私は妹にブラジャーを買ってあげたい(いづみside)中編
妹に「初めてのブラ」を買ってあげたい……。
私は妹・貴音ちゃんを連れて郊外のショッピングモールにやって来た。
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ショッピングモールは食料品や雑貨など様々な店舗が軒を連ねており、もちろんファッション関係も充実している。
「貴音ちゃん……なっ、何か欲しい服とかある? あったらさぁ、その……遠慮しないで言ってね! お姉ちゃんが買って……あ、あげるよぉ~!」
実は今回の買い物のために、私が高校時代からバイトして貯めたなけなしのお金を用意していた……のだが……
継父である延明さんに、貴音ちゃんを連れて買い物に行くと話をしたら「娘をよろしく」と、思わずドン引きしてしまうような大金を頂き財布がパンパンに膨れ上がってしまった。なので緊張して声が震えている。
「ん~、特にないのです」
「えっ、そ……そう? じゃあお姉ちゃんが先に服買うね」
高校は制服だったので、私は私服というものを買った記憶がほとんどない。だが大学は私服通学なので、服のバリエーションが少ない私は非常に困っていた。
一週間ローテを維持するのがやっとで「えっ、またそれ着てるの?」と友人からツッコまれそうだった。なので今回の臨時ボーナス(?)は非常に助かる。
でもこの大金を自分のことばかりに使うのはダメだ。これは妹の服、そしてブラを買うためのお金……とはいえ私は普段から男が着るようなカジュアルで、しかも安い服しか着ていない。私はファストファッションブランドの店に行くとセール品を大量買いした。
そういや妹の私服はいつも高級そうなお嬢様っぽい格好だ。どこで買っているんだろう? すると……
「あっおねえちゃん、やっぱり貴音も……服が欲しいのです」
と言って妹が持ってきたのは、スポーツブランドのロゴが入ったロングTシャツとパーカー……いわゆる「スポーツカジュアル」だ。しかもセール品?
えっおいおい! この店で買うのかい? 今貴音ちゃんが着ているハイソな服より格段に安っぽい格好なんだけど!? この子は何で急にこんな服を買いたがったのだろうか……意味がわかんねぇ!
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私は妹とモール内の通路を、まるで買い物デート中のカップルのように歩いていた。手を繋ぎたいところだが、私の両手は買い物袋でふさがってそれができない。
――さて次は……いよいよブラジャーか。
ショッピングモールには下着専門店がある。おそらく妹は、入り口にまで高級そうな下着が押し寄せている専門店だと怖気づいて中に入らないかもしれない。
もちろん総合的な衣料品店でもブラジャーは売っている。だがそういう店では試着できない場合もある。やはり最初はちゃんとしたお店で採寸と試着をして、ブラが良いモノだと認識して欲しい……人生初のブラで不快感を持たれたら大変だ。
下着専門店の前を通り掛かったとき、私は「たまたま」思い出したかのような感じで妹に話し掛けた。
「あっ! そういえばお姉ちゃん、下着も欲しかったんだ……貴音ちゃん、一緒についてきてくれる?」
「えっ、あっ……貴音は……用がないのでゲームコーナーに行ってるのです」
うわー、ちょっと興味がありそうな素振りを見せたけど……やっぱりついてきてくれないかぁ! 仕方ない、私だけにしか使えない能力を使うか……。
「貴音ちゃん、お姉ちゃん今からブラ買って『試着』するんだけど……似合ってるかどうか見てくれない?」
すると妹は満面の笑みで
「見てあげるのです♥」
おいやっぱコイツおかしい! まぁ百合にシフトしてくれるのはうれしいが……何か方向性が間違っているような気がする。
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「いらっしゃいませ」
上品な感じの店員さんに声を掛けられ妹は緊張しているようだ。でもひとりで下着専門店に入るのは不安だろうが「姉に付き合わされた」という大義名分があるので少しは緊張が和らいでいるだろう。
私のそばから離れない妹は、色々なデザインのブラジャーをきょろきょろと眺めている。ここで下手に声を掛けると逃げ出しそうなので、私は黙って妹の様子を横目で見守っていた。
私はブラジャーを三枚手に取ると、店員さんに声を掛けてから
「さてと、これでいいかな? 貴音ちゃん、試着室に行くよ」
「はい♥」
試着室に向かった。妹はメッチャうれしそうだなぁ……まぁいいけど。
妹と一緒に試着室に入り、私が上着を脱ぎブラを外すと……
「お、おねえちゃん……貴音はおっぱい触りたいのです」
「えっと……公共の場所でそういうのは止めような」
「えっ!? お触り禁止なのですか?」
たぶん意味わかってないと思うけど……そういう言葉は使わないように!
今日は私のおっぱいが主役じゃないぞ……主役は貴音ちゃんのおっぱいだよ♥
「貴音ちゃん、知ってる? ブラの着け方でおっぱいは大きく見せられるんだよ」
「えっ、本当なのですか♥」
妹が食いついてきた。いいぞ、そうやって興味もってくれ……
「こうやってね、わきのお肉をカップに入れるように……」
「ほ、本当なのです! さっきと全然違うのです♥」
試着の傍ら、私は自分のおっぱいを使ってバストアップの方法を教えた。でも私は普段絶対にこんなことをやらない……むしろ小さく見せるようにしている。これも妹に興味と自信を持ってもらいたいという願いからやっているのだ。
それにしても……さすが下着専門店。普段私のサイズ(F75)は実店舗でなかなか見かけないけどここにはあるじゃん!
ただなぁ~少ないんだよ。かわいいデザインとか……だから私はいつも通販でブラを買っている。
「すみませーん」
私は上着を着てから店員さんを呼ぶと、
「これの色違いってありますか?」
「確認しますね、しばらくお待ちください」
「お願いします。あっ、それとなんですけど……」
私は店員さんに耳打ちをすると、店員さんはニコッと笑顔を見せながら
「そちらもご用意します。その前に妹さんのサイズを測らせてくださいね♥」
と言ってメジャーを用意し、隣にいた妹の前に立った。
「えっ?」
私と店員さんのやり取りを他人事だと思っていた妹は、店員さんが近づいたことで目が点になっている。私は妹に優しく声を掛けた。
「貴音ちゃん……貴音ちゃんもブラ着けてみる?」
「……へっ!? ふぁっ?」
私からの「奇襲攻撃」に妹は動揺していた。
貴音なのです。次回ついに貴音のバストサイズが暴かれるのです!
……興味ないと言ったのは誰なのです?




