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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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93話 過去の深淵への潜入

セバスチャンは、瀕死のレオンハルト殿下と本物のリリアーナを抱え、杖をつく東條(トウジョウ)を先導させながら、帝都・(アカツキ)の裏路地を縫って進んでいた。負傷したレオンハルト殿下は意識を失っているが、本物のリリアーナの微かな息遣いが、まだ希望があることを示していた。


「この先だ、零号」


東條は、荒廃した古いポンプ場の陰にある、錆びついた金属製の扉を指差した。扉には、陸軍省の厳重な封鎖印が貼られている。


「ここは、旧陸軍中央研究所の極秘輸送口だ。現在は完全に忘れ去られている」


セバスチャンは、東條が真実を語っていることを、その場所が発する冷たい技術の気配から感じ取った。


「封鎖は、お前の知っている手段で破れるか?」セバスチャンは冷徹に問うた。


「あの頃のわしの設計には、必ず裏口がある。セキュリティは、わしが関わった初期の論理パターンだ。解読は可能だ」


東條は、自らの罪の結晶である技術を前に、贖罪の念を込めて、古びた暗証番号入力パネルに手をかざした。彼の震える指が、複雑な初期コードを正確に入力していく。それは、知神アザトースの現在の合理的な論理とは異なる、古い、不確定な論理だった。


「…成功だ」


東條が呟くと、重厚な金属の扉が、軋む音と共にゆっくりと開いた。開かれた先は、長く、湿った地下への階段だった。


「気をつけろ、零号。この先にいるのは、単なる憲兵ではない。アザトースの知識に触れ、狂気に陥った技術者たちだ。彼らは、自分の研究を守るためなら、手段を選ばない」


封鎖された知識の監獄

セバスチャンは、東條に指示し、階段の奥から聞こえてくる異音を警戒した。彼は、レオンハルト殿下と本物のリリアーナを壁の陰に隠すと、単独で先へと進んだ。


階段を降りた先に広がるのは、蒸気と冷却液の匂いが充満する、広大な地下施設だった。床には古い配線が這い、壁には無数の警告灯が点滅している。ここが、大皇国の非人道的な力の源泉、そしてセバスチャン自身の出生の地、旧陸軍中央研究所の極秘部門だった。


「懐かしいだろう、零号」


空間の奥から、乾いた笑い声が響いた。そこには、数名の白衣をまとった男女が立っていた。彼らの瞳は、狂信的な光を帯びている。


「貴様は、記録から抹消された失敗作。なぜ、今になって、この神聖な知識の監獄を汚しに来た?」


彼らは、東條の初期の知識を受け継いだ、人体強化技術の狂信者たちだ。彼らは、アザトースの提供した「秩序」よりも、自らの研究こそが究極の合理性だと信じている。


「私は、あなたたちの非人道的な秩序を終わらせに来た」


セバスチャンは、怒りを表面に出さず、冷静な殺意を込めて言った。


狂信的な技術者たちは、セバスチャンめがけて、実験用のレーザー銃を構えた。彼らの身体にも、軽度の人体強化が施されており、その動きは素早い。


「排除しろ!この零号を排除し、知識のプロトタイプを守るのだ!」


セバスチャンは、主の仲間を救う唯一の希望を守るため、そして自らの過去と決着をつけるため、再び戦闘を開始した。

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