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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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75話 残された二人と王の決意

憎悪の渦が消えたエオルス王城の謁見室で、私はクロード王子の腕の中にいた。彼の体温と、瞳に宿る確かな愛情が、私の心に深く染み渡る。憎しみの呪縛は解け、彼は真の人間性を取り戻した。


「リリアーナ…本当に、ありがとう」


彼はそう言って、深く私を抱きしめた。


レオンハルト殿下は、放心状態の二人の王子と国王に、事態を説明していた。彼の説得力と、クロード王子が示した赦しの力の残滓が、エオルス島の王族間の憎悪を鎮め、内戦の危機は回避された。


「クロード殿下」


レオンハルト殿下が、私たちに近づいてきた。彼の顔には、疲労と、達成感が滲んでいる。


「武神の干渉は完全に消えました。エオルス島は、カミの支配から解放されました」


「ああ」


クロード王子は頷き、千鶴の杖を握りしめた。


「だが、まだ終わってはいない。残るカミは、鶴神千鶴と知神アザトースの二柱だ」


私が不安を口にした。


「千鶴は、武神の敗北をどう見ているでしょう?彼女は、物語の混沌を望んでいるわ」


「千鶴は、武神の退場を新たな物語の始まりとして歓迎するだろう」


クロード王子は、冷徹な知性を取り戻しながらも、感情を込めて分析した。


「武神は混沌の原動力、千鶴は混沌の設計者だった。千鶴は、武神が不在となった今、自らが創り出す究極の混沌を、この世界に仕掛けようとするだろう」


そして、彼は、空虚な空間を見つめた。


「そして、アザトース。彼は、武神の敗北を、自分の合理的な計画の失敗と見なしている。彼は、この世界の運命を穏やかに収束させるという、彼の『秩序』を守るために、必ず再び干渉してくる」


彼の言葉は、私たちに残された最終決戦の標的が、二つあることを示していた。


最後の決断

エオルス島の混乱を鎮めた後、私たちは速やかにフレイア王国へと帰還した。ライオネル殿下の亡骸は、彼の故郷であるヴァーレント王国へ丁重に送られた。


フレイア王国の応接室には、再び本物のリリアーナが待っていた。彼女は、クロード王子から武神の呪いが完全に解けたことを感じ取り、安堵の表情を見せた。


「クロード。あなたは、憎しみを乗り越えた。もはや、カミの支配する運命は存在しない」


本物のリリアーナの言葉に、クロード王子は、王としての最終的な決断を下した。


「カミの支配は終わったが、彼らはまだ、カミの領域に存在している。彼らを完全にこの世界から切り離さなければ、同じ悲劇が、何度でも繰り返される」


彼は、私に向き合った。


「リリアーナ。俺は、王として、この世界をカミの領域から完全に封印する決断をした」


「封印…?」


「時の境界を利用し、この世界とカミの領域を隔てる、強固な運命の壁を築く。そして、千鶴とアザトース、二柱のカミを、完全にその向こう側に閉じ込める」


それは、この世界を救うための、最後の、そして最も危険な任務だった。


「そのための鍵は、千鶴の杖と、お前と俺の運命の力だ」


クロード王子は、もう迷っていなかった。彼は、この世界の運命を、完全に、人間の手で掴み取ることを決意したのだ。

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