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俺が魔法少女になったら  作者: 楠木あいら
魔法少女かりん
22/28

魔法少女としての戦闘

 ニワの願いに『俺でよければ……』という事で、俺達はいつもの (?)の河川敷に向かい、犬耳と尻尾を持つ魔法少女ココに変身した。


「それで、何をすれば強くなれるの? 教えなさい」


 魔法少女になったかりんは、両手を腰にあて強気モードだ。


「さて……」


 ……。さて、教えると言ったものの、どうすればいいんだろう?そうだ、今までの強敵の時を思い出してみよう。


「闇の副将軍戦は……」


 惨敗だった……。

 えーっと、副将軍の片腕といわれた武器との戦いがあったな、あれは……苦戦をしいられたが、偶然現れた散歩中の犬を守ろうと思ったら、いつの間にか勝ったんだっけ。


「……」


 じゃあ精鋭部隊の時は……あれはハスキー犬を追いかけてて。


「……」


 俺は重要なことに気づき、地面を見つめた。


「どうしたのよ。さっきから独り言しか言ってないじゃない」

「ごめん。私が (魔法少女なので女の子口調)強くなったのは犬っ子大好き暴走によるものだったの」


 ひゅるると風が吹いたが、しばらくして かりんはポンと手を叩いた。


「……。それって考え方によるものって事?」

「それ、いけるんじゃないかな、かりん。魔法少女はピュアパワーによるもの。ピュアな力があれば何だってできる」

「なるほど。戦って、一番のアイドルになるって、考えれば、いつの間にか戦いができるってことね」

「答えがわかったところで、さっそく実戦だよ」


  いつの間にかニワはスマホになった (事件が発生すると、どの相棒もスマホになるらしい)ニワを耳に当てるとかりんは瞬間移動で姿を消した。


「……」


 残された俺は新たに吹く風を感じた。むなしいという空気を。




 しかし、現実は甘くなかったようだ。

 かりんが消えてから、数分とたたずスマホに戻ったメニは援護要請の通信と報告した。




 初となる瞬間移動した先はコンビニ前の駐車場で大型のモンスター、トロールがいた。鼻や耳が大きく醜く、汚れた灰色の肌にボロボロの服を身にまとっている。


「……」


 トロールを前にしたかりんは、予想しなかったモンスターにただ、見つめることしか出来ないでいた。

 そんなかりんにトロールの棍棒が振り下ろされる。

 飛び出した俺はかりんを軽く突き飛ばし、肉球グローブを装備した両手で受け止めた。


「ぐうっ」


 さすがに棍棒を振り回すトロール。かりんを守るらなければと頭になければ、この一撃で地面に埋め込まれたかもしれない。

 それほと魔法少女の持つピュアパワーという存在がすごくて、トロールの力がいかに恐ろしいかだった。


「ニワ、これ以上かりんがいたら危険だ。安全なところに移動して」

「わかりました。けん、ココさん気をつけてください」


 かりん達がいなくなったのを確認してからトロールを向き直った時、トロールは棍棒を振り下ろすところだった。

 危機回避の本能が働いたのと、魔法少女の力がなければ今頃頭上から直撃していただろう。移動して、足を地面に着地した時、衝撃と大きな音がした。


「うえっ」


振り下ろした地面は1メートルほどの亀裂ができていた。


「動きが早すぎる」


 ハイジャンプしてグローブを振り下ろしでもしたら、野球やバトミントンのように打ち返されるだろう。


「ならば」


 俺は身をかがめて跳ぶようにトロールに接近。


「懐に飛び込んでからの、ホーリーはぁっ」


 体が大きなモンスターの場合長接近戦は苦手だろうと考えだったが、棍棒の持たない手であっさり胴をつかまれた。トロールにしては大きな手と魔法少女の小さな体では片手で捕まえられる。


「フガァァァ」


 トロールはちょこまか動くネズミか虫のような生物をどう処理しようか俺を見つめていた。このままでは握りつぶされるか、棍棒の餌食になるかだ。


「……マズイかも」


 とはいえ、回避方法はないかと辺りを見回したとき、店から出てきた野次馬が目に入った。弁当以外にない薄茶色の平べったい四角い袋を持っている。


「そこのお兄ちゃん達、どっちでも良いから、お願い、助けてっ。そのお弁当をトロールの足元に投げて。助けてくれたら、何でもするから」


 『お兄ちゃん』なのか『何でもするから』なのか、それともココの姿が良かったのかはわからないが、指示に従ってくれた。2人とも


「フガ?」


 トロールは足元に飛んできた物体に目が言った。それが食べ物だと嗅覚 (多分)が捕らえたとき、頭のよろしくないトロールは武器と獲物、両方頬リ投げ、食料を手に取る。


「フガッフガッ」


 嗅覚通り、いやそれ以上の食べ物と認識したトロールはそれを手づかみで口にほおばる。

 精神を集中して放つ『光の輪』を放つのに十分すぎる時間だった。


「ふう」


 勝利のポーズをとった俺は視線を感じた。


「……」


 俺は笑顔で弁当を失った2人の男達に走り寄る。


「お兄ちゃん達、助けてくれて本当にありがとう」

「で、何でもしてくれるんだよな」

「お礼はちゃんとしないとね」


 サラリーマンと大学生らしき男はずいっと接近してきた。


「も、もちろんだよ」

「じゃあ……その尻尾、触らせてくれ」

「俺、その犬耳、触っていい?」


 ……助かった。


「いやあ、子供の頃にかってたコロとそっくりな尻尾してて、ほら、尻尾って撫でさせてくれないじゃない」

「あなたもですか。俺も犬を飼ってたんですよ」


 ……。犬っ子ラブな奴に悪い奴はいないようだ。


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