに今まで公式には取引をしていなかった国も招けるし。これをきっかけに、転移門の設置を希望する国も出てくるでしょうね」

「そうなればより魔国の力も強まります。レミリア様とアンヘル様には、その舞台にふさわしい盛大な結婚式を挙げてもらわなければ」


 クリムト、ミザリー、スフィアが熱を上げて結婚式について語る様子に、レミリアは気圧されたようだった。


「そうね、たしかに……外交的な意味もあるし、諸外国から人々を招待するのは必要よね」

「そうでしょう」

「魔族達には魔国の復興を、外国からの使者には魔国の力を示す、大切な初めての式典になりますからね。国を挙げて祝いましょう」

「魔国内でもかなりの経済効果が見込めますし」


 レミリアの衣装のお色直しは何回するか、アクセサリーは何セット用意するか、ぜひドレスをデザインしたいという者達が何人もいるらしい、スフィアとミザリーが興奮したようにそんな事を話している。


「けど、新婚旅行の行き先はもう少し絞ってもいいと思うのだけど。ひとまず、国交が既にあるカズドゥル国を含めた数か所にするとか……」


 レミリアは、親友となった第二王女サラスティリのいるドワーフの国の名前を挙げた。それを聞いて他の4人はやれやれ、といった表情を浮かべる。


「レミリア、国庫の事を考えての事だとは分かっているが、これは外交の一環だと言ったではないか」


 でもアンヘルは、そんなレミリアの事が愛しくてたまらない、と分かる優しい目を向けた。


「そうですよ。レミリアさんはご自分の事になると視野が狭くなって、控えめになっちゃうんだから……」

「結婚と言うきっかけで国の元首夫妻として訪れ、魔物資源や、転移門などの技術も売り込める。むしろ、世界中を隅々まで周るべきですよ」


 平和を好むレミリアにはあえてこの場で挙げないが、直接アンヘルが諸外国を訪れる事で「魔王」の力にじかに晒し、魔国と敵対する選択肢を奪う。いや、敵対しようという発想すら持たないように理解させる、という意味合いもある。クリムトは、ブルフレイムの王城に現れたアンヘルの魔力の圧に、あちらの国の貴族達の心が屈した時の事を思い出した。


「たしかに、そう言われると重要な外交の場よね……! そうだわ、利用できるならどんどん使うべきね。でも削れる所は削りましょう」


 アンヘルは、魔国のため、と言われた途端に豪華な結婚式や新婚旅行に前向きになったレミリアに、さらに愛おしさを強く感じた。


「レミリアが望む形にすればいい。だが外交の場というだけでなく――俺がどれほど自慢したい花嫁を得たか、どんなに幸せものか、世界中に知らしめたいと思っているのも分かってくれ」

「……もう、アンヘルったら」


 まっすぐ好意を伝えられたレミリアは、恥ずかしそうに、しかしとても嬉しそうに笑った。


「あら、珍しいわ。兄さんがこんなに堂々と思いを伝えるなんて……」

「しっ! ダメですよ姉さん」


 自分達の兄が、素晴らしい伴侶を得て幸せそうにしている様子を見ながら、魔族の姉弟はニマニマと笑う。


「あの……俺がこのような場にいてもいいんですかね?」

「何を言うんだソーンさん。村の代表だろう。結婚式にはルグラーツェからも大勢参加するんだから、話し合いにいてくれないと困るじゃないか。さて、それでは具体的な話について進めよう。私は諸外国向けの外交の場と、魔族を中心とした身内の場と、式はともかく宴は何日かに分けて開催するべきと思うんだが……」


 緊張した様子で小さくなっていたソーンをスフィアがさりげなく制し、結婚式についての話し合いは、楽し気な空気のまま続いていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ソーンさんが私の推しです。まぁ1番の推しはレミリア様ですけど、ソーンさんには幸せになって貰いたいです。
エピローグ読みました!泣きました。これで本当にコミカライズは終わりなんですね。寂しいな。 アニメ化されるとのこと。おめでとうございます。楽しみにしています。
アニメ化おめでとうございます! 声優含めて楽しみだわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ