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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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81話 抵抗の火蓋

黒鉄元帥が本物のリリアーナに拳銃を突きつけた瞬間、謁見室の緊張は臨界点を超えた。


「させるか、元帥!」


クロード王子は、私の手を引きながら、千鶴の杖を元帥に向け、防御の魔力を展開した。


「抵抗するな、クロード!この国の秩序に逆らう者は、即刻排除する!」


元帥が発砲するより早く、本物のリリアーナが動いた。彼女は、カミの監視から逃れて身につけた護身術を駆使し、元帥の腕に組み付いた。


「この力は、知神アザトースの傲慢そのものよ!」


銃声が轟いた。弾丸は、本物のリリアーナと元帥の激しいもみ合いの中で、天井に命中した。


その隙に、白鷺文官長が冷静に部屋の隅にある鐘を鳴らした。これは、最高レベルの緊急事態を告げる合図だ。


「全兵に告ぐ!反体制の異物が侵入した!即刻、制圧せよ!」


廊下から、異常なまでの速さで、憲兵隊が突入してくる。彼らは、町外れで本物のリリアーナを襲った人体強化された兵士たちだ。


「リリアーナ!お前は杖で元帥たちを拘束しろ!レオンハルト、援護を!」


クロード王子は、冷静に指示を出した。彼は、憎しみを捨てた代わりに得た知性を、戦術に最大限に活かしていた。


「承知いたしました!」


レオンハルト殿下は、亡きライオネルの剣を抜き、憲兵隊の突入を防ぐべく廊下へと飛び出した。彼は、友の死の真相を知るカミの道具と戦うことに、一切の躊躇がなかった。


混沌(カオス)の触媒よ!」


私は、千鶴の杖の力を解放した。空間の因果を一時的に歪ませる力が、謁見室を包む。元帥と文官長は、体の自由を奪われ、その場で動けなくなった。


「この力…まさか、カミの力か!」元帥は、恐怖に顔を歪ませた。


「そうです。あなたが信じた秩序が、最も嫌う混沌の力よ!」


クロード王子は、私に駆け寄ると、壁に激しく突き当たった本物のリリアーナを抱きかかえた。


「すまない、本物のリリアーナ。お前の告発は、俺たちの最善の選択だった」


「クロード…私は…大丈夫」


本物のリリアーナは、息も絶え絶えに答えた。


「知神アザトースは、必ずこの事態を察知する。彼の干渉が始まる前に、ここから脱出しなければ!」


外では、レオンハルト殿下が、異常な強さを持つ憲兵隊を相手に、苦戦を強いられていた。彼の剣技は優れているが、相手の肉体は人間としての限界を超えている。


「くっ…この異常な筋力は…!」


その時、クロード王子の頭の中に、冷たい声が響いた。


「合理的ではない、クロード。君の行動は、この世界の秩序を崩壊させた。私の秩序の終焉を望むなら、君を排除するまでだ」


知神アザトースの直接的な干渉が始まったのだ。


謁見室の床全体が、青い幾何学的な紋様に光り始めた。それは、アザトースが誇る究極の知識が、私たちを解析し、排除するための論理的トラップだった。

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