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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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88話 暁の鬼と時の防人

クロード王子とリリアーナが時の特異点へ転移するのと同時、レオンハルト殿下と本物のリリアーナは、帝都・(アカツキ)の郊外で、軍の追撃部隊と対峙していた。


レオンハルト殿下は、本物のリリアーナを庇いながら、亡き友ライオネルの剣を構えていた。彼の目の前には、黒鉄元帥と白鷺文官長が送った**「帝国双璧」**と呼ばれる二人の最高幹部が立ちはだかっていた。


一人は、全身が不自然な筋肉の隆起と黒い血管に覆われた巨漢の陸軍大将。もう一人は、切れ味鋭い日本刀を構える、冷静な眼差しの内務省・特務局長だ。どちらも、人体強化を極限まで施された、大皇国の「秩序」の守護者だった。


「裏切り者ども。貴様らが、陛下の秩序を乱す最後のノイズだ」


陸軍大将の口から漏れる声は、機械的に響いた。彼は、その巨大な拳を地面に叩きつけ、大地を揺るがした。


「命を賭すのは、我々だ」


レオンハルト殿下は、剣を鋭く閃かせた。彼は、アザトースの知識を得ていないが、友への誓いと、人間としての怒りを力に変えた。


戦いは、瞬時に地獄と化した。


陸軍大将の拳は、鉄のハンマーの如く重く、レオンハルト殿下は防戦一方となる。剣で受け止めるたびに、骨が軋む音が響いた。


「ハァッ!」


特務局長が、音もなくレオンハルト殿下の背後を取った。彼の刀は、合理的な軌道を描き、レオンハルト殿下の脇腹を深く切り裂いた。


「ぐっ!」


レオンハルト殿下の白い軍服が、鮮やかな赤に染まる。


「レオンハルト殿下!」本物のリリアーナが叫んだ。


「大丈夫です、リリアーナ様!時を稼いでください!」


レオンハルト殿下は、血を吐きながらも、すぐに体勢を立て直した。しかし、彼の傷口は深く、もはや長くは持たない。


「その生命力、無駄だ」


陸軍大将は、冷酷な目で、レオンハルト殿下の膝を蹴り上げた。膝の骨が砕ける鈍い音が響き渡り、レオンハルト殿下は、体勢を崩して地面に倒れ伏した。


「秩序を乱す異物は、こうして非効率的に排除される」


大将は、容赦なくその巨体をレオンハルト殿下の胸に落とした。レオンハルト殿下は、苦悶の声を上げ、口から泡を噴いた。


「もう十分だ。時の導き手」


特務局長は、刀を本物のリリアーナに向けた。


「貴様は、アザトース閣下の論理を乱す危険な矛盾だ。ここで、貴様の運命を終える」


本物のリリアーナは、レオンハルト殿下の苦闘を見て、覚悟を決めた。彼女は、時の導き手としての力を解放した。


「私は、あなたたちに屈しない!」


彼女の体から放たれた微かな時の力が、特務局長の刀の軌道をわずかに遅らせた。しかし、その一瞬の遅延も、彼らの人体強化された速度の前では、決定打にならない。


特務局長の刀は、本物のリリアーナの腹部を切り裂いた。彼女は、血を流しながらも、その場に耐え、最後の力を振り絞った。


「私の命と引き換えに…クロードとリリアーナの運命を繋ぐ!」


彼女は、自らの魂の力を使い、時の境界線へ、クロード王子への最後のメッセージを打ち込んだ。


レオンハルト殿下は、砕けた体で、その光景をただ見つめることしかできなかった。友への誓いを果たせず、愛する人を目の前で失う――彼の心は、絶望の淵に沈んだ。

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