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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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86話 混沌の取引と最終の扉

船室での千鶴との取引が成立した後、クロード王子は千鶴の杖を手に、最終作戦の準備を始めた。彼の冷徹な知性は、千鶴の混沌の力を利用するための、緻密な計画を立てていた。


「千鶴は、究極の不確定な物語を望んでいる。ならば、我々が、予測不能な行動を取ることを、大皇国とアザトースに見せつけなければならない」


クロード王子の言葉に、レオンハルト殿下が顔色を変えた。


「予測不能な行動とは、殿下。まさか、再び帝都に戻るのですか?」


「ああ。アザトースの論理は、一度失敗した場所には戻らないと予測する。その合理性の逆を突く」


クロード王子は、レオンハルト殿下に、詳細な指示を与えた。


「レオンハルト。船を南下させ、別の港で下船した後、単独で帝都・(アカツキ)に戻れ。そして、我々が捕らえた技術官僚を、内務省の前に引き渡し、『クロード王子が最後の力を使い果たし、自首した』という偽の情報を流せ」


レオンハルト殿下は、その大胆な陽動に驚きながらも、その合理性を理解した。


「承知いたしました。アザトースと大皇国の注意を、帝都に引きつけます」


「リリアーナ(本物)。お前は、レオンハルトの護衛として、彼と行動を共にしろ。お前の時の導き手としての存在が、アザトースの論理に誤った確信を与える」


「理解したわ。私が(おとり)となることで、アザトースは『捕獲作戦が成功した』と判断するでしょう」


本物のリリアーナは、自らの危険を顧みず、頷いた。


究極の不確定性

レオンハルト殿下と本物のリリアーナが陽動のために出発した後、クロード王子は私と二人きりになった。私たちは、船室の簡素なベッドで、運命の扉が開く合図を待った。


「クロード王子。本当に、この陽動で大丈夫ですか?アザトースは、すぐに嘘を見破るのでは…」


私の不安を察し、クロード王子は私の手を取った。


「アザトースの知性は、合理的な情報処理に長けている。彼にとって、『人類の敵が自滅・自首する』という筋書きは、最も効率的で穏便な解決だ。彼は、この情報を受け入れ、**『秩序が回復した』**と判断する方に、論理的に賭けるだろう」


彼の冷徹な分析は、彼の愛を信じる私でさえ、背筋が寒くなるほど正確だった。


「そして、千鶴も、この陽動を支援する。彼女は、大皇国という強大な敵が、『クロード王子を捕らえた』という偽りの満足に浸る姿を、最高の皮肉として楽しむだろう」


クロード王子は、千鶴の杖を空に掲げた。杖から放たれた光が、私と彼を包み込む。


「今だ、リリアーナ。本物のリリアーナの行動が、アザトースの知性に最大の歪みを与えている。この歪みこそ、時の特異点へ向かうための、最後の窓だ」


「行きましょう、クロード王子。この世界に、カミが支配しない最後の運命を刻むために」


私は、彼の覚悟に、自らの運命を重ねた。


光の渦が私たちを包み込み、私たちは、レオンハルト殿下と本物のリリアーナの勇気ある犠牲(陽動)を背負い、最終決戦の場である時の特異点へと転移していった。

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