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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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76話 第三の勢力

フレイア王国の応接室。クロード王子は、巨大な地図ではなく、千鶴の杖と、本物のリリアーナが残した運命に関する古文書を広げていた。彼の顔には、冷徹な知性と、私への愛が織りなす、静かな決意が満ちていた。


「カミの領域を封印する。そのためには、運命の始まりと終焉、すなわち**『時の特異点』**を、この世界の境界線として固定する必要がある」


クロード王子の声は、静かだが重い。


「時の特異点を境界線とするには、三つの鍵が必要だ」


彼は、壁に掛けられた大陸の地図を指差した。フレイア、オーロリア、ヴァーレントの三国が、大陸の半分を占めている。


「私たちが持つのは、知性の知識と、混沌の触媒(千鶴の杖)。そして、**純粋な運命(私たちの意志)**だ」


彼は、私を見た。


「しかし、この三つの鍵だけでは、カミの領域を完全に閉じるには、エネルギーが圧倒的に不足している」


「不足?」私が尋ねた。


「ああ。運命の壁を永続させるには、人類の生命力の根幹を、その境界線に焼き付ける必要がある。最低でも、人類の半数近くの意識的な協力が必要だ」


レオンハルト殿下が、苦渋の表情で口を開いた。


「ですが、クロード殿下。我々三国(フレイア、オーロリア、ヴァーレント)の人口を合わせても、全人類の40パーセントにも満たない。残りの人類の意識を、どう集めるのですか?」


クロント王子は、地図上の広大な東の大地に、静かに指を置いた。そこには、圧倒的な勢力を持つ国家の名が記されている。


「オイコット帝国だ」


「オイコット帝国…!」レオンハルト殿下が、驚愕の声を上げた。


オイコット帝国は、この大陸の東半分を支配し、全人類の約30パーセントの人口を擁する、巨大な軍事国家だ。彼らの力を加えれば、必要なエネルギーは満たされる。


「彼らは、長らく大陸の中心地から孤立し、独自の発展を遂げてきた。彼らの協力を得ることが、この封印を成功させる唯一の合理的な道だ」


しかし、オイコット帝国は、その排他的な性質から、大陸の他の国々とはほとんど外交がない。


「ですが、クロード殿下。あの帝国が、他国の王族の言葉を信じるとは思えません。彼らは、我々をカミの道具と見なす可能性が高い」


「説得するしかない。この世界を救うという、共通の運命を信じてもらうしかない」


クロード王子の瞳には、迷いがなかった。彼の決意は、世界の運命を救うという、純粋な使命感に突き動かされている。


しかし、知神アザトースから得た知識にも、そして、本物のリリアーナが残した古文書にも、オイコット帝国が、既にカミの支配下にあるという事実は、一切記されていなかった。


私たちの目の前には、世界を救うための最後の希望であるオイコット帝国の力が、新たなカミの罠として立ちはだかろうとしていた。私たちは、その恐ろしい真実を、まだ知る由もなかった。

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