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クラス一の美少女は主人公が嫌いで、ハーレムラブコメ被害者の俺と友達になりたがっている  作者: リーズン


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5話 去年から、あなたを知っていた。

「……多分ね。私、天城くんが言った通り限界だったんだと思う。二人のことは大好きなのに時々どうしようもなくワァーって、なる時があるの。だけど……そんな自分もすごく嫌で……だから、さっき天城くんが言ってくれた言葉がすごく嬉しくて……それで泣いちゃった」


 幼かった頃、蒼月さんは今と違い、この力のことを特に隠してはいなかった。


 言葉と思いの違いを理解して、なぜ嘘を付くのか? そんな疑問を普通に投げ掛けてしまう子だった。


 周囲の大人は気味悪がり、友達からは嘘つき扱いされる。


 そんな中で唯一自分の言葉を信じて、そばに居続けてくれたのがあの二人だったらしい。


「小学校に上がってからは、嘘を付く人や嫌な感情を持ってる人が多くなって、私は二人以外のことを信用出来なくなって……うん。依存……していたんだと思う」


 子供の頃とは違う。


 学校という閉鎖的なコミュニティの中、その手の感情の成熟は存外早い。


 場合にもよるが子供同士なら純粋という訳では無いのだ。


 蒼月さんは親友二人のことは大好きで信用している。


 でも、もしもこの力を疎む時が訪れたら、その恐怖は考えないようにしていても、常に蒼月さんの心の中に潜み続けた。


「怖かった。私が気が付かずに二人を傷付けて、二人が私から離れたらって、ずっとずっと気が付かないフリをしていたけど、たまにどうしようもなく不安になるの」


 依存している人間がもしも自分を見捨てたら、その考えは俺が思うよりもずっと恐ろしいのだろう。


「それに……子供の頃なら違ったけど、中学に上がれば当然人との関わりは増えていくよね? 私はそれも怖かったんだ」


 小学校、中学校を経て高校生へ。


 部活、委員会、そうでなくても普通なら色々な繋がりが出来あがる。


 それは当然親友の二人もだ。


 しかし蒼月さんは違う。


 二人に依存し、それ以外を排除してきた蒼月さんにはそれがない。


 二人は親友だ。


 それはどれだけ友達が出来ても変わらないだろう。


 だがそれでも当然蒼月さんとだけずっと居る訳にはいかない。


「だから、私も頑張ろうと思ったんだ」


 その結果が俺。


 どんな基準で選ばれたのかは分からないが、二人に頼らない独自の繋がりを求めた、男友達という繋がり。


 ここで同性の女子ではなく、男の俺を選んだのものしょうがない。


 校内の女子はそのほとんどが小鳥遊に好意を抱いている。


 そしてその小鳥遊の好意を一身に受けているのが蒼月さんだが、本人から聞く限り蒼月さんに一切その気はない。


 あれは人前だから恥ずかしがっていたとかじゃなく本気で話すらしたくなかったのだそうだ。


 それがまた、小鳥遊に好意を抱いている女子には面白くないのだろう。何か用事がある時でも、明らかな敵意を抱いているのは傍から見ていて分かるほど。


 本人にその気がないのもあるが、学校でも蒼月さんと日常的な会話をしているのは親友である深見さん武本の二人だけなのだ。


 ここで余談だが深見さん、武本さんの二人は男子、女子共に人気が高い。


 蒼月さんにも引けを取らない容姿に、蒼月さんには無い社交性。誰にでも分け隔てなく接する分、二人は蒼月さんよりも人気が高い。


 そして何より小鳥遊と仲は良いが、明らかに好意がないように見えたのも大きいだろう。


 まあ、それでもハーレム要員として数えられているが。


 小鳥遊に好意を抱かれているという一点だけで、二人は蒼月さんと大きく違い女子からも受けが良い。


「……そっか」


 そこに込められた思いの深さも、そこまでの苦悩も知らない俺にはそんな言葉で受け止めるしかなかった。


 残念ながら俺では気の利いた言葉など出てこなかったのが本音だ。


「うん、だからね。さっきも言った通り、私は天城くんの言葉がとても嬉しかったんだよ。あの言葉で私は、自分でも気が付かないようにしていた事を受け止める勇気が出たんだ」


 とても大事なモノを抱きしめるように蒼月さんが言葉を紡ぐ。


「天城くんからしたらなんて事ない言葉だったかもしれないけど、あの言葉で私は勝手だけど救われた気になれた。誰にも言えなかった汚い部分を認めてもらえて、そのうえで私が勝手に苦しんでいたモノをわかってもらえた気がしたから」


 きっと俺にわかったのは半分もない。


 それでも蒼月さんはとても救われたと言う。


「あっ、でも一つだけ言いたい事があったんだった」


「えっ?」


「天城くんはさっき、自分のことを逃げ場所って言ったけど違うよ。確かに全くかって言われたらハッキリそうとは言えないかもしれないけど、私は本当に天城くんと友達になりたかったんだもん。二人の代わりとかじゃ絶対ないんだから、それだけは誤解しないでね?」


「は、はい!」


 圧に押されて思わず敬礼付きの返事をしてしまった。不覚。


「でも、それで勝手に泣いちゃって天城くんを困らせちゃってるんだから、私ダメダメだね」


「そんなことないよ。それだけ蒼月さんにとっては大事なことだったんだろうし」


 今日、初めて声を掛けた相手の言葉で救われた気になってしまうほど。


「ッ〜〜、うん。やっぱり友達になったのが天城くんみたいに優しい良い人で良かった……」


 と、ボソリと呟いた蒼月さん。


 その一言にどうしても言いたかった事を思い出した俺は、言っていいものかとと思いながらもそれを口にする事にした。


「あー、あのさ、蒼月さん」


「どうしたの天城くん?」


「いや、えーと、うん。俺も一つ言いたいんいんだけど、蒼月さんはその力の事を信頼して、俺に話し掛けて、ここまで来たんだろうけど、それを信じすぎるのは良くないと思う」


 確かに良くも悪くも凄い能力だとは思う。


 しかしそれが感覚の拡張から来るものなら、本人の意思や感情、状況や相手によっては通じないこともあるだろう。


 例えば独特なフェロモン。


 本当にあるかどうかは知らないが、嘘を付いた時、蒼井さんにだけ嗅ぎ分けることが出来るフェロモンが出ているとする。


 しかし、蒼月さん自身が相手を信じたいと思ったり、体調不良だったり、なんらかの要因で相手が嘘だと認識してなかったり、そういった原因でそれを見抜けない可能性もある。


 まあ、これは一例だが絶対ではないはずだ。


 そう思ってお節介だとは思いつつ一応言ったのだが、気が付くと蒼月さんはプリクと頬を膨らせて、可愛らしく俺のことを睨んでいた。


 あ、あれ? 怒ってる?


 義妹の奈々や幼なじみの結由にはよく説教臭いとか、しつこいと文句を言われていたがまたやってしまっただろうか……?


「……天城くん」


「は、はい!」


 先程とはまた違った圧を放つ蒼月さんの声に、自然と正座になり背筋をピンと伸ばす。


「確かにこれのことは判断材料とかにしてるし、 天城くんが言ってくれたことは考えもしなかったからありがたいよ」


「そ、そう?」


 それならなんで怒っているのだろうか?


「でも私、これだけを頼りにして男の子の家に着いて来るわけじゃないよ。私はちゃんと天城くんのことを知った上で信用してるから家まで来たんだから!」


 あっ、そういう事か。


 確かにさっきの言い方だと、力で良い人と判断したらホイホイ家に上がり込むようにも聞こえる。


「ご、ごめん」


 これには本気で反省だ。


「わかってくれたなら良いけど。でも、そうだよね。天城くんからしたら全部が突然だからそう思っても仕方ないよね。その辺は紛らわしくてごめんなさい」


「いや、俺も悪かったから」


 うん。マジで。


「えっとね。気持ち悪いとか思われちゃうかもだけど、私、本当に天城くんと友達になりたくてずっと見てたんだ」


「いや、そうは思わないけど、なんでそんなに?」


「私が初めて天城くんを知ったのは去年なの」


「えっ!?」

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