星のマフラー
雲より高く、お空より高い場所……ここは星の国。そして星達はここで何をしてるのかというと?
「王子様、少し休んでください!」
「あと少しだからやらせてくれ!」
王子様の無茶を止めていました。彼はかれこれ3日寝ずにある物を作っていました。
「マフラー早く作られたと!」
「ダメです。少し休んで下さい!」
そう……王子様が作っていたのは天の川で取れる糸を使ったマフラーです。これは人々の縁で結ばれた糸、そしてその糸がもう必要ないくらいの縁で結ばれた糸は天の川を下っていきます。その糸で作られた衣類には恋愛成就の効果もありました。
「……分かった。」
王子様は渋々部屋に戻ってベッドに横になりました。
(早く作らないと……)
王子様は焦っていました。もうすぐクリスマス、そして王子様と女の子の出会った日がその日だからです。
「今寝てて大丈夫なのだろうか……」
しかしそんな疑問も疲れには勝てず……王子様は眠りに落ちてしまいました。
夢の中で王子様は天の川にいました。
(相変わらず綺麗だなぁ……)
2年前もここにあの子と来ていた場所だった。あの時と変わらず星たちが宇宙へと向かって流れていました。
「夢の中なのに……」
しかしその中の1つに一際目を引く星がありました。王子様は天の川に入りそれを掴みに行きます。
「すごい……キラキラしてる……」
それは星というにはあまりに小さく、まるで砂のようでした。
「……これ……もしかして……」
次の言葉を発する前に王子様は目を覚ましてしまいました。
「おはようございます。よく寝られましたか?」
「うん、ちょっと天の川に行きたいけど行ってもいい?」
「構いませんよ。」
ということで、王子様は1人で天の川にきました。冬の天の川はとても冷たく入る事はとてもできません。ですが、それは川岸に集まっていました。
「これだ!」
集まっていたのは星屑でした。ひとつひとつがキラキラしていたのです。それを王子様は複数あつめて持ち帰りました。
「これ……糸に混ぜれるかな?」
「星の砂ですか?出来ますが……もう一度縫い直さないといけませんよ?」
「構わない!あの子に最高のプレゼントをしたいから!」
王子様の鬼気迫る顔に従者の方は何も言えませんでした。
「わかりました!私も全力でお手伝いさせていただきます!」
こうして3日間2人は徹夜をして編み上げたのは世界に1つしかない星のマフラーでした。そして次の日の夜王子様はあの女の子に会いに行きました。
「やー!久しぶり!うわっ!」
なぜ王子様が驚いたのかと言うと女の子は王子様を見るや急に抱きしめたからです。
「ばか!すっごく心配したんだから!」
これには流石の王子様も苦笑いしか出来ませんでした。
「ごめん。でも、君に渡したいものがあったんだ。」
「……前に言ってたの?」
「うん……少し緊張するけど……これ!」
王子様は女の子の首にマフラーを巻いてあげた。
「マフラー!?それにこれ……キラキラしてる……」
「うん!糸に星の砂を混ぜたんだ。」
「星の砂?」
「そう!天の川に行った事があるでしょ?あの星々が少しずつぶつかっていてそのかけらが星の砂!そして今回これを糸に練り込んだんだ!」
「そうなんだ……」
「うん。それでね……」
王子様は少し緊張した顔で言葉を絞り出します。
「大人になったら僕のお嫁さんになってくれませんか?」
「……私でいいの?」
「君でなくちゃダメなんだよ!」
少し待ってから女の子は答えました。
「いいよ!でも、まずは……恋人からね!」
そう言って女の子は王子様の手を握りました。その瞬間キラキラと流れ星が夜空へ流れ始めたのです。
「……いこうか!」
「うん!」
そうして王子様は女の子の手を引いてキラキラと流れ星が降る夜空へ飛んでいきました。




